執務室、予想通りのワーカーホリック。
黒服の皆さんに指を立てて"si"と唇を突き出し、そうっと扉の隙間から覗き見る。眉間の皺よーし、溜息よーし、空のカップをあおるマヌケよーし、火ついてるのに新しい煙草咥えるヌケサクよーし、はい、アタシのダーリンは今日も今日とてお疲れちゃんネ、ってなわけでジャンさん発進。目標、生え際広げてお仕事を頑張る愛しのダーリン。臨戦体制の俺のポケットにはチョコバー、ロリポップ、グミ…とお菓子と言う名の銃弾をたっぷり。今日は1日イヴァンにくっついてたし、どうせ戻る頃には死体みたいな顔してんだろう事を想定してね、息抜きにでもなればと思って買ってきましたのよん。なんて部下思いのカポなのかしら。


「ベルナルド〜お疲れちゃーん」


ノックもせずにババーンっと両手広げて。声を張り上げればビクッと肩を震わせるベルナルドと目が合った。アラヤダそのリアクション可愛い。ちょいちょいと指を折って、部屋で忙しなく動き回ってた黒服のお兄さん達を追い出している最中、奴らがなんとなく安心した様な顔を浮かべたのは…きっと気のせいじゃないんだろうな、なんて思いながら会釈の波を掻い潜って電気の玉座へと歩み寄る。困ったような、嬉しそうな、そんな微妙な笑みを浮かべるベルナルドはやっぱりお疲れモード全開で、心なしか朝よりもガリに見える。(流石にそれは気のせいだろうけど)


「驚いた。随分早いお帰りだね、ハニー」

「相手が早漏ちゃんだったのよ、ダーリン」

「はは、聞き捨てならないな」


きっと大事なモンなんだろうけど、デスクの書類達にも少しお暇して頂いて、ベルナルドとの間に体を滑り込ませてどっかり腰かける。見上げる視線に悪戯に笑って返すとすかさず両腕が俺の腰に絡みついた。年中無休俺不足な駄目親父へのお土産は俺自身だったかも、なんて…ちょっと自意識過剰?まぁ、別にいいんだけど。
近くで見るとますますやつれてやがる。全くこの駄目親父。疲れたら糖分だろ、って事で早速チョコバーを1本、安っぽい包装紙を開けて咥える。んん、甘え、ンめえ。ベルナルドに体を傾けて顎を突き出し、小指くらいの長さのそれの先端を揺らす。勿論、ジャンさんの100万光年ドルスマイル付きで。


「ふゎい、べうなうどー、あーん」

「……どう、したんだい?」


とちょっと驚きながらも一口齧りついてチョコバーを飲み込むベルナルド。甘いな、なんて眉尻を垂らしながら汚れた唇を拭う顔はさっきよかマシだけど。駄目よ、まだ解放してあげないんだから。
今度はこっちも一口、器用に口に含んでさらに短くなったソイツを口元に寄せ、ベルナルドの唇を招く。どうせ飯も食ってねえんだろ?コーヒーばっか飲んで、机に齧りついてたんだろ?心配すんじゃねーかバーカ。
両手で頭を抱え込んで有無を言わさず口を塞いで、舌先で残り全部ベルナルドの口の中に押し込んでやった。胸やけするくらい甘ったるいキスの合間に、同じくらい甘いベルナルドの唇を舐めとってからゆっくり唇を離す。


「…急にどうしたんだい…?本当に…」

「別に?愛するダーリンとちゅーするのに理由が必要け?」

「ならそのポケットの中身全部、口移ししてくれるのかな」

「……馬鹿、唇なくなっちまうよ」


離れてる時間が寂しくて、細っこい両腕に色んなもん抱えてるアンタが心配で、倒れでもしたらって考えたらそんだけで怖くなって、とにかく早く帰ってきました、なんて口が裂けても言えないから。
素直になれない僕ちゃんを許してね。アンタを癒すにはこんな事しか思い浮かばない浅はかさもどうか目をつぶって。絶対直接伝えたりしないけど、どーかこの甘いキスで悟って頂戴、マイダーリン。




101021

るいさんから6000ひっとお祝いに頂戴してしまいました…!
ほんとジャンさんかっこかわいくて正義すぎますそしてベルナルドかわいいです動悸が止まらないもう早く結婚しちゃえば良いんじゃないでしょうか!寧ろ私とるいさんが!
stkしまくりで引かれる勢いですがこれからも自重しないつもりですすみません。
どうもありがとうございましたー!

「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -