名前は、燦然と煌めく星を見て思った。

人は死ぬと星になるという。

では、貴方も、星になったのだろうか?


今日の何時だかわからない時間にハリーがやってきた。

戦いの傷痕が痛々しく、なんだかこっちまで負傷などしてないのに痛くなる。

「やあ、名前」

そう彼は、明るくいうも、それは違和感を感じ、わざとらしかった。

名前は、そんな彼を見て不安になった。

彼女の頭に愛する人の姿が浮かんだ。


ハリーが持ってきたのはセブルス・スネイプの訃報だった。


その時は、涙なんてものは、出なかった。

ハリーは強いねと言ってその場を後にしたが、彼が思うほど彼女は強くない。

ただ、人に弱さを見せることが出来ない。

それだけだった。

そして、彼女の泣けるところはもう永遠に戻ってこない。
彼女の包み込む、独占欲に満ちた力強い腕、安心して身を預けられる厚い胸板、鎮静剤のように心に染み込む薬草の匂いが染み付いた彼の香。

スネイプに抱きしめられている時だけ名前は泣けるのだった。

そこは、安住の地であり、楽園だ。

その楽園はもうない。安住の地には永遠に行き着かない。

そうまるで、国を奪われ流浪の民になったイスラエルの民のような気分だった。


名前には、もうないのだ。

安心する場所も、泣けるところも、愛する人さえ。






「セブルス……」

彼の名前を呼ぶも、それに応えてくれる人はいない。

ただ、発した言葉は、夜風に攫われていく。

「私が死んだら星になれるかな」

世界は、平和になったというのに、名前にとっては生き地獄だった。

愛しい人のいない世界こそ、彼女にとって憎むべきと世界であった。ヴォルデモートがイギリスを手中に収めようと、世界征服を目論もうとも、彼女にとってそんなことはどうでもいい。彼さえいれば、どんなところでも安住の地であり、楽園なのである。

そして、幸福なのである。


だから、名前は後を追わないのだろう。

自殺などしたら、彼の元へはいけない。天に昇れないのなら死んでも意味がない。


彼女の生きる意味は彼と同じところに逝くことなのだから。


だが、やはり、心に出来た虚空は思いのほか大きく、耐え忍んだ涙もはらはらと堕ち、地面を濡らした。











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