俺にはどちらも選べなかった。正しく言えばどちらでも良かった、のかもしれない。だって所詮はこの関係も刹那的なもの、少なくとも俺は恋人なんて肩書きに溺れるつもりもないし、彼らだってそう割り切っていると信じていた。どうせ何年かしたらそれぞれ女も出来て所帯も持って、血迷った関係にはオサラバだろう。
 ベルナルドは俺を思い切り甘やかしてくれた。我が儘を何でも聞いてくれた気がする。困った顔しながらもノーと言わない彼はとても大人に思えて、純粋に惹かれたのを覚えている。対してルキーノは、嵐のような男だった。胸がときめくとはこの事なのだろうと思った。強引なのに何故だか居心地が良くて、靡いてしまう女の気持ちが分かった気がする。
 ただのビッチと言われてしまえばそうなのかもしれない。きっとそうなのだろう。優柔不断で且つ女々しい男だ。更に言えば、繋がるだけで愛されていると履き違えている残念な男だ。それでも、俺には選べなかった。それ故にこの有様だ。

「…悲しいな、ジャン」

 蔑むでもなく叱責するでもなくベルナルドが小さく呟いた。救いようのない俺を憐れんでいるのだろうか。騙したつもりは微塵もない。何か言葉を紡ごうとしても、口をぱくぱくとするしか出来なかった。両手両足ベッドに拘束されたからと言うよりも、返す言葉がないから。
 何も言わないルキーノの表情を一瞥すれば、ベルナルドとは対照的に憤慨を前面に押し出していた。今にも怒鳴り散らしてしまいそうな。それも当然だな。思考の端で何処か他人事のようになぞって、俺はただその報いを受けようと目を閉じた。(本当に恐れているのは捨てられる事だと彼らは知っているのだろうか)




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