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蒼く澄んだ空の下で、


ただ、あなたが無事であるようにと、


祈りに似た想いで……
















『子供達は、呪いから救われない……救ってくれるのは、あの子だけかもな』



それは出会って暫くした頃に言われた言葉だ。


その一言でどれだけの絶望を感じただろうか、


唯一の救いである彼に言われて、私はどんな想いでそれを聞いていたのか、


あの男、清隆はそれを知っている。


私達が救われないことは分かっていた、
ヤイバの呪いは絶対で、スイッチが入るのは逃れられない運命だと分かっている。


たった1%の希望を持ってしまった私にとって、「神」である清隆に改めて言われるとこの1%の希望は消えてしまう。


それでも、それでもその1%の火を消さずにいたのは、


彼の弟がいたから。


あの人がいてくれたから、この小さな灯火は消えずに済んだのだ。




「寒い……」


なにもないガランとした駅のベンチに腰掛けて待ち人の姿を探した。


数十分前には『結崎ひよの』だった人がここに現れた。


彼女の役割は清隆から早々に聞かされていたし、その存在が偽りであることも知っている。


でも、それを私が誰かに告げる権利がないから知らないフリをしていた。


『なまえさんがいたから、彼はここまで強く立てたと思いますよ?』


寂しそうな笑顔で言われたことを思い出して、彼女もまた巻き込まれた内の一人なのだと思った。


「変な人……こんなことに関わるなんて」


彼は、一体どんな答えを導き出して清隆に挑むつもりなのだろうか。


手のひらに乗せた片方だけのピアスを握り締め、私はただその帰りをひたすら待つ。


どんな答えを出して、例えそれが最悪の結果になったとしても、


私は、彼を支えるつもりでいる。


だから無理矢理まどかさんに居場所を聞いて、来るなと言われたのにこの場所で待つことにしたのだ。


「歩……」


つい最近までは名前を呼べばすぐ近くにいて、気だるそうに「どうした?」って返事が返ってくるのに。


それがないだけでこんなに心にぽっかりと穴が空いたような虚しさを感じる。


私は、長く関わりすぎてしまったのだろうか。


そんなつもりは最初からなかったのに、


「そんなとこにいたら風邪引くぞ」


目の前に影が一つ現れ、顔を上げると呆れたような表情の歩がそこにはいた。


「あゆ、む?」

「来るなって言ったのに、来たんだな……」


溜め息をつきながら隣に腰掛ける歩の表情は少しだけ晴れたような気がして。


真っ先に聞きたかったことを飲み込んで、彼の口から出てくるまで待っていようと決めた。


「約束、守った」

「歩……」

「俺の論理は確かに脆いファンタジーだ、それでもなまえは信じて待っていてくれた……」



信じて待っていたのは、


今に始まったことではない。


あなたは知らない、


私が絶望の中でどれだけ『鳴海歩』という存在にすがって生きてきたのか、


あなたという存在が私の1%の希望となって、小さな灯火を消さずにいる。


「なんで泣いてるの?」

「だって……」

「お互い、この命にタイムリミットがあるけれど」


少しだけ笑いながら、歩は私の涙をそっと拭った。


「どうせなら二人で一秒でも長く生きて、呪いを乗り越えたって言う為に生きていたいって思えたんだ」

「そう、だね……生きよう、一緒に」


思わず歩に抱き着くと、仕方ないなという風に笑って、泣き止むまでそのままでいてくれた。


まだ残る1%の希望は、


あなたと生きる為の小さな、小さな灯火。


私達は、最期の瞬間も希望を捨てずに生きていける。


「好きだよ、なまえが」



愛する人が隣にいれば、


なにも怖くはなかった。











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