「なあ、今どんな気分?」

 不愉快な機械音が響く。そして不愉快な嗚咽も。そこは最初こそ出血していたものの、今やうねりを打つそれを悠々と飲み込み、奥へ奥へと誘おうとしているのだ。
 こうなるまでにどれくらい掛かっただろうか。折角の休日だからと、半日近く掛けてじっくりいたぶってやった。わざわざこの場所を選んだのは、それなりの、配慮ってやつなのかな。元から俺を好いていたのは知っていたけれど、少しずつ快楽を肯定して陥落していくこの男を見るのは、面白おかしかった。
 虚ろな瞳が、ゆるりとこちらを見上げる。あれ、だあいすきなジャンカルロがお出迎えに来たって言うのに無反応ですか、お兄サン。少しして漸くその器官が俺の存在を認めたのか、にたあ、と顔面を蕩けさせた。なにそれ、ホラーでしかねえんだけど。

「ジャン…っ、ジャン…は、はっ…」
「ねえダーリン、俺ちょっと溜まってるみたいなんだけど、抜いてくれないかしら」

 はいはい、お名前はもういいの、聞き飽きたから。もう少し、保ってくれると思ったんだけど、な。所詮は人間ないもの強請りなのよネ。嗚呼、もう人間未満のあんたには分からないか。
 躾けた通り、手を使わず歯でジッパーを下げる。かたかたと震えているのは、恐怖ではなく、ヨロコビに支配されているから。
 時間を掛けて取り出したペニスを、躊躇いもなく吸い込んだ。奥までくわえ込むと、音を立ててしゃぶり始める。戯れに腰を揺らして喉へと突き立ててやれば、嘔吐きながらも頬を染めて陶酔していた。

「っ…ん…うっ…ふ、んっ…」
「あー、イイぜ…、もう出そう」

 自分で根元を扱きながら、快感に浸る。夢中になって奉仕しながらも、腰をくねらせて玩具をイイトコロに擦り付ける貪欲なそれ。イきたいのにイけない苦痛を苦痛としないこの男には適わないと思った。
 俺の息が次第に荒くなると、それに連れて興奮しているのか、くぐもり声にも甘みが一層増す。こいつ、しゃぶりながら射精するんじゃないか。溢れ出る欲望の捌け口として、俺は、その切っ先を顔へと向けた。

「ほら、言えよ。掛けて下さいって」
「…は、は…あっ…、か、け…、んんっ!」

 言い終える前に、その眼鏡目掛けて精液を浴びせてやる。どろり、どろり。流れ落ちる白濁の合間から覗いた瞳は、それを映したかのように濁っていた。




101003
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