ざっくり言えば誰でも良い。強いて言えば、ジャンだったら嬉しい。後はそれなりに気持ち良くなれて、満足出来ればそれで良い。その行為を何の為にするのか、誰とするのかなんて一切興味がない。嗚呼、でも汚い男は嫌だな。ジャンだったらどれだけ汚くても許せるのに、可笑しな話だ。今頃お前は眉間に皺を寄せてムズカシイ話を聞いているのだろう、そうしてきっと唇を尖らせて溜まりに溜まった鬱憤を俺に吐き出すのだ。早く聞きたいな、お前の声。
口で抜いてくれ、なんて言葉に応じるなんて珍しい事もあるものだと思った。ジャンに思いを馳せていたからだろうか、思いの外上機嫌だったらしい。まあ、気持ち良くなら何でも良いのだが。疼く躯を持て余しながら、既に頭を擡げ始めているそれをくわえ込む。一体こんな貧相な男の何処が良いのだろうか、そう自嘲しながら、口に含んだだけで脈打つそれをひたすらに愛撫する。顔は見ない。気分が急降下するから。
はあ、と甘美な吐息が漏れるのが分かった。痛い程に視線を浴びながら、先端を唇で遊んでやる。耐えられなくなったのか、行き場を求めていたそいつの手が俺の頭へと回り、ぐいと引き寄せられた。一気に奥まで突き付けられて、またこのパターンか、と好い加減溜め息を吐きたくもなる。尻の穴に突っ込んでいるかのように腰を何度も何度も振るそいつは、この上なく哀れに思えた。
そうだ、ジャンにこうされたら。そう頭で繰り広げるだけで、躯が震え上がる。ジャンは優しいから、俺の為に罵声を浴びせながら抉るように喉に突き付けてくるのだろう。俺がそうしたら喜ぶと思っているのかと思うと、可愛くて仕方ない。痛いのはそこまで好きじゃあないが、お前にされたら何もかもが気持ち良いよ。そうだ。気持ち良い、
そう逃避しようとしていたというに、あろう事か男は低く呻いたかと思うと、許可なしにその廃液を口へ叩き付けてきやがった。ぷつん、と、繰り広げていた愛しいハニーの映像が切れ、ノイズに変わる。嗚呼、自分は今、何も考えていない。何も考えられない。
満足気に息を荒くして性器を引き抜いたそいつに、何の感情も込めずに俺は、懐から黒い塊を取り出した。廃液を吐き捨ててやるのを忘れずに、その切っ先をそいつに向けて。
「じゃあな」
110327