身体を抱かれているからといって好きと言った覚えはない。俺達は身体だけの関係だろう、そう言う度にルキーノが悲しそうな表情をするから俺も少しだけ心が痛む。ほんの少しだけ、だが。
ルキーノの事は嫌いじゃない。むしろこうして身体の関係がある以上好きなんだとは思う。ただそれがamistadeかamoreかの違いなだけであって、俺の中の最愛はルキーノ・グレゴレッティじゃない。身体だけの関係で、快楽だけを求めるだけの為にルキーノと寝て、気持ちを知りながらこうして何度もベッドの中で夜を共にする。きっと第三者から見て俺は最低の人間なんだろうね。それでもやめられないのはどうしてなのか自分でもわからない。唯一わかっていること、俺が愛しているのは金色に輝く髪に人を自然と引き寄せる性格に愛らしい顔ジャンカルロ、…ジャン。若くして我らCR-5のボスの座についた異例の存在。ただそれだけが俺の心を満たしている。この事をジャン本人は知らない。言えるわけがない。今の状態が一番の関係だと俺は勝手に思っているから。だって“恋人同士”になってしまったらいつか別れが来てしまうだろう?そんなの俺には耐えられないし考えるだけで身体が震える。唯一の存在がいなくなってしまったら。
「…ルキーノ。」
「なんだ?」
今日もベッドの上でのオアソビを終えてから隣で紫煙を天井へと吐き出す男の名前を呼ぶ。低い声色が今の疲れた身体にはちょうど良く響いて心地良い。シーツの波を足で緩やかに蹴って横向きに身体を向けてから大きな背中というキャンパスに文字とも絵とも言えない線を描く。擽ったいのか時折動く肩も気にせず言葉の続きを紡ぐために俺は口を開いた。
「すきだよ。」
「……思ってもないこと言うんじゃねえよ。」
「思ってるさ、ちゃんと。」
乾いた笑いを浮かべながらだるさを含んだ身体を起こす。ギシ、と小さく唸るベッドを内心で労りながら足元に投げ捨てられていたシャツを取り袖に腕を通してちらりと横目でルキーノの姿を盗み見る。この男も変わっている。自分が想っている男が他の男の事を好きだとわかっていながら抱くことを止めない。そこまで惚れられているのは嬉しいが、辛くはないんだろうか。辛くないワケはないんだろうね。その痛みを与えているのは俺で、他の誰でもない。ルキーノぐらいの男なら手に余るほど女が寄ってくるだろうに敢えて俺を選ぶあたり趣味が悪いというかなんというか。まぁそんな男に抱かれている俺も人のことは言えないんだが。
現に先程言った言葉なんて愛してるの意味は含んでいない。身体の相性は悪くはないし、むしろ良いほうだと思っている。乱暴だったり優しかったり、噛み付いたり舐めたり。その差がいつも俺を惑わせて昂ぶらせる。言葉なんか要らない、体温と快楽と、向けられる欲望だけが俺をルキーノの傍に留まらせる。俺の心はジャンのものなんだ。ジャンだけが俺の心の中に常に居て、暗闇を照らしてくれる存在なんだ。想いが伝わらなくたって一生傍で支えてきたいと思える。そんな人間にやっと出会えたんだ。ルキーノならきっとこの気持ちをわかってくれる筈だ。だってお前は俺のことが、
「…好きだからね。」
「何か言ったか?」
「いや、なんでもないよ。それよりルキーノ、もう一回…お相手願いたいんだが?」
一人呟いた声は誰にも届かず空中に消える。煙草を揉み消し怪訝そうに振り返ったルキーノに両目を細め夜の遊びのお誘いの言葉を並べ、首に腕を蛇のように絡ませてからまたベッドへと二人で沈む。首に這う舌の温度がいつもより熱い。このままこの熱に素直に甘えることが出来たらどんなに幸せなことなんだろうか。差し出された手を素直に取ったりなんかしたら。俺はきっと生きていけなくなる。
だってそんなことをしたらジャンが居なくなってしまう。だからこのままでいい。傷つけ傷ついて、俺は生きていくんだ。誰の手も取らず、ジャンのことだけを想って。
俺の人生の先には常にジャンという不動の存在があるのだから。
想いはかわることもなく、
(死ぬまで想い続ける。)
101130
ザクロと憂鬱。のRUIさんよりいちまんひっとのお祝いで頂戴してしまいました…!
もうルキベルジャン正義すぎて真面目に呼吸困難になりました一方通行美味しすぎます、ひたすら舐め回すお仕事に耽ろうと思います…!やっぱりベルナルドは世界…そしてRUIさん世界…!
どうもどうもありがとうございました!これからもどうか仲良くしてやって下さい…!