笑いが止まらなかった。何だか今日はダーリンを縛ってみたい気分なのよね、なんてなぞりながら御粗末なそれを提示すれば、半笑いで怖ず怖ずと手首を差し出してきたのだ。それに応えてやる義理はなく、先ずはその緩んだ口をそのまま固定してやった。はは、その間抜け面たまんねえ。(それを外す事も出来ただろうに)期待と不安が織り交ぜられた双眸でただ俺に縋るような視線を向けるベルナルドに、込み上げてくる笑いが止まらなかった。
 次に、足首をぐるぐるしてやった。途中テープ同士がくっついて苛立ったので、腹癒せにひとつふたつ、こいつが悦ぶような言葉を吐き捨てた。ふごふご言いながらそれを享受する年甲斐もない男が愛しくて仕方なかった。こいつ、本当に俺なら何でも良いんだな。いっそ前髪に貼ったらどんな反応するのかな。頼む、剥がさないでくれ、ジャン、なんて必死に懇願するのかな。嗚呼、口塞いでるから無理だったわ。馬鹿だなー俺。

「ねえダーリン。なーんか此処、盛り上がってる気がするんだケド」

 特に抵抗もないそいつを絨毯に転がして、スラックスを押し上げるそれを足で戯れに撫ぜながら指摘してやると、びくりと肩を跳ねさせた。くぐもり声は先より甘みを帯びていて、やっぱりただの変態なんだな、と思った。このまま唾液だらだら流したら、粘着力なくなるのかな。その上から重ねて貼れば良いだけか。
 床に這い蹲らせてなんかやらねーよ。仕上げに手首にぐるぐる。あ、さっきより上手くいったかも。ちょっとテンション上がった。出来上がった作品でも眺めるように、全身に視線を這わせる。なあ、頬が赤らんでるの、気付かない振りして良いか?

「…ふ、ふ…ん、っ」
「なーに言ってんだか分かんねー」

 どさり。丁度座りやすそうな位置にあったそれに腰を下ろす。肉が付いていない分、座り心地はそこまで好くなかった。無意味だと分かっている筈なのに、何かを訴えるようにひたすらふごふご言っている。だから、それ、止めろって。笑えるから。
 今更怖くなった、か?それとも、気持ち良い事をしてくれてありがとう、って?ちらりとスラックスを一瞥する。先より更に主張しているそこを認めて、俺は後者だと捉えるしかないと思った。

「そうかそうか、御粗末様」

 本当に御粗末なのは、まあ、誰とは言わないけれど。




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