白い息を、はく。
それは、いつもなら
寒くてかじかんで、
嫌なことで。
でも、
あなたと一緒なら、
それはなぜか、
べつな意味をもつようで。
それが、
とてもしあわせなことなんだ、
ってきづいたときには
きっと、手遅れになる人が
多いんだろうってことを、
遅れるまえに
気づけたしあわせについて。


 はあ、と息をするだけで白い吐息が目の下を舞う。それはあまりいい気分がすることではなかった。冬のキンキンに冷えた朝や、締め付けるように冷え込んでいく夕暮れを見送る頃から後の、冬の光景。すくなくとも、女子には敵だといえる。なぜならば、女子たちは制服をまとっている以上、スカートが短いからだ。このなかには己でスカートを短く太腿までをも見せている女子も含まれる。それは、こうしてはあ、と息を吐きながらその白さにがっかりしつつも制服をまとう葵、その人も変わりはしない。
 ここ数ヶ月前から始まった、土日に合う彼のいつもとは違う、すこしだけそわそわとした様子。彼氏とのメールのやりとり。電話のやりとり。帰り道(ちなみに、行く道は彼がギリギリすぎたり、または、遅れすぎたりするせいで、それをうまく合わせることができていないことが多い。たまに合わせてもらえる、程度の頻度でしかない。それが、葵にとってはちょっぴり虚しさと、うれしさがないまぜになった気持ちがが頭をもたげる)。帰る前の、廊下を歩くその時間だとか。そういった、こまやかなときたちが、あまりに愛おしくて。葵は自分自身にある意味面食らっている。だって、こんな余った時間みたいなものが気になるだなんて、これまでの人生にはまったく感じられなかったことだから。
 こんな些細なことが、楽しかったり嬉しかったりするのだということに、驚きを隠しえない。あなたがくれた、ささやかな宝物みたいな時間。そうっと、こころのなかだけで葵は呟く。魔法のことば。大すき。



※ 深海にて として書かれたものだけれど、これ以上書けそうにもないので(ショートショートでにごす)。

2018/03/18 06:16:52