深海にて40


※ 結構前のはなし。追記あります

※ 男鹿のひとりエッチ、、
※ おがふるとかふるおがとか言わないでほしいけど、ホモくさいかも。



「で? どこまでヤッたのか、アルファベットで答えよ」
「はあ?」
 古市はいつものように男鹿には理解のできないようなことを平気で口にするから会話にならない。古市は大げさと思われるほどに盛大なため息を吐いた。
「Aはキス、Bはペッティング、Cはエッチしちゃった、ってこと。ついでだけどDは妊娠。そうならないように気をつけろよ、俺たち学生なんだからな」
「……はあ」
「で? どこまで?」
 男鹿は一気にまくしたてる古市の爛々と輝くその目に気圧されている。こういうエロネタや恋愛話には目ざとい古市だ。女のことばかりべらべらとよくやる割に、彼女がいたことがないという悲しいやつである。男鹿は気圧されたまんま頷いた。そして男鹿は説明を受けても意味がわからないところもあった。困る。
「しらん」
「ざっけんな」
 古市は本気で怒っているらしく、いつになく真剣な様子で男鹿の胸ぐらを掴んで間近に睨みつける。ケンカ弱いのにこんな話だけは実にやる気満々。男鹿は古市から盛大に目をそらす。面倒だし、こんな話をしたいわけではない。邦枝と付き合っていることについては最初に教えてやっただろうに。
「知らねえわけねぇだろうが。お前のことだぞ」
「もういいって」
 古市はこの質問の仕方が悪かったのだと思い当たる。すぐに脳内は切り替えられ、いつものとおり男鹿モードに切り替わる。どうやら智将も恥モードに入っていたのだろうか、頭の回転数が足りなかったようだ。男鹿はもはや古市と目を合わせようともしない。そもそもこの質問はオカシイ。いわなきゃならない理由なんてない。
「なあ、男鹿。チューはしたか?」
「ん、…ああ」
「そうか。じゃ、……おっぱいは?」
「んー…、うん。あー、ちょっとな」
「ほぉ…。ちょっとが分かんねえけど」
「ん? なんか、変じゃね? ん?」
「んや、変じゃあねぇよ。普通の恋人同士になった、ってことじゃあないか! おめでとう、男鹿」
 誘導尋問には実に弱いのだった。そして気付く前に笑顔で礼まで付け足してしまう。男鹿は気づいてすぐ古市にパンチをしたあとに「絶対いうなよ、邦枝に」とだけ捨て台詞を付け足した。こういう話を誰かにしてしまったのは実にまずい。葵だってしていないとは限らないのだが、そんなことを男鹿は考えもしないのだった。
 よくよく考えてみたら男鹿のことで知らないことなんてなかった。古市は小5の頃からのあの腐れ縁を思う。確かに、男鹿のせいで行こうとしていた進学校に進めなくなってしまったことはあるけれど、それでも古市の両親は気にした様子はなかった。そもそも「行きたい進学校」というものの理由があまりにヨコシマだったからかもしれない。古市はあのときの自分の気持ちもまた懐かしく感じられるほどに、今のこの石矢魔高校、また少しの間だったけれど聖石矢魔高校に通うことができたということが、頼もしく楽しく嬉しくも思う今生を送っていることを感じていた。
「エッチは、してねぇんだよな…?」
「……………」
 もはや気づいた以上、男鹿は古市の安っぽい誘導尋問には引っかからなかった。仕方がない。ち、と舌打ちを心のなかだけでして、古市は脳みそを動かし始めた。こんな色気のあることに頭を使わずして、いつ使うというのだ。古市は男鹿の両肩をがっしりと掴んでまっすぐに、目を合わせようとしない彼のことを見据えようとまばたきの回数を減らしながら見やった。目を合わせてやると逃げようとするのは、そのまっすぐな瞳に弱いからだ。そしてこの手を男鹿の姉である美咲も使っているということを、古市はよく知っていた。目を逸らさなければ男鹿はいずれ根負けする。男鹿はしばらく粘ったものの、古市のめかぶ納豆オクラ山芋ばりの粘りにとうとう白旗を上げた。
