ふと、自分に問い掛けた。彼を甘やかすのではなく、彼に甘やかされるのがフツウになったのは何時からだっただろうか。マグロと言われても否定しようがないくらいには、彼から触れられる事にただ悦びを覚えている。これからどう痛め付けてやろうか、そう熱い視線で舐めるように見詰められるだけで達してしまいそうなのだ。そういえば、切っ掛けは彼のほんの些細な好奇心だったような気がする。あんたを抱いてみたいんだ、ハニーにそう真摯に言われたら、ダーリンとしては叶えてあげない訳にはいかないだろう。
 そうか、それから少しずつ、何かが狂い始めた。ともすれば始めから俺は甘やかされる存在かと紛う程に、思考ごと飲み込まれていったのだ。嗚呼、ジャンが、欲しい。今すぐにジャンが欲しい。答えなど最初から分かり切っていたのだ。たどたどしくそこまでなぞったところで、ぱん、と響いた乾いた音に、現実に引き戻される。

「なあ、俺を差し置いて何処にブッ飛んじゃってる訳?」

 そうだ、今俺は、四つん這いになって彼に尻を差し出しているのだった。ペニスを当てがわれて、ぬるぬると表面に擦り付けられて、ついつい浸ってしまっていたのだ。ごめん、ごめんね、ジャン。俺にはお前しかいないんだ。だから、俺がお前のものだという証(罰)を、頂戴。
 俺の単純な思考などお見通しらしい、容赦なく手が何度も振り下ろされる。音に次いで甘美な痛みが齎され、たまらず声を上げて善がった。がくがくと四肢は笑い、自分の躯を支えるのが、躯としての原型を保つのが精一杯だった。このまま倒れ込んだりしたら、きっとジャンはがっかりする。歓喜に打ち震える躯を持て余しながら、彼も興奮しているのが伝わってきた。嬉しいよ、ジャン。もっと、もっとお前が欲しい。

「はっ…!変態、こーゆーの好き、だろ?」
「あ、はぁ…っ、すき、すきっ…ジャン、すき…っ」
「お前は俺なら何でもイイんだろ?えー?」
「んっ…あっ、あ…い、い…っ、ジャン、ジャンっ」
「ほんと、気持ち悪い」

 言いながら。散々焦らされたそこに、熱い楔が打ち込まれた。嗚呼、これだ、内壁が押し広げられる感覚。気持ち良い。動かしたら、きっともっと気持ち良い。ジャンも気持ち良くなれる。全身がぶるぶると戦慄く。なあ、お前は今どんな顔をしているんだ?パーツもぐちゃぐちゃに崩れているであろう俺が気に掛ける事じゃあない、か。
 突き入れたまま動いてくれないジャンに、思わずゆるりと振り返ると、鼻で笑った気配がした。そして、腕を後ろに回すように言われ、両手首をぐいと掴まれる。深い。ジャンが、奥の奥まで俺の中を支配している。

「おら、お前が動け」

 また浸っていると、一層強く尻を叩かれた。はは、きっと綺麗な痕が残っているんだろうな。嬉しいよ、ハニー。お前の為ならダーリンは何だってしよう。何にだってなろう。俺は、お前がこうして甘やかしてくれるだけで幸せなのだから。




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