貴重なワインが手に入ったので部屋に来ませんか。


そう言って招かれた部屋で、×××は峯という人間を良く理解せずにやって来た事を後悔していた。




「あの、これ、痛いんですけど」
ネクタイで後ろ手に縛られた両手首を、峯に見えるようにもぞもぞと動かす。


「そうやって動くから痛いんですよ」
ほとんど無表情で答える峯に、×××は深く溜息を吐いた。
「峯さん、全然状況が読めないんですが」




部屋に着いて早々ソファに座らされると、背後にまわった峯に両手首を拘束された。
予想していなかった展開に恐怖を覚えながらも、その慣れた手つきに苦笑する。


「折角のワインだ、貴女にはじっくり味わって貰いたいと思いまして」
「それで拘束される意味がわかりません」
普通に頂きたいんで、放してください。
そう言って×××は正面に立つ峯を睨みつけた。


「それは威嚇のつもりですか」
峯は×××の顎を片手で掴むと、そのままくいっと上に持ち上げる。
そして側に置かれたグラスを手に取りワインを少量口に含むと、そのまま深く口付けるように×××の口内に注いだ。


「んっ…!」
突然の出来事に×××の身体が跳ね上がる。
受け止め切れずに唇の端から溢れた赤い雫が鎖骨の辺りに落ちた。


唇が解放され息を整えていると、×××の足元に屈んだ峯の舌が胸元に伸びた赤い線を丁寧に舐めとる。
その姿はまるで吸血鬼の様で、官能的な光景に×××の脳はくらくらと揺れた。




「お気に召しましたか」
伸ばされた手に頬を撫でられながらそう問われ、×××は停止寸前の思考をぐるぐると巡らせる。
しかし答えを見つける事が出来ずに峯から視線を逸らした。


その様子に鼻で笑うと、峯はもう一度ワインを口に含み、×××に口移しで飲ませる。
×××はワインの味を堪能出来るわけも無く峯の舌の動きに身を任せていた。
すると背後に峯の両手がまわり、縛られていたネクタイが緩んだ。
解放された両手首の縛られていた部分がじんじんと脈を打つ。


「今なら、逃げられますよ」
唇を離しお互いの鼻筋が掠める程の至近距離で言うと、峯は×××の赤くなった手首に唇を落とす。


「…ここまでしておいて、責任、取ってください」
小さな声でそう呟くと、×××は遠慮がちに峯の背中に両腕をまわした。
そんな仕草に峯は満足そうに笑うと口付けを再開し、じっくりと×××の唇を堪能するのであった。


溢れた赤い誘惑




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