愛があるからこそ出来る事ってあるよな。何か挙げてみせろよ、と眼下に跪き飽きもせず脚に頬擦りしてくる男に吐き捨てる。
 伏せていた顔をゆるりと上げて蕩けた双眸を覗かせるそいつは、言葉さえ忘れてしまったかのようにはあはあと荒い呼吸を繰り返すだけだった。
 まあ確かに、後ろ手に拘束されてだあいすきな脚にすりすりぺろぺろしたり、熱の捌け口を求めて床に股間を押し付けたりしているような変態に人間様の言葉は難しかったかもしれない。諦めよう。
 例えば、今しているような生温い拘束もそうかもしれない。蝋燭だらだらもそうかもしれない。後は、吊るしとか鞭とか電気とかも。そういえばやった事ないな。俺もまだまだ甘ちゃんだ。
 幾ら俺がベルナルドをこうして愛してやっていてもこの変態が気持ち良くなければそれはプレイとしては成り立たないし、(寧ろ俺がして気持ち良くない事があるのか小一時間問いたい)こいつが俺の脚ぺろぺろしてて俺がドン引きしてしまえばそれまでだ。大変残念ながら俺も、この変態をどうしてしまおうかと考えながら興奮している。

「ダーリン、お馬さんごっこしたーい」

 スーパー棒読みタイム。椅子から立ち上がると思考が追い付けないのか呆けている男の背後に回り、有無を言わせずどかりと腰を落ち着ける。だって、無言は即ち肯定。
 無様にも頭が垂れ、床と顔とがこんにちは。心なしかさっきより息が荒くなってる気がするんですけど。

「座りにくいナー」
「…はぁ、は…っ、ジャン…」
「随分鈍間なお馬さんですこと」

 ほら、あんたの好きな脚で尻を蹴ってやるよ。嬉しいだろう?変態オルトラーニさん。
 1、2、3、4、5。

「ん、あっ…あぁっ…っ」
「…なんつー声出してんの」

 と、言いながらも。6、7、8、9、10。
 回を増す毎に艶やかになっていく嬌声に、ぞくぞくと背筋を駆け抜ける快感。気付けば中心は頭を擡げて熱の捌け口を求めている。この男がしていたのと同じように、ぐりぐりと股間を押し付ければ、より甲高い声が喉から漏れた。

「何想像してる?ほっぺたにぺちぺちされるの?それともこれで犯して欲しい、とか?」

 ま、残念ながら出来ないんだけど。そして、俺は真意を知る術を持ち合わせていない。その必要もない。
 そうだ、感じてる顔、見たい。次から次へ生まれる好奇心。それだけが俺を駆り立てる。ぐいと髪の毛を手綱のように引っ張って、汗ばんだ額にご褒美のキスを落とす。

「なあ、ベルナルド。愛してるぜ」

 返事は聞かない。その必要もない。何故なら無言は肯定。これもまた、愛。




120515
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