17Q 1
「お疲れっしたー!」

「お疲れ様でした!」

「お疲れ様でしたッス!」

 試合を余裕のトリプルスコアで終えた秀徳の出場メンバー達は、余裕すら含んだ堂々とした風格を漂わせ、立ち並ぶベンチの面々に挨拶されながらその傍らを通り過ぎた。

 高尾と緑間も一応その中には交じっていたが、彼等は何も言わないまま出場した面子を見送る。

「こっからまた決勝戦って、どんだけバスケ好きなのよ……俺ら」

 この試合ずっとベンチだった高尾は、そう言うとぐっと背伸びをして、大きな欠伸をした。
そして腕を下ろして腰につけると、片目で緑間を見てにやっと笑う。

「けどまあ、良かったじゃん? 来たぜ」

 何が、などというのは言う必要も尋ねる必要もない。

「見ればわかるのだよ」

 その通り緑間は、冷然とした眼差しをじっと正面に向けた。

 コートを二つ挟んだ向こう側の壁沿い、ベンチの前に立ちこちらをじっと見つめる火神と、黒子。
 そしてその傍らでは、頭にタオルを被った白美が長い髪を垂らし、俯いている。


「フッ――」

 緑間の口角が小さく上がったのを、彼等のことをこっそり盗み見ていた白美は、見過ごさなかった。

(真ちゃんがあんな風に笑うのは、珍しいねェ)

 対して、傍らに立つ高尾は、白美に鋭い眼差しを向けている。
 その眼はまさに、獲物を見定めようとする鷹の眼。

 つられるように白美の目は鋭さを増し、口元は自ずと弧を描く。

「――いいねェ、その感じ……」

 そして低く掠れた声でこぼした小さな呟きを、黒子は辛うじて耳にした。

 ハッと目を丸め、白美の姿を見つめる。
 彼はタオルを被って髪を垂らしていて、その表情はうかがえなかったが、ちらっと見えた口元はやはり吊り上っていた。

――やはり彼は、何かを仕掛けにかかっている。間違いない。
 黒子は確信し、あらかじめ、軽く身構えておくことにした。

(Right on!)

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