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「君には薔薇の紅がよく似合う」



「へ?」



素直に思ったことが言葉に出てしまい、
それを聞いた目の前の女性はきょとんとしていた。



しまったと思ったが既に時は遅く、
自分の目の前に彼女は詰め寄ってきたのだ。



「私がどうしたの?」

「…………なんでもない」

「そう?変なアルバフィカ…」



しばらく考え込むように頭を捻ったが、
これ以上追求しても彼は答えないと判断し、
なまえはアルバフィカに笑顔を向けて元の作業に集中した。



内心焦ったアルバフィカはなまえがこれ以上追求しないと分かるとこっそりため息をつき、
ただ静かになまえの横顔を見た。



なまえはアテナのお世話をしている女性で、
彼女と年齢が近いのでなまえとアテナは仲がよかった。



穏やかな天気だからとアテナは普段忙しい彼女に暇を出し、
せっかくだからどこか出掛けたらと言った。



自分だけ暇を出されたことになまえは最初は渋々と外へ出たが、
聖域から滅多に出ないなまえにとっては見るもの全てが新しいようで、
今はこうして機嫌も直りつつあった。



「私が休暇をいただいたからってアルバフィカまで……」

「アテナ様の命であるなら従わないと、
それになまえを一人で出歩かせるなともおっしゃっていた」

「まあ、迷子になりかねないしね…
黄金聖闘士をこんな私にお供なんて、私としては凄く申し訳ない気分よ…」

「私以外にもアテナ様をお守りする黄金聖闘士はいる、そんなに心配しなくても大丈夫だ」



そういうことではないと突っ込みたかったが、
彼に今は何を言っても自分が丸め込まれそうでこれ以上は何も言わないことにした。



むしろ彼と一緒にいれることがなまえにとっては嬉しく、
正直に言えばアルバフィカを護衛に付けたアテナにかなり感謝だった。



しかしそんな不謹慎なことを本人にまさか言うなんて出来ず、
自分の想いを隠すのに必死だった。








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