「んな見んじゃねぇよ、キモ市」
「つうか、よ男鹿。お前はさ、邦枝先輩のこと好きなんだろ?」
「──…んーまぁ、嫌いじゃねぇ」
 これは男鹿なりの恋い焦がれているなりの言葉なのだろうか。古市だってそんな男鹿の姿を見たことなどなかったから計り兼ねた。当人のほうがもっともっと分からずに困惑しているのだろうけれど。なぜなら男鹿の周りはいつだって殺伐としていたから、好きだとか恋だとか、そんな甘ったるい感情が生まれるような環境でもなかったのも身をもって理解できる。しかし古市はふと、過去のことを思い出していた。そうだ、男鹿は付き合い始めた次の日にも、同じようなことを口にしていたのだということを。それでは、葵の気持ちが届いていないのかもしれない、とその鈍さに堪らず息を呑む。
「お前さ、付き合いだしてから何ヶ月も経ってんだろ?!」
「んーそーだな」
「そんなんじゃ邦枝先輩は不安でしょーがねぇだろうって!」
「はぁ? なんで」
 女心のなんたらを分かるといえるほど場数なんてないけれど、それでも古市は男鹿よりももっとずっと男女という意味ではなく、一般的な意味合いでヒトの気持ちというものを普通ぐらいには分かっているつもりだ。葵の悩める&揺れる恋心だとか、そういうものに関して。
「お前にはまだピンとこないかもしんないけどっ、でも! フツーなら好きだと思われてるかどーか、って、思うだろ」
 いわれていることが理解できない。男鹿は古市の顔を見たまんま、首を傾げた。古市はそれを見て苦い表情を露わにする。こんなのを好きになる女は前途多難だとしかいいようがないし、とてもとてもかわいそうだと古市は感じる。だからといって、この目の前にいる腐れ縁のこの男をどうこうできるなどとも思えないのだが。古市はそれでも負けじと続ける。思いを込めて。
「彼女だぜ? か、の、じょ。全国の高校生男子が、欲しくて欲しくてたまらない、カノジョ、だぜ? それをもって、お前はなにをも、思わないのかっ?!」
「……………はぁ」
「はあ、とはなんだ、はあ、とは。なんだその気のない返事は。なめてるのか男鹿」
 嫌いじゃない。この表現が男鹿なりの好意であることを古市は、昔から知る彼だからこそ痛いほどに、その不器用な心を分かつことができる。けれど、他の誰がそれを理解するだろう。いくら恋い焦がれた葵だからだといっても、あまりに長いこと思いが報われなければまた彼女も気持ちがくじけてしまうだろう。羨ましさのなかの妬ましさがあったとしても、友人として実った思いに喝采を送らないほど、古市とて人間ができていないわけでもない。一度うんといったが最後、カップルである以上は応援しないことはない。本当なら俺が邦枝先輩の彼氏になりたいくらいに、可愛いところがたくさんあるなぁと思っていながらもその気持ちを押し殺しつつ。
「嫌いじゃないのは、わかった。じゃ、次は好きかどうかだ。お前は、自分の気持ちにも疎いもんな。ケンカしたい、以外はよ」
 そうだった。古市は思い出す。ケンカについては誰よりも素早く動く男鹿だが、他のなにかについては誰よりも動きが遅い。食べることについてはそこそこのスピードだけれど、早食い大将とはいえない、中流家庭に育って食べるものについては飢えていないため、大した特徴のない中段速度で食べる男鹿は、あまりに平均男子である。そう、彼はケンカの強さを他にすれば平均以下、または平均レベル男子なのである。身体の大きさと迫力については別にして。
