ぐ、と踏まれる。
 身体は拘束されていて、うまく動かせないし、悲鳴を上げるのはカッコ悪い。耐えるだけだが、これではあんまりだ。胡坐をかく格好なのは良いけれど、踏まれているのは股間。男にそこを攻撃したら効くのは分かっててわざとやっている。流石、悪魔。
「ねェ?オマエ、くにえだあおいに惚れてんのだってね?」
 言葉がへんだ、し、こんな話をした覚えはなかった。ニヤニヤした、邦枝と同じ長い黒髪をした女。だが、その服装は胸の谷間を強調させるようなもので、男の視線は吸い寄せられるように生理的にそちらに向かうだろう。
「答えろよ」
「ッ、だぁ!や、めろ…ッ」
 踏み締める足に力を込める。というか。体重をちょっとかけるだけでいいのだ。今この状態ならば男なんてとても弱くて脆い生き物に過ぎない。こんな状態からは逃げたいと思うのは誰しも一緒だのはずだ。
「んなンじゃ、ねぇよ……。ただ、学校で関係あったってだけだ」
「ふーーん」
 聞いたくせに興味ないそっけない返事。いったい何を求めているのやら。足は股間から遠のいて、普通に立っているヤツ。魔界からきたロクでもない半狂いの女で、名をアギエルという。
「今くにえだあおいはエッチしてる」
「はあ?!」
 急に何を言い出すのかと思ったら。思わず声が裏返りかけた。ちょっと情けない。たしかに邦枝には恋人がいる。ひと時なんて学校内でもイチャコラしていたので誰もがその関係性については承知の上。ヤることヤってんのはわかり切ってる。だからなんだ。
「見たいだろ?」
「何言っちゃってんの?頭沸いてんのかてめー」
「ザケんなポコチン野郎。見たいくせに。そんでアタシはそんなパワーあるしー」
 どこまでも軽いノリ。ハッキリ言うと、エッチな映像は見たい。しかし、それが邦枝だとすると、見たい気持ちはそんなにない。そもそも、こっちに惚れて股を開いてくれてるわけでもないし、覗き見っていうものもどうかとは思うし。それに、これまで邦枝のことをオカズにしたことはない。したいと思っていないからだ。男ならこういう気持ちはわかるヤツもいると思うが、これを読むのはたぶん腐女子の類だから、きっとピンとこないかもしれないが、そういうもんなわけだ。
「ここに映すよ」
 壁を両手を使って指し示し、こっちの言葉などお構いなしにアギエルは両手に魔力を溜めて、そして放つ。ゆるゆると壁は不自然な光を放ち、そこに映し出される映像はまさに邦枝葵の姿だった。これが今の、現在の邦枝の様子だっていうのか? 科学なんて知らないけど、魔法なんてもっと知らない。ハリーポッターは人気が出たけど好きじゃなかったし。プイと顔を背けた。だから覗き見なんてするべきじゃない。
「…やっ……」
「おおぉー。オマエちゃんと見ろよ、ポロリもありありだよ」
「アギエルっ!!何見せんだっ」
 ついつい視線が壁にいっちゃうのはご愛嬌。仕方がないだろう、抑え込んだ邦枝の吐息とアギエルの言葉の波状攻撃。誰が見たくなる魔法を跳ね除けられるっていうのか。精神的、身体的に元気な男子の悲しい性と理解してもらえればもう十分。要するに、見たくない!って突っぱねながら、やっぱり見たいし、見てしまいました。っていうこと。

