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「アルバフィカ様!」


太陽が優しく人々を包むある昼の日、一際明るい声に呼び止められたアルバフィカは振り返った。


息を切らしながらも、笑顔を向ける少女に足を止めることにした。


「なまえ………」

「こんにちは、アルバフィカ様!」


眩しいほどの笑顔に、アルバフィカはなんとなく口元が緩んでしまう。


「なにかおかしかったですか?」

「いや、毎日元気だなと思って」

「そう、ですか?私は元気だけが取り柄ですから!」


彼女と、なまえという少女と出会ったのは随分前だと記憶している。


聖域周辺の村に暮らすなまえはいつも元気で笑顔を絶やさない。


誰とも接しない自分に対してもいつも明るく挨拶し、会う度に嬉しそうな顔をする。


そしていつしか、彼女と普通に接することができた。


「アテナ様へうちのお花を渡して下さいって、村のみんなが育てたお花です!」

「わかった、私から渡しておこう」

「お言葉に甘えてよろしくお願いします。そして今日も村の為にありがとうございます!」


なまえは深々とお辞儀をすると、アルバフィカはそれを不思議そうに見つめた。


一方のなまえは何かまずいことをしたのだろうかと、一瞬不安になってしまう。


「あの、アルバフィカ様?」

「………すまない、なぜ礼を言われるか分からなくて…」

「だって、アルバフィカ様やアテナの聖闘士達はいつも私たちも守ってくださっている。だからお礼を言いたくて。ダメでしたか?」


首を傾げるなまえに対し、アルバフィカは本気でどう彼女に返せば良いか分からない。


「みんな、口には出さないですけど、いつもアルバフィカ様達には感謝しています。本当に本当に………」

「そう、か………」


アルバフィカはなまえから受け渡された花の束から、一輪の白い花を取り出した。


そしてその白い花を彼女の髪にさした。


「私はどう言っていいか分からない、こうやってでしか礼を表せない……」

「アルバフィカ様、私は嬉しいです!ありがとうございます!」


本当に嬉しそうに笑うなまえに、アルバフィカも釣られて笑った。


この力も疎ましい血も、誰かを守って笑顔にすることが出来たなら、


それは何より幸せなことかもしれない。


目の前の笑顔を守りたい。


そう、新たに決意したのだった――









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