 だったら、どうすれば分かりやすいカテゴリに男鹿の気持ちとか心とか、そういう見えづらいものを入れることができるのだろう。妬ましいとか羨ましいなどと思いながらも応援したいと思うのは、どこか相反した気持ちだけれど、葵がずっと男鹿に焦がれていく姿を目にすれば、応援しないわけにもいかない。それほどに彼女はとても健気で、応援しないわけにもいかないほどに男鹿はどこまでもにぶかったからだろう。それを踏まえて、古市は妬みとか嫉みとか、そんなくだらなくて下卑た感情をかなぐり捨てて鈍感で鈍感でしようのない男鹿に、まっすぐに向き合う。
 と同時に古市は急にガッと男鹿の股間に手をやって、ソコを鷲掴みにする。さすがの男鹿でもそれは痛い。雄の痛み。内臓を握り込まれる恐怖と痛みだ。男鹿は腰が引けながら、やめろといいつつ古市を小突く。その程度の力しかでなくなるほどに、ぎゅーーっと古市は金玉をしっかりと握っていた。痛みで負ける男鹿の姿を見て、わずか心のなかをスゥーーっと透過しながら痛みに耐える男鹿の顔を見てにやりと笑う。
「殴んない、って約束してくれたら俺も手を離してやんよ」
「……んん〜〜む、………する。やくそく」
「オッケ」
 古市は男鹿の股間から手を離して頷きかける。男鹿も痛みが去って、ようやく普通に話せる状況ができた。それだけのことで安心できる。男鹿は逃げるように古市から体を離して身構える。ベル坊はそんな二人の様子を見て「にににににんっ」とご機嫌な声を出している。どういう場面でこいつは喜ぶのだろう、と古市はいつだって思う。しかし、なぜこんなことになったのか、それは男鹿にはまったく理解の外にあるけれど、きっと解決するときにはどうしてこれを聞いたのか、きっと古市なりの答えがあるのだろう。なぜなら、昔から古市は男鹿よりも賢くて、男鹿よりも遠くを見ていて、男鹿よりも未来を感じていたから。
「マジで聞くから答えろよ?」
 古市の声がワントーン低くなって深刻味を帯びた。目の輝きが爛々と怪しくなってきた。だが、本当のところ、古市の頭のなかは不安で彩られていて、髪の色だけじゃなく脳みそのなかの色までもが味気なく光沢のない灰色に染まっていくかのような気持ちだった。それは、男鹿の身体を案じてのことだ。
「お前さ、ほんっとーーーに、邦枝先輩と、なんか、エッチィこととか、してえ、とか思わねぇの?」
「…分かんねえって」
 そういう話ばかり振るところは男鹿が古市のことを苦手だと思う部分だ。男鹿は男とか女とか、そういうことを考えるのは苦手だ。だが、なにも思わないわけじゃない。葵のことは恋人というものになった以上、それらしいことをしなければならないのも分かっている、つもりだ。だが、それがデートやセックスなのだと分かっていても、急にしたくもないことを背伸びしてできるようになるほど男鹿は大人ではない。そんなことまで頭が回らないし、想像力だって元々あるほうじゃない。行動はしたければしてしまうし、しないでいられることは、さしてしたいことじゃないんだと男鹿は考えている。ぐだぐだと考えてつまらないことに時間を使うくらいだったら、いつもと同じような日々を送った方がきっと相手も楽しいだろうと。そう思うことが逃げなんだと古市から指摘されたくなかった。だから口は噤んだまま。
「お前さ、まじ、オナニーしたことある? まじで答えろよ、まじで」
 古市の口から出たワードに目を向いたまま、男鹿は時が止まった。時間にしてほんの数秒。ジョジョの奇妙な冒険ならザ・ワールドのスタンドでナイフで串刺しにされてしまうほどの時間だ。
「あぁ?」
 まさか下ネタでくるとは思わなかった。男鹿も度肝を抜かれて返答に詰まる。古市の目が本気なのが面倒だ。男鹿は露骨に嫌そうな顔をして睨み返す。もちろん男鹿のガンつけが効く古市ではない。
「意味わかんねぇこというなよ」
「意味、って…どっちの? オナニー、知ってっか? お前からそういう男らしいニオイっつーか、しねえんだよ。だから俺は心配してんじゃねーか。エロ本見たことあるか? エロサイトとか」
「……お前が見せてくんだろうが」
