それぞれの色が塗られた鉛筆の軸は、それ自体がその製品を表す色。しかし今回のトンボ木物語のように水性透明ニスで仕上げ、材料の木目を見せる鉛筆もあります。
この廃木材使用率89%という鉛筆の軸は、端材を接いだ集成材から造られるため、接ぎ目が見えてあまり美しくはありません。しかしそれをそのままに、商品特徴として強調すらしているように思えます。
1ダース480円(一本40円)税別、紙箱入り
φ7.7×176mm 六角軸、封蝋なし、芯径2mm/HB
芯硬度:HB-2B(Fなし)
表銘:Recycled pencil 木物語 [芯硬度]
裏銘:TOMBOW JAPAN LA-KEA エコマーク商品
バーコードつき
※2016年8月21日追記:この記事を書いたころにはダース箱に生産国表示がなかった。のちにベトナム製らしいことがわかったが、現行品は日本製へ戻った。変更時期不明。
少しべたついて黒ずむ塗装も変えられたようだ。
※2018年11月8日追記:木物語、再びベトナム製へ戻っていました。おそらく2017年後半。2010年代前半の日本製も現行ベトナム製もロット番号がKから始まり、日本製と同じくべたつかない塗装のまま。どこで製造しているのかわからなくなってきた。
鉛筆芯の原料は黒鉛(石墨)という炭素の塊です。
この鉱物は鉛筆芯以外にも電動モータ等様々な用途に使われ、人造黒鉛まで生産されています。
言葉の響きからすると人造のほうが品質が安定しているように思われ、一度はそれから成る鉛筆芯で書きたいと望むも、既存の芯には天然ものしか使われておらず、またそちらが最適なのだそうです。
ところが、人造黒鉛を混合した再生黒鉛芯を用いる鉛筆が1992年6月に発売されていました。それがトンボ木物語です。
私が初めて本品に触れたのは1990年代半ばでしたが、その存在を知ってから一度は体験したかった人造黒鉛芯を、私はすでに体験済みだったのです。
その芯は大して優れてはいませんが、大きな問題もなく書ける実用品に感じました。
トンボに尋ねると、混合された人造黒鉛は約50%、鉛筆のために品質調整されて生産されたわけではないため、天然ものと同じく選定しなければならないそうですけれどね。
- 再生黒鉛芯については以下を。
- トンボ鉛筆公式(携帯/PC)
- より詳しくはこちら。
- 鉛筆芯とその製造方法、ならびにそれに用いるカーボン粉末(携帯/PC)
再生シャーペン芯もあります。
鉛筆は使い捨て木製品ゆえに環境破壊を懸念され、ときに批判されます。
集成材で再生黒鉛芯を挟んだ本品は、それに対する鉛筆会社の答でもあるのですね。
では、鉛筆産業がどれくらい環境破壊しているかというと……
19世紀半ばにイギリスボロウデール黒鉛鉱を払底させ、19世紀末のアメリカでは鉛筆用木材を乱伐して資源枯渇の憂き目を見ているのですが、現在は伐採と植林を同時に行い、持続可能な開発の実際例と考えられることから、(森林面積に関しては)使い捨て木製品といえど巷で噂されるような悪影響を及ぼしてはいないようです。
にもかかわらず、このような環境保全に呼応した鉛筆が造られるのは、それだけ流行している分野だからでしょうか。
とはいえ、日本国内で販売される鉛筆の九割は日本製
*なのに対し原材料は殆ど他国産
**。省資源が宿命的な国で木物語が生産されるのは当然かもしれません。
ただ、この集成材は三菱9800ewにも使われており、生産量が増えると余剰材を原料とする本品は生産できなくなってしまいます。
この矛盾に近しい状態は慢性的なものですが、国内鉛筆生産量がこの十年で四割減った現在、その心配は杞憂だとか。
- *金額ベース、「ASEAN輸出業者のためのマーケティングガイド」図表11
- **日本鉛筆工業協同組合(携帯/PC)