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12時に鐘が鳴ったら魔法が切れてしまう、


だけどシンデレラの魔法は切れない、
だって最後は王子様が迎えに来るから。


魔法はずっと切れることなく、シンデレラに幸せを与えてくれた………








「ばかじゃねぇか?」

「は?」

「シンデレラが幸せになったのは自分の力だ、
いじめにも耐え、言い付けも守って、更に靴を忘れたずる賢い策にハマった王子もアホだったんだよ」

「いや、確かに意地悪なお姉様のいじめにも耐えたのは分かりますけど、ずる賢いって……」

「シンデレラは計算高い強かな女とみた」


ズバッとそれを言われ、目の前の男を蹴飛ばそうと考えてしまった。


「シンデレラはお前と逆だな」

「逆、ですか?」

「いじめにも耐えられないし、言い付けも守らねぇし」

「言い付けって、遥さんが横暴なだけじゃないですか!」

「ごちゃごちゃ言う前に台本さっさと読みやがれ!」


遥が手に持っていた台本で思い切り叩かれ、部屋の中に気持ちの良い音が響いた。


綺麗によく鳴る頭だな、と捨て台詞を吐いた遥はパソコンに向き合い、仕事を再開した。


ソファーに座ってたなまえは涙目になりながら遥を一瞥したが、手に持っている台本の一ページを捲る。


新人声優として目の前の男、山田遥によってデビューして数ヶ月。


舞い込んだ仕事はおとぎ話のCDの仕事で、主役であるシンデレラに抜擢されたのだった。


新人でいきなり主役はプレッシャーになったが、
なによりもこの役を狙っていたベテランは多い。


そんなベテランを差し置いて主役に選ばれたのは新人で、
当然自分に対する風当たりが冷たかった。


緊張から上手く録れず、中々オッケーを貰えず更に行き詰まる。


そんな時、プロデューサーである遥に呼ばれて来たものの、あんな扱いを受けてしまい更に気が重くなった。


「お前もプロなんだから、魔法とか訳のわかんねーものに憧れんな」

「はい………」

「なんだ、やけに素直だな」

「このシンデレラ役は私しかやれないって思わせるように、頑張りますから!!」


ガッツポーズをしながらなまえはソファーから勢いよく立ち上がり、遥に向けて言った。


遥はデスクの前にまで迫ってきた彼女を愉快そうに眺め、その頭に徐に手を乗せた。


「やるからには、その根性でやれよ」

「は、遥さん!?」

「いいから言われた通りにやれって言ってんだよ!」


額に勢いよくデコピンが入り、あまりの痛みに声が出なかった。


一瞬だけ優しさを見せた彼に不覚にもときめいてしまったが、そんな自分を呪ってやりたい気持ちになったのだ。










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