男は、嗤った。自嘲ではない。その全対象を俺に向けて、それはそれは綺麗な顔で嗤ったのだ。ハニーはバカンス中だから、と誘ったのは彼なのに、俺には選択肢がないと知っているのに。それでも未だ、何らかの感情を向けられているだけで救われる、と感じてしまう俺は間違いなく末期、なのだろう。
 ベッドが軋む音がした。抵抗も何もしようとしないベルナルドの上に覆い被さったからだ。この端整な顔を、苦痛に歪めようとも快感にとろけさせようとも思わない。ただ、少しでも彼を支配出来るという、自慰にも似た感覚に溺れたいのだ。

「…なあ、誰でも良いのかよ」
「そう、だな…ある程度俺を好いてくれて、独占しなければ」

 なあ、今はティータイムか何かか?平然と言ってのけるベルナルドに、俺は思わず嗤ってしまった。その対象は間違いなく、俺自身だ。




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