息が白い。悴む手を擦り合わせて、こんな日に手袋を忘れた事を激しく後悔した。こんな日と言えば何故あの男は俺を待たせてくれているのだろう。たまにはデートっぽい事をしたいから、と態と遅れてくる宣言をしてきやがって。その頭をもっと仕事に使えってんだ。(十分過ぎる程使っているが)
 思えばこうした待ち合わせで確かにあいつが俺を待たせた事なんて殆どなかった。まあ待ち合わせ自体あまりしないが。仕事で遅れた時は、この世の終わりのような顔をしていた気がする。その時は罰を望んでいたようだったから、冗談で髪の毛百本抜けなんて言ったら更にこの世の終わりのような顔をしていたっけ。
 そんな残念だけどこの上なく愛しいダーリンが俺を待たせられるようになったなんて、少しは関係が上手く行っていると自惚れて良いかな。独り善がりは何時か破滅を呼ぶ。自ら零落しようとするあいつを止められるのは俺だけ。何時の間にか惚気てる自分が気持ち悪い。顔までにやけてこの上なくだらしがない。嗚呼、止めだ。それにしても遅い。俺をこんな思いをさせるなんて、会ったら何て言ってやろう。
 ふと、背後に気配を感じたと思えば、目を大きな手で覆われていた。お前の手だって冷たいじゃねえか、何してくれてんだ。俺が一人で待っている姿を何処かから見ていたかと思うと情けない事この上ないが、先のにやけ顔を見られてないか内心焦っていた。

「だーれだ」
「……そーゆーの、要らねえ」

 しかし抱き寄せられるとそうしか言えない自分が憎い。あーあ、きっと顔が赤い。寒さの所為だ。

「そう言うものでもないよ、ハニー。こんなところに一人で待ってて誘拐でもされたら大変だ」
「待たせてるのは何処のどいつだよ」
「…お待たせ、ジャン」
「へいへい」

 頬が緩んでいるのも、寒くて表情が固定されたから。早く会いたいと思ったのも人肌恋しいのも寒いから。餓鬼みたいにそう捲し立ててもきっと許してくれる。クリスマスも中々捨てたものじゃないな。そこまで自分に言い逃れをしたところで、五月蝿い頭に蓋をした。




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