「何の真似かな」

 愛しのハニーに縛られるなら勿論大歓迎。それでも拘束される事自体に快感を覚える事は決してなく、緩んだ頬を持て余したままいそいそしく縛り上げていく彼自身をかわいらしいと思うだけなのだ。躍起になって俺を屈服させようとするジャンカルロが、とてつもなく愛しい。しかし、現状はどうだ。好きでも嫌いでもない、出来れば関わりたくもない男に、こうして四肢を固められている。どうしようもなく不愉快だ。
 見なければ良いものを、他にもする事がないものだから、ちらりとその面を一瞥すれば(彼曰く)涼しい顔をする俺が気に入らないといった、憤慨に近い表情を貼り付けていた。その中には、俺をこうして縛り付けて恍惚に浸っているものも成分として入っている。興味のない男のそんな顔を見たとて、勃つ筈もない。
 俺の言葉を漸く処理したらしいルキーノは、その間抜けな仮面を装着したまま、地を這うような低音を奏でた。わざわざ髪の毛を掴み上げながら。嗚呼、抜けたらどう責任取ってくれるんだ。

「人の物に手を出すのは、どんな気分かって思って、な」

 馬鹿な餓鬼だ。お前はなんにも分かっちゃいない。フハハ、とジャンに言わせれば親父臭い嗤い、を抑える事が出来なかった。不可抗力だ、それを隠す術が与えられていないのだから。手間暇掛けてそうしたのはお前の癖に、どうしてそんな顔をするんだよ、ルキーノ。
 そうだ、もっと楽しい事を考えよう。例えば、この後ジャンに見付かったら、一体あいつは、どんな手を使って俺を慰めるのだろうか。慰めてやるよ、とか言いながらそれは口実で、今度はペニスをきつく縛られるのかもしれない。嗚呼、可愛いね、可愛いね、ジャン。お前にだったら屈服する振りをしてやるというものが、ダーリンとしての役目だろう?愛しのハニー。早く、早く俺を助けに来てくれよ。




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