基本的に奴の眠りは浅い。寝ていると言うよりは、ただ目を閉じているに近い。俺がいなくなる夢でも見てるんじゃないかと思うくらい、魘されている時もある。そりゃあひたすら抱き枕にされている身なのだから、熟睡していないってのは嫌でも気付く。しかしあんまり抱き締められすぎでへこまないか心配だわ。まあ、お試し期間はもうとっくに過ぎてるんだ、今更返品しようったって無理なお話だ。
 今日はトクベツに、そんな何時も夢見の悪いダーリンに良い夢見せてあげようっていう目論見。っていうのは勿論名目だけで、一週間ご無沙汰で溜まってたからセックスしたいと思っただけ。短絡的と笑われるかもしれないが、俺がしたくなったんだから仕方がない。お偉方用にセットした髪の毛をぐしゃぐしゃと掻いて戻しながら、ダーリンの待つ寝室へとそっと足を踏み入れる。寝ている事を願いながら。先に寝てろよ、とは言ったものの奴の事だ、オナニーショーでも繰り広げているかもしれない。まあそれはそれでお仕置きする口実が出来るから良いんだけど。
 そいつはベッドの中で蹲るようにして静かに寝息を立てていた。相変わらずよくこんな照明で寝られるな。なあ、人間暗くしないと躯が休まらないって知ってるか?それにしても、寝ていてくれたのは嬉しい誤算だった。夢か現かまどろみながら俺とセックス出来るんだ、こんな良い夢ないだろう、幸せ者め。
 ベッドに乗ると、弾力が心地好く重みを返してきた。これだけでも起きそう、内心ヒヤヒヤ。けれどそれもまた快感、なんてな。たまにこいつが俺にやってくれるみたいに、足首に口付ける。やってみて確信したが、これだけで興奮出来るこいつはやっぱり変態だ。つつ、と舌を這わせながら足の指へスライドする。(水虫じゃあない事を祈る)こんな間近で見た事がなかったから今まで気付かなかったが、足の指も長いんだなと思った。しかし分からない。嬉々として俺のこれを舐められるこいつの気が知れない。俺なら丸ごと愛しいってやつか?嗚呼、そんなあんたが可愛いよ、ベルナルド。
 見様見真似、唾液を滴らせた舌で親指をちろちろと舐めていく。ぴくり、と僅かに反応した事には気付かない振りをしながら、それを口に含んじゃったりして。唇でゆっくりゆっくり刺激してやると、先よりも良い反応が返ってくる。そんな気持ち良さそうな声出しちゃって、慣れない事をやった甲斐があったワ。

「はァいダーリン、ご機嫌如何?」

 やっぱり空気を読むなあうちのダーリンは。お前が起きてるか起きてないか俺が見抜けないとでも思ったのけ?そもそもベルナルドに夜這いを仕掛けようと思う事自体間違いだけど、きっとこいつは俺の好きなようにさせてくれると思ったから。これでも俺、褒めてるのよ?お前の事、だあいすきだから。

「…参ったな、…いや、その、気を悪くしたのなら謝るよ」
「いんや、逆だっての。…空気の読めるダーリンは、寝たまんま俺にレイプされればいーの」

 半笑いのベルナルドは、こんな俺の我が儘にも付き合ってくれるつもりらしい、また静かに寝息を立て始めた。やっぱり、ちょっとムカつく。こうなったら、手を出したくても出させてやんねえ。なあ、俺をこんな夢中にさせた責任、取ってくれよ?




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