「そう! いつもお前はそうだよな、男鹿。お前は俺が見せた程度の知識しかないんじゃないのか? 自分から進んで見たりしたことないだろう?」
「興味ねえし」
「そうだよな? でもそれって………おかしいんだからな? いっとくけどな」
 急に古市が男鹿のことを全否定でもするかのような言葉を投げかけてくる。浴びせられる言葉のすべてが男鹿を容赦なく攻撃する棘や針のようだ。だが、こんなふうに古市から攻撃されるいわれはない、と男鹿は感じる。古市は目をそらせないほど男鹿の側、真ん前に陣取って獣が噛みつこうとしているかのように寄っていた。逃げるには気付けば不利な状況。古市は音もなくハンターの素質を見せていた。
「だったらなんだよ」
 いつものようにぶっきらぼうに男鹿はいい放つ。だが、ほんとうは興味がないわけじゃない。葵と触れた唇とくちびる。手と手。細い肩。やわらかに膨らんでいる温かい胸。それに少し触れるたび、それはたしかに離れがたい気持ちがモゾモゾと蠢いていた。だが、気づかないふりをしなければ後戻りはできないと思った。比喩にしてはあまりに陳腐な、でもたしかに感じたのは男鹿も葵も一緒で、ふれあうという単にそれだけの、イヤラシサとか性的な意味を含めないふれあいであっても、どうして電気が走るような、ひりつく甘さが彼と彼女の脳を刺激したのだろう。答えがないからどちらも不安になって、そんな気がしてはいけないような気がして、口を閉じてしまう。ほんとうはもっとその先になにがあるのか知りたいと思った。だがそれをなんとか振り払うには、いつもの仲間と、いつものケンカは必要不可欠で、男鹿はどこにいたってどこぞかから「敵キャラ」が現れてくれるからそれすら考えずに済んだ。迷惑なのかありがたいのか分からないほどに。だが、その先を見てみたい気持ちがあるからといって、それは性的なことというわけじゃない。もっと甘やかで、もっと神秘的なことかもしれない。思えば思うほどに分からなくなって、ふれることはタブー視されていく。だが、なにかの拍子にふれたいと思うのだ。また反対に、行き過ぎると思えばなんとかセーブして、自らを諌めてきた。諌めるのにはいつもの生活があればいいし、今までと変わったのは葵の態度くらいのものだ。それなのに古市は男鹿のことを冷たく否定する。面白くない。そう思うばかりだ。
「好きな子とか、タイプの子とか考えたりしながらやるんだよ、普通はさ。うーん、でも俺は知ってる子はオカズにしないけどな。汚したくなくって」
「なんの話をしてんだおめーはよ」
「オナニーの話じゃねーか」
「…どうでもよくね?」
「おい…、まじか。高校生にもなって。夢精とかしちゃうからやっとけよ。俺たちには必要なことじゃないか!」
「声を荒げていう意味がわからん」
 男鹿は性的なことには本当に興味が持てない。それはレディースで暴れてばかりいる最強の姉のせいだと思うこともしばしばだ。そんな姉を見ても美人だとかいえる古市の読めない考えには昔からついていけず、また、ついていこうとも思わなかった。かいつまんでいうと、姉の美咲と古市のせいで女に興味が持てない可能性もあるということだ。きっと古市は女というものに夢を見続けていられる宇宙人で、美咲は女というものを恐ろしい生き物に作り変える魔人だ。夢も希望もありゃしません、な男鹿少年は女というものが守るべき存在でありながら(それは、体力的な意味ではたしかに男の自分よりも非力であることを知っているから。)それ以上に恐怖の存在でもあることを心得ているためだ。むろん、○○のせいでこうなった、などというつもりもない。だが、興味を持てという前に考えることがあるだろうと感じるばかりだ。それをうまく言葉に落とし込み発することができる脳を、男鹿は持ち合わせてはいないのだが。そんなことなどいざ知らず、ベル坊はガラガラで遊んでいる。音がうるさいので気が乗らないことこの上ない。
