何度めの彼女との夜だろう。短く切り揃えられた髪はサラリと柔らかな肌──しかも、それは衣服を一枚も纒わぬあられもない姿で──の上にしずかに乗っかっている。彼女の顔は見えない。なぜなら、彼女は後ろを向いているから。だが、その代わりに彼女の華奢ななで肩がやわこく映る。それはもちろんあんなことやこんなことをした情事のあとのゆるい幸せのなかにしかそれはあり得ない、と感じる。きっとこんな、無防備な姿を眼前の彼以外の誰にも見せたことはないだろう。否、それは思い上がりだと彼は知っている。情事ののちの気だるい心持ち、かつ、身体についても同じことが言える今、脳みそだけは冷静に乾きつつあった。ヒヤリとしている乾きではなく、乾燥の乾きである。
 その乾きとともに訪れるのは、彼女の兄の険しい表情だった。決して冷たい男ではない。だが、彼はいつだって厳しく当たる。強くあれ、完璧であれ、と彼は常につつく。その気持ちはよく分かる。心が痛むほどにそれは分かる。だが、甘んじて受け入れられるほどに強いわけじゃない。むしろ弱い。そんなことはとうに分かっている。だからこそ、こうしてこんな空間に身を置いていることに他ならない。時を進めたくない気持ちばかりで、ここにいるということを彼自身は分からないはずもないし、分かれないほど幼くもない。
 彼女の白くつややかな肩は、髪とともに彼女の吐息とダンスを踊るように上下していた。これをいつまでも見ていることは、何度だって彼にとってはできる。その回数を増すごとに、彼女は喜びと悦びをさらにふかく深くしていくことだろう。それを感じないわけにはいかない。彼女の態度など、これまで何度も見てきたからよく分かるのだ。それが、まやかしの現実だと分かりながら。それでも彼は彼女の白く柔らかな肩を抱く。そこに並ぶ首筋に触れるだけの口づけを落とす。この首に愛のしるしを残したって構わない。明日は変わっても、未来は変わらないと彼は知っているから。だから伝う、心は。まやかしだ、と。彼女を抱きながら、婚約者を想う。だからこれは、愛ではない。情ではあるけれど、愛ではない。彼は彼女の肩を見つめながら、それを撫ぜながら、寂しく思った。
「……ノクト、」
 眠りのなかで彼女は彼──ノクト──のことを呼ぶ。彼女の名を呼ぶのは簡単で、それがどうなるか、ノクトは知っていた。知っていて、これから生まれるすべてのことに対して抗えずに彼女の名を呼ぶ。愛ではないと知りながら。婚約者の名をこころのなかだけで呼びながら。
(ルーナ……)
 ルーナは死んでしまったから。その想いを消すように、その悲しみをぶつけるように、声にして呼ぶのは目の前の、彼女の名前。
「…イリス」
 グラディオの妹。そして、イリスは初恋をただひたすらに追いかけてきた、優しくてまっすぐな女の子に他ならない。
 ひくり、とイリスの肩が動く。ほんとうは眠ってなどいなかったのかもしれない。いくら初めてのセックスだったからといって、ただただ疲れて眠りこけてしまうほど、彼女は鈍感ではない。ほんとうは寝たふりだったのだろう。そう感じるほどに細やかなことに身体は反応してしまっている。男を受け入れることがそれほどに深くて、いやらしくて快感で苦痛を伴う幸福なのだということ。否、そんなことノクトには理解できない、漠然とした感想なのだが。吐息にも似た声をイリスは振り向きざまに出す。
「ノクト…、すき……」
 唇とくちびるが重なり合う。この柔らかさに頭のなかがモヤモヤになってしまう。今だってそう。いつだって、彼女の柔らかさにノクトは翻弄されている。愛という情がないと知ってなお。すきと言われて乞われて、男は嫌な気持ちなどしない。むろんそれは、見知った相手であるし、厚意をよせるイリスであるからに他ならない感情だが、それでも愛と呼ぶには近すぎて、また、愛と呼ぶには幼すぎるのだろう。唇とくちびるとの間がなくなっていく。この瞬間だってまだ。
 今日、このまま寝て起きたら水の都へルシス王として向かわなければならない。最後の晩餐。それがイリスとの初めての男と女との交わり。これがしたくて何度だって彼女の元へ戻ってくるわけじゃない。ただの現実逃避と分かりながら、温もりだけ捨てきれなくて戻るだけのこと。馬鹿馬鹿しいと分かっている。何度もこうしているだろうことを、ここにいるグラディオは滑稽なほど知りはしない。そして、目の前のイリスの唇を貪りながら、彼女もまたノクトが婚約者のルーナのことを深く想うことを知らない。どこまでも捻じ曲がっていて、どこまでも歪んでいる。だが、それを知るのはノクトだけで、誰も知らない。イリスも。イリスの兄であるグラディオも。その仲間であるイグニスも、プロンプトも。それを未来に言えば、誰もが分かることになるのだろうけど、そうしたいと思うほどノクトの心根は歪んでなどいない。だが、間違いなくノクトは、彼女を、イリスのことを愛してはいない。そう感じながらも、彼女を抱く。彼女のくちびるに吸いつく。それが、本能だから。死して生きるものの、本能だから。



17.03.06

お疲れ様でございます。さとうです。

エッチなし(描写)編のノクト×イリスです。えーーと、まだたぶん誰もが見てくれてない(そして、誰も欲しがってないであろう)ff15ネタです。
ノクト×イリスでヒャッホー〜!ってなってくださる方がひとりでも声をかけてくれたらエロ編書くし、書きたいんだけどねっ!!(本気)
あと、タイムパラドックスについては語ってない(ワザと)です。これはまごうことなき、『アンブラのせい』ですww
キャラがわからんでも読めるのがエッチシーンだと思ってるので、だれかにプッシュしてほしい今日この頃wwwww

さて。
ff15ですが、ダチに貸しててお祭り参加(カーニバル)もできなかったし、アプデもチャカチャカとオンゲーっぽくされていくのでw 置いてけぼりです。うーーん、次回、強くてニューゲームかなぁ?と思ってます。最高レベルも上がったことだし。あと今月末には13章のアップデートらしいし?
それより考え中なのが、シーズンパスの必要性である。だが、キャラのアナザーストーリーは買うつもりだから、買ったほうがええかなぁ?とか。
なんで躊躇するかってぇーと、ソフト代に二万使ってるからだよバカァ(ff15関連のドラマCDとブルーレイが付いたセットである。しかも未視聴)。
早くプレアブルキャラ動かしたいなぁ。

2017/03/06 23:13:01