 男鹿の姿は見えない。だが、それらしい手先はある。王臣紋が見えたかどうかは分からない。見えないように加工してるわけでもあるまいに。
 そんなことをぶっ飛ばすような邦枝の下着姿が目を釘付けにして離さない。男のことなどAV同様どうでもいいのだ。男の呼吸は低くて、女の呼吸は高い。当たり前だがそれがいい。邦枝の呼吸だ、と感じる。
 胸をブラジャーの上からやわこく揉む。やがてすこし乱暴にずり上げられてあらわになる乳房が、そう大きくなくきめ細かい肌も目を刺さるようだ。乳首の色は薄いピンク。どれだけこの二人は抱き合ったのだろう、手慣れた感じ。だのに、素人っぽいのが邦枝の良さだ。じかに触れる指は心地よくて、鳴くように喉が鳴る。それには甘い響きを帯びていて、まるで誘っているみたいだ。子犬のように好きな男の前では変貌する女の顔の部分を初めて見た。その相手が自分じゃないことに落胆と、興奮を憶えるのがふしぎだった。薄桃がぴんと尖って勃ち上がっていくのがわかる。邦枝はとても感じている。この映像がほんとうに今現在のことなのかどうかは知らないけれど、ただの合成なのかもしれないけれど、そんなことはどうでもよかった。ここでこれを見ているという事実だけがここにある。ただそれだけ。
 屈むと男鹿の姿が瞬間見える。たぶん男鹿なのだろうが、相手が誰であってもどうでもいい。男鹿が彼女の胸に噛みつくように吸いつく。男の性というのはそんなものだ。なぜだか無性にむしゃぶりつきたくなるのは、いつだって愛しい女の胸だったり尻だったり…。丸みを帯びたものに弱いらしい。

