開けた窓から流れ込む風に、レースのカーテンが揺れる。
寝ていたベッドから上半身を起こすと、頬にぬるい空気を感じた。
「ただいまー。あれ、×××ちゃん起きてたんだ」
ガサガサとビニール袋の音を鳴らしながら部屋に入って来る辰雄。
側までやってくると袋を逆さにし、中身をベッドの上にぶちまけた。
「ほら、アイス。好きなの選んで」
色とりどりのアイスを丁寧に並べ始める。
「バニラでしょ、チョコチップにー、ストロベリーにー…」
「私ストロベリーがいいな」
そう言ってストロベリーの絵柄のカップに手を伸ばす。
すると、伸ばした私の左腕の手首のあたりに巻かれた包帯を見て、辰雄が顔をしかめた。
その様子を無視して、手に取ったアイスのカップの蓋を開ける。
「辰雄、スプーンちょうだい」
「…ああ!ごめんっ」
ぼうっとしていたのか、辰雄は少しの間を開けてスプーンを手渡してきた。
窓の外の景色を見ながら、二人無言でアイスを食べる。
その間も何度か左手首に視線を感じ、辰雄の方へ顔を向けるとすぐに目を逸らされた。
「私は、大丈夫だよ」
悲しげに顔を俯かせた辰雄に、小さい声で呟く。
「大丈夫だから」
この包帯に隠された傷が自分で付けたものだとか、初めての自傷行為で思っていたより深く切り裂いてしまったショックだとか、辰雄の仕事に関わる女の子に嫉妬しているだとか、そんな事はどうでもよくて。
「辰雄がいてくれるなら、それでいいから」
私の行為に想像以上に落ち込んでしまった辰雄に罪悪感を感じながらも、優越感を感じていたり、そんな事もどうでもよくて。
「ごめんね、×××ちゃん」
なんだか、二人の間にぽっかり穴が開いてしまったようで。
あの日以来、お互いうまく笑えなくなってしまっている。
「幸せだね」
そう呟いた私に辰雄は、そうだね、と小さくこぼし、もう一度私の包帯に目をやると先程と同じ様に顔をしかめた。
白いガーゼの優越感