「やり方を教えてやる」
「パスだ」
「1人でやれるってーのか? 今までしてなかったお前が?」
「オナニーって一人でやるもんなんだろーがよっっっ!!」
 古市が再び男鹿の股間に手を伸ばしてきたのはそのときだ。こいつがホモじゃないのは知っているが、手ほどきを受けたいとも思わない。だが、実際にいわれてみればオナニーというのがなんなのか、男鹿は知らなかったことにはたと気づく。それはなんだ。じゃあ、古市に教えてもらうしかないのだろうか。だが、股間に手をやられて嬉しいわけがあるか。ちょっと殴りたいし。
「離せよ」
「分かんねー、って顔、してんだろ」
「離せ。いえばわかる」
 ああ、と古市は大人しく手を離す。本当にこんなことも分からないやつがいるんだなと噛み締めながら。古市と男鹿が初めて会ったのは小五のとき。あれから腐れ縁が今までずぅっと続いている。あのときから男鹿は女の子に対してなにかいったこともなかった。姉や母親については「スゲーんだ」とさ「コエぇぞ」とかいったりすることはあったけれど、それ以上のことはなかった。もちろん、恋の話なんてこれっぽっちもなかったというのに。そう、今回の男鹿と葵が付き合い始めたことだって、古市はレッドテイルの皆さんから、後から聞いたのだ。男鹿とは毎日話をしていたというのに。男鹿はいってくれなかった。古市はそれが悔しくて、悲しくて、やりきれなくて、つらかったのだ。だからこそ、男鹿に構いたくて、葵とのことも聞きたくて知りたくてからかいたくて仕方ないのだ。
「じゃあ、パンツ脱げ」
 あ? という顔をした男鹿がそこにいて。古市は、は? 当たり前でしょ? という顔をして返した。だが男鹿は理解できず古市の胸ぐらをつかむ。こういうところが面倒だ、そう思うというのに。ベル坊はそんな古市の様子に手を叩いて喜ぶ。さすが魔王の子ども。
「いいから!!」
「うっせーな、わぁーーったよ!」
 同時に男鹿がカチャカチャとベルトを外し、すぐにズボンとトランクスを下ろした。ベル坊は当たり前のことなのでそれには驚きもしない。フリチンこそ正義。それがどんな情けない格好になるか、男鹿には分かっているが、そうしなければオナニーの答えが出ないのだろう。仕方なしに男鹿は下半身を生まれたままの姿へと晒した。だが、性的な意味が含まれているのは事実だ。古市と男鹿の関係間で互いのチンチンを見たことがないわけもない。それでもこの瞬間、なぜだろうか恥ずかしさがこみ上げてくるのは。それを押し殺しながらズルリと下げて露わになった股間はまっさらな光りかと、古市は思った。目を細めていう。
「あーあ、マジか。ほんっとーーにオナったことねぇんだな。ありえねぇ」
「あぁん? うっせぇな、次なにすりゃいいんだよ?」
「チンコ、デカくしないと」
 こうやって、男鹿は古市の力を感じつつ大人の階段を上る。いわれるがままに垂れ下がったペニスを男鹿はつかんで、首をひねりながらそれを動かす。作業的な行為はすくなくともやらしさを生まず、どうしてこんなことをするのか考えるだけにとどまってしまう。ゴシゴシ、とゆるくこするソコは少なくとも反応していない。そんなはずはないだろう、と古市が手を伸ばすとピシャリと男鹿に叩かれた。男鹿のオナニーなんて見ても楽しくもなんともないけれど、古市は瞬時に頭をひねり男鹿が次のステップに進めるであろう道を、彼の代わりに探す。それは、きっと今の自分よりも葵という一人の女子にとってかけがえのない大事なことだろうから。悔しさを涙をのんでやりすごしつつ教えてやる。それが男ってもんだ。そう心のなかだけで唱えつつ。
「チンコ、デカくなるのかよ?」
「お前のやり方がへたなんだ」
「じゃあ……ちょ、わっ」

つづきを読む 2016/08/16 22:39:53