「……ッ、」
 股間に集まってくる血液を嘲笑うかのように、再びアギエルがそこを睨め付けるように踏んだ。くるしい。谷間の強調された格好を下から眺めるなんて、本来ならラッキーな役回りなのだろうけど、とくに嬉しいなんてことはない。いたいし。
「文句いう割に喜んでんじゃん☆なんじゃこりゃ」
「イッテェ〜んだよ。さすがに。ヤメロってぇの」
「んま。ツラそうだね?おめでと」
 ぐり。とまた足の力を込められると、痛みが全身に、脳に、ずぎゅんと届く。あといわれた意味も不明。さすが悪魔女。
「どーなってるか、見てあげるよ」
 思ったより小さな、女らしい手が下腹部をゆるりと撫ぜる。と、余韻に浸る間もなく、ズボンのジッパーを下げられて、すぐにズボンとトランクスを同時に下ろされる。下は気づいたら裸だ。外気に触れるとさらに敏感になる。ビンビンに勃ったモノが天井を向いて熱を吐き出す。今にも湯気が漂いそうなほどだ。赤黒く光る欲望に顔を寄せて、いやらしくにやぁりとアギエルは笑った。
「ちょっとちょっとちょっとぉ。こんなんなってんの?坊ちゃんのカチカチチンポ」
 恥じらいというものがないヤツというのも、視的にはクるものがある。断じて好みではないけれど。つんつん、と口でいいながらソコをつんつんと爪弾く。そういう弱い刺激って予想以上に気持ちいいものなのだ。喉から出かかる喘ぎを押し殺して、呼吸を何度も飲み込む。ビクビク蠢く脳みそとはまったく別の意思を持つソレはまともな思考すら奪っていく。先端もちょんちょんとやられる。
「うげ。なんか先っぽぬるぬるなんだけど〜。きったね」
 蔑まれている。意味もなく。なんでだよ、と思うけれど、そんなに嫌な気持ちでないのはなぜなんだろう。
 アギエルは先っぽのぬるぬるを指で塗り伸ばすようにしながら、ケラケラと笑っている。なんで笑われているかはまったくわからない。大きさのことではないと思うが。しかし、先っぽをやわく擦られるとこんなに噴き上げそうなレベルで気持ちいいものだとは知らなかった。自分じゃない誰かにそういうところに触れられるってことは、フツーないことだし、感じることもない。
 なんの前触れもなく、アギエルはイチモツを握り込んでつよく上下に擦った。何回か。シコシコ、ってやつ。そういうことをするんなら、先に言ってくれ、そういうヒマもなかった。
「…く、あぁ…っ」
 精液が飛ぶ。うわ、といってアギエルはそれを避ける素振りをしたが、逃げきれなくてちょっと食らった。髪の毛と顔にちょっぴり。こういうのってエロイ。フェラさせて飲んでくれた女みたいに映る。
「おいおいおい、きったね〜な〜。みこすり半じゃん。ナメんじゃないよ早漏。しッかし笑えるね、みこすり半ってさ。マジでいるんだね」
 まだ萎え切ってないが、すこし萎んだモノはさっきよりは勢いをなくしている。よくもこれほどいえるよなぁと思うほどに蔑むよなぁ。さすがに男として自信がなくなるというものだ。
 しかし、眼前に広がる邦枝の痴態は、すでにコトを進めており、股間に関わるすべてを元気にさせるのに不都合はなかった。すぐに元気を取り戻した。ピンと先っぽはヨダレを垂らした格好で電気に照らされている。情けない姿だ。
 邦枝は身体中を愛撫されてよれよれになっている。そんなに気持ちがいいものなのかどうか、そういう経験はないのでわからないが、彼女の蕩けそうな表情が物語っている。こういう顔をさせてやりたいと思うのが男というもので。こうして魔力に縛られておっ起てているこちらとはおお違いだ。
 邦枝は背中や腹まで愛撫されて、そのあとには下着を剥ぎ取られてしまった。下生えは薄めで、アソコを広げたところは見ていないが、舌先でペチャペチャ音をさせているので舐めまわされているのだろう。全身で応える邦枝は可愛いと思う。こんな姿を見た以上、嘘をいったところで意味があるとも思えないが、こんな姿を見るまでセックスをしたいなどと思ったこともなかったのはほんとうだ。誰も信じないかもしれないし、口にするつもりもないが、これまで邦枝葵をオカズにしたこともなかったのだ。
 男とはふしぎなもので、本気の相手だとスケベな妄想の道具にするのをやめてしまうものなのだ。神格化というか、言葉にすると安っぽいけどそういうものに近いものがある。本命相手にはなかなか手を出さない男心は意外にも女からは理解されにくい。だが、汚いわけじゃないが、こうして男鹿とヤることヤってる姿を見てしまったら、そりゃあ明日──もとい、今日──からオカズになることは間違いなさそうだ。
「シたい?」
 また手を添えて、ときにフッとピンコ勃ちに息を吹きかけて。わざと焦らすような真似をするアギエルはこの状態の男にナニをしたいというのか。されてるほうは脳みそが煮えてるし、さっぱり分からない。ぎゅっと握り込んでもくれない。刺激が欲しいのはどうやら邦枝も同じようで、泣くような声で男鹿の身体にしがみついている。腰が揺れる。こっちは動かせないけど。
 こういうふうに行為がシンクロしてる状況は、精神的に勘違いしてしまいがちで、よくないなと思う。まるでこっちとあっちでエッチなことをしてるみたいな妄想が頭から離れない。エロ脳はどこまでも自分に都合がいい。
「シてえのか、って聞いてんだよ」
「見りゃ、わかんだろ…!シてぇわ、そりゃ」
「あっそー。じゃ、ちょっとだけ」
 アギエルが鈴口にくちびるを寄せて吸いついた。じゅるると鳴る水音がヤラシく響く。思ってたより優しい感覚に後退りたくなる。軽くぱくりと咥えて上下にストローク。上手いかどうかは分からないが、ほしかった刺激に堪らなくなっていた。ガマン汁を口から吐き出しながらまずそうに、モノから口を離した。
「汚されたくないんだよね」
 アギエルは立ち上がって見下ろす。また足を上げた。痛いっていっただろうが、という言葉が出かかる。いったところでムダな言葉。ぐ、と股間に足がのしかかる。ぐにぐに、と踏む。つよく踏んでいるわけじゃない。痛いし、くるしい。だが、気持ちよくないわけじゃない。
「くにえだあおいと一緒にイきな」
「…ッ、おま、なにいってやがる」
「ナニって惚れてんじゃにゃーの?」
 ぐにぐに、ぐりぐり。
 人間、どうやったって快楽を貪れるものなんだなと思う。目の前に大きく映された邦枝のエロ動画と、ほんとうの目の前のアギエルのミニスカの下から覗くパンティと揺れるオッパイ。ちゃんと視覚的にも気持ちよくなれる要素をうまく曲解して股間へとじゃんじゃん血液を送ってくれる。頼んでもないのに。
「アンタはくにえだあおいのどこが良かったの?」
「…なにいわせ、ッんの、悪魔女が」
「さっさと吐けよ」
 揺さぶられる邦枝はとろんとした目をして幸せそうだ。結合部なんかはAV作品じゃないので見えないが、それでよかった。それだけで十分だ。そうだ、実際にセックスをしたからって、すべてを観れるわけじゃないだろう。目はカメラじゃないし体は使っていて忙しいのだから。
「つよくて、弱いとこ、かもなぁ」
 口にすると、思うことがある。感じるものがある。どこに惹かれたのか、なんて気づいた日から考えないようにしていた。恋だと名付けないようにしていた。実らないから。愛にはとうぜんならないから。恋と愛の違いなんてまったく知らないし、これから理解できる日がくるのかすら想像もつかないが。
「…それ、いいね」
 アギエルが笑う。
 そうか。こいつも、恋とかじゃないけれど、惚れてるとかそういう意味合いじゃないだろうけど、邦枝のことを想っている。
 ぐりぐりと踏む足の強さが上がる。くるしさはイコールイけるかも、という快感に変わった。邦枝もほとんど声にならない喘ぎを上げて男にしがみつくだけだ。男鹿の腰の動きも早くなっている。そろそろ3人でイケそうだ。これは3Pじゃないけど。うまいことコントロールしたのはアギエルの手腕。
 ぐぐぐ、と強めに踏まれると呻きながら爆ぜた。情けないことに、女の足でイかされた。こんな想いをした男ってこの広い世の中でもそんなにいないんじゃないだろうか。だが、これまで感じたことがないほどの目が眩むほどの気をやっている感。目の前が星が舞ってる感じでチカチカする。一人エッチにはない充足感がある。初めての感覚。身体からなにかが抜け出ていく。もちろん精子は出てるんだが、そういういらんものじゃなくて、もっとこう必要なやる気とか次にどうするかとか、アギエルはどうだとか、邦枝のこととか、そういうのがいっぺんにどうでもいいことに昇華していく。賢者タイムはそういう時間だ。脳みそが溶けてるんじゃないかと思う時間。溶けでていくのは液体だけじゃない。
「まぬけづら」
 間近に迫るアギエルの顔は端正でキレイだ。目も澄んでいるしまっすぐにこっちを見てくる。キスされそうなほど近づいた顔は、目の真前で止まり、鼻を齧られる。驚いて息が止まる。
 パンパン、と思いきり両側の頬をはたかれる。さっきとは違った意味で目に星が舞う。と思ったらイッたばかりのアレを強く握ってシコシコシコシコと搾り出すようにシゴく。なにも考えられない。享受するしかない。もはや快感と痛みは同義で、悲鳴を上げ続けてもアギエルはその手を止めない。止めたときは頬を思いきりはたかれた。それがループする。シコシコ、パンパン。これなんてDVプレイ? DV強制オナニー ですか、悪魔のお姉さま。


