「あんたって存外馬鹿だよな」

 乾いた声音がぶつけられる。それだけでまた、顔が綻んでしまいそうだった。何故かって、陳腐な想像通り、愛しのハニーが傷心のダーリンを慰めてくれようとしているからだ。ぎりぎりと何処から持ってきたか知れない縄でペニスを締め上げて、嗚呼、痛い痛い。こうして自分の思うがままに縛って愉悦に浸っているというに、彼はわざわざ冷めている態で俺を罵倒する。それを俺が望むと思って(思い違えて)いるから。いや、正確には間違ってはいない。そうやって俺の為を思って演じてくれるジャンカルロを、心の底から望んでいる。だから痛いのが好きじゃあない俺も、こうして興奮しているんじゃないか。
 頬に付いていた前の男の精液を指で拭うと、目の前に差し出された。ハニーの嫉妬なら勿論大歓迎。まあ実際妬いているかなんて知る必要はないのだけれど。しかし、ジャンが他の男と関係を持つのは妬けるな。嫉妬し過ぎて、どうにかなってしまいそうだよ。舌を出して、好きでも嫌いでもない男のそれを無感情に、舐め取る。

「…不味いな」

 ありのままを吐き出すと、彼の口角がに、と釣り上がった。どうやら抑えきれなかったらしい。嗚呼、やはり俺は、(どんな要因であれ)笑っているお前が好き、だよ。

「随分と楽しそうだな、ベルナルド」

 楽しいに決まっているじゃあないか、ハニー。お前とこうして、愛し合っているのだから。笑みだけを返すと、何処までも自慰的な俺が気に入らなかったらしく、喉へと指を突き入れられた。痛いなんてものではない。快感の欠片も得られないそれに、ただ嘔吐く。
 歪んだ視界に映る愛しいジャンカルロの顔。焦燥の色を滲ませながらも、やはり愉悦に浸っている彼が、可愛くて可愛くて仕方がなかった。




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