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――約束ですよ?
あぁ、確かに約束をした。
あの時は叶えてやれると信じた、小さな約束。
きっと、叶えられそうにないと。
全てを出しきったボロボロの身体、段々と足取りが重くなる。
出来ることならさっさと帰りたいが、仲間があの奥にいる。それに身体がもう限界だと悲鳴をあげていた。
だけど、ずっと探し求めていたものに出会え、本当に満たされていた。
「あー、絶対にあいつは泣くんだろうな」
カルディアは頭上に広がる景色を仰ぎ、こことは違う空間にいる少女の顔がふいに浮かんだ。
長く生きている彼女を少女と呼ぶのはおかしいが、見た目は自分よりは幼い。
彼女は自分より、誰かが傷付くことを酷く悲しみ、戦う力を持たないことに歯痒い思いをしていた。
しかし、彼女が思っていることは実は誰もそう思ってはいない。
その持ち前の明るさと優しさ、純粋で真っ直ぐな心に誰もが救われていることに気付いてないだろう。
だから守りたいと願ってしまう、その小さな身体に背負ったものを全て守りたいと。
「……………」
全て出しきって、後悔はないと思っていた。
脳裏を過るのは彼女の笑顔で、そう思うだけで無性に会いたくなってしまった。
今すぐ会いに行って、抱き締めて。出来るならば口付けをしたいところだが、最年長の同胞に本気で怒られそうな気がして考えるのを止めた。
「やべーな、相当危ない」
きっとこんな姿で帰ったら、まず泣きながら怒鳴られるだろう。
――無茶しすぎです……
いつだってそうだ、ボロボロで帰って来た日には泣きながら怒って。
無茶をするなと言われて、小指を差し出された。
――無茶をしないって、約束です。
子供みたいなやり方に笑ってしまうが、差し出された小指を絡める瞬間は嫌いではない。
それをやった後は、安心したような笑顔に彼女はなるから。
「はっ………随分とのめり込むもんだな」
いつの間にかあの笑顔が離れず、それが大切なものへと変わっていく。
――約束、ですよ。
ひとつだけ、叶えていない約束があった。
デジェルがブルーグラードでオーロラが見えたと話をした時、彼女は見たことがないからと見たいと言った。
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