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「ここにいたのか、随分探したぞ」


部屋からこっそり抜け出したのがバレてしまったが、別に反省する気にならない。


敢えて後ろを振り向かず、そのまま目の前の景色を眺めていると、ふわりと背中から温かいものが伝わってきた。


「温かい……」

「身体がこんなに冷えてる、早く戻ろう」

「嫌、あとちょっとだけお願い!」


シジフォスとしては早く中に入れたい、だがこうしてお願いされると心が揺らいでしまう。


それでも彼女が風邪を引いたら困るので、なんとか自分を奮い立たせてもう一度説得を始めた。


「どうして中に入らないんだ?」

「見たいものがあって、そろそろだから待っていたいの」


こんな明け方に何があるのか、一番冷え込む時間だったが今日は彼女の言うことを聞こうと思った。


甘やかしてるのだと以前カルディアに言われたことがあったが、自覚はあるが彼女が見たいものが何なのかそちらも気になるのも事実。


白い息を吐きながら空をじっと見つめる姿が真剣で、思わずその手を握った。


「どうしたの?」

「手も冷たい、もうちょっと近くにおいで」

「シジフォスの顔見えない……ね、隣に来て」


手招きをしたなまえの言う通りに隣に座り、彼女と同じ方向を眺めた。


一体なにが始まるのか、それも段々と気になってきたのだ。


「あ、きた…」


彼女がそう小さく漏らすと、目の前を指さして笑顔で言った。


「ほら、朝陽。キレイだよね……」

「あぁ、本当に綺麗だ」

「なんだか朝陽見てると、生きてるって実感するの。
今日も1日が始まる太陽、聖戦が嘘みたい」


朝陽をじっと見つめながらそう語るなまえになんとも言えない気持ちになり、シジフォスはなまえを引き寄せて抱き締めた。


どこかに行ってしまう気がして、
胸がきゅっと切なくて苦しくなる。


「どうしたの?急に、」

「大丈夫、だから……なまえがずっと笑っていられる世界にしてみせるから」

「シジフォス……」


聖戦で自分が命を落とすのは構わない、
黄金聖闘士としてアテナや聖域を守るのが使命だったはず。


でも、彼女に出会って恋をして、初めて死にたくないと思えた。
彼女を置いて自分だけ先に逝くつもりはない。


二人でこの聖戦を乗り越えたい。


「シジフォス、」

「……うん?」

「おはよう。今日も1日頑張ろうね」

「あぁ、おはよう」


明日も明後日も、ずっとずっとこの先も朝を無事に迎えられるように。


この笑顔を守る為に、今日も生きていく……










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