「なあ、性欲と食欲って紙一重だと思わねえ?」

 彼に関して言えば直結しているのかもしれない。思ったままを口にすれば、それは想像していたより軽く、雰囲気も何もかもをぶち壊しにしていた。俺の言っている意味が分からないというように、ジュリオは首を傾げてみせる。それも当然だ。俺のものを舐めて、精液を飲んで、それだけで気持ち良くなっているのだから。
 跪き頬を窄めて一心不乱に啜っていた彼の、布をぐいぐいと押し上げる中心を足先だけで触れてやると、気でも触れたか甲高い声を上げる。躯に響くのはこの上なく心地好い音の筈、なのに、何故だか彼に接触する頃には、まるで俺が冷め切っているような言動に変換されていた。

「…ん、は、ああぁっ…!ん、は、は…」
「ジュリオちゃん、俺、訊いてるんだけど」
「あっ、ジャン、…さ…?あ、…す、すみま…せん、っ」
「俺のペニス舐めて、精液飲んで、気持ちよーくなって。おめでたい男だよな」
「…ジャン、さ…俺、…何、か…」

 何か悪い事をしたんですか、とでも言いたげに、不安な顔をする。こうして困らせるのは楽しくない、と言ったら嘘になるが、ジュリオに、こんな顔をさせたい訳じゃないのは確かだ。そうして産み出された感情は、例の如く奥底に沈められる。表出する頃にはまた、彼を蔑む事しか出来ない。俺は、何がしたいのだろうか。

「何でもねえよ」

 知っているんだ。彼が、俺の事を好きで好きで仕方がないという事は。だから俺は、目を瞑らなければならない。例えその好き、が、行き過ぎて対象さえ見えなくなっていたとしても、だ。




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