 結局、なんだったのだろう。
 好きなようにイかされて、アギエルに触れることすらないこの行為は。終わって転がされて戒めのような魔力が解けた後にもしばらく動かずにぼんやりと考えた。
 邦枝の映像も最後までは見れていなかった。ほぼ最後の方までは見ながら起てていたけど。邦枝を汚してしまったような気持ちは微塵もなかった。ただ、欲しがる彼女の姿は想像していたものとは違っていたけれど、幻滅するようなものでもなかった。きっと、自分とそう変わらないのだと納得しただけだ。ただの男と、ただの女だと。
 それでも、飲み込めない気持ちのなかのモヤモヤみたいなものはここに蟠っている。これをなんだと問われたら答えようがない。
 つよくて弱い女から、きっと卒業できる。時間はもうすこしかかるけど。そんなふうに哀しく想った。


20.10.31

ハロウィンじゃん?!
で、これ書いてんの?
とビックリしましたwwwアホ

別の葵ちゃんの話があるんですがね、そこから派生した感じの文章です。が、へたですね〜。意味がわかりません。かいたのじぶんなのに。
ただ足コキでイカされただけの話です。
誰だって?
神崎くんのつもりで書いてます。こんな童貞キャラ他にいなくね?三木?でも三木はアギエルにはヒきそうだしね、、、


これを書いてるときにDA PUMPのheart on fireめちゃ聞いてましてね。すごくすごくダンス曲にハマってしまって。しかも和訳を自分は『ハートに火をつけて』としてるわけですよ。なんかもうぴったりだなぁってこんなクソみたいな話を書いてるわけです。それじゃだめじゃん。


まあある意味では大人になってく話みたいなとこですよ。最後無理やりまとめた感じは。
そういうのを書きたかったかどうかはわかりませんが、ただの足コキと鼻ガジが書きたかっただけなのかも。


title : @risyu91414or2

2020/10/31 17:43:42