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君が笑ってくれればそれで良かった。
当たり前のように側にいて、ずっとずっと笑い合って生きていくのだと。
でも、そんな小さな幸せさえも簡単に壊れるものだと知っていたはず。
この深い深い闇に光を照らしてくれたのは、君だけだった。
「そう、なんだ……」
「俺と歩の闇は深いで、君が想像出来ないほど遥かに……」
歩が兄である清隆のクローンだと知ったのは、火澄からの思いもよらない言葉からだった。
レポート用紙に細かく書かれた文字には難しいことばかり書かれていたが、
すぐに目に付いたのは彼らが成人まで生きられないという文字。
あぁ、だからあなたは私を遠ざけようとしたのか、
時々切なそうに見つめて、苦しいのに平気な振りをする。
「これで分かるやろ、なまえと歩はあまりにも住んでる世界が違う、
あいつの闇に触れることだって出来へん……」
「分かってる、」
「だったら、これ以上歩に…」
「分かってるけど、歩は、バカだよ……どうしようもない位に…」
バカだよね、
それで私を突き放そうとして、どうして?
私はただ側にいるだけで幸せなのに、
それ以上でも以下でもなく、ただ側にいて。
ブレードチルドレンも鳴海清隆もハンターだとかそんなのは知らない、
造物主のゲームだって私は関係がない。
鳴海歩というただ一人の人間を好きだから、
そんな単純なことじゃダメなのかな?
私は、あなたに今どうしても会いたい、伝えたい…
「ねぇ、火澄。私にこれを見せて、このあと歩に見せて、あなたは一体あの人をどうしようとするの?」
「前にも言ったやろ?ただあいつには俺と同じものを見て」
「それでも歩は火澄と同じ場所には行かない、
この真実が闇だとしても、歩はその先を、確かに歩く」
凄く不思議だった、なぜこんなにキッパリと言い切れるのか。
怖くないと言えば嘘になる、あの人が死ぬのは怖くて耐えられないのに。
それでもその闇に突き進むならば、彼は鳴海清隆や運命に勝つことが出来る。
そんな彼をずっと側で見ていきたい、
それは単に自分のワガママにすぎないけど、それくらいはいいよね、
「私は見届けるよ、歩が最後に運命に勝って幸せを掴む瞬間まで」
「後悔しても、知らないで……」
後悔なんてしない、
それが彼を愛した自分の義務だから。
闇を一緒に進むと決めたから……
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