15,000文字くらいなので、見られない方いらっしゃったら連絡くださいませ。
一応、今回の長さのアップは様子見です。
みられない連絡が来たら、速やかに対処する予定でございます。。。

※ ひめかわ夫妻の姫始め
  悲しいかな、内容は無い様

※ もちろんえろいことをしているので閲覧注意


思考停止サイン



「と、…届いた……!」
 それを頼んだのは昨日のこと。潮も愛用しているアマゾンの通販はじつに優秀。住んでいるところが都内ということもあり、頼んだものは次の日には間違いなく届く。この時期であっても、だ。そしてその品揃えはじつに多い。どんなものだって、ニッチなものまで取り揃えているのがアマゾンという通販会社の強みだ。商売として当たったのは、必然といえよう。だが、今回潮が頼んだ品物はあるとは思ってもみなかったものだ。もちろん、買おうとも思っていなかったのであるが。だが、売っていると思えば頼んでしまうというのが人の性。2016年、1月2日。潮はまだ寝ている竜也のいない部屋で届いた包みを開け、一人ほくそ笑んだのだった。胸がキュンとした。





 竜也はあくびをしながら部屋から出てきた。手にしているのはタバコの箱とケータイだ。この二つは起きている間ほとんど手放すことがない。いつもの起床風景だった。顔を洗いに向かったのが分かったので、潮はモーニングコーヒーを入れた。
「おはよう」
「おお、はよ。…つぅかはぇえな」
 竜也は出されたコーヒーを啜りながらタバコに火をつける。その唇がとても愛おしい。ふれたくて堪らない。潮は竜也の顔に手を伸ばした。
「竜也は、きれいだな」
「朝からどうしてそういうセリフ出るの? おかしいでしょ、さすがの俺もついてけねぇよお前のノリにはよ」
 昨日の初詣ではしゃいでいて、夜は疲れて早めにぐったりと寝たと思ったらこれか。竜也はこんな夫婦生活を十年以上も続けてきたのだが、それでも慣れないものもある。そういうやつだと分かりながらも、やはりこのキザなセリフとともに告げられるラブ展開については照れくささだって拭い去れない。さすがに元は男として生きてきただけあって、男らしいキザなことばはバンバン出るらしい。どういう教育だったのかと久我山の家族全員をどつきまわしたい気持ちにもなるが、もちろんそんな短期でおバカなことはしない。ため息ひとつでやり過ごす。
 そんな空気を流すように、潮はタバコをいじる竜也の手に手を添えて、視線が向くのをわかって見据えてくる。こいつはいつもそうだ、竜也は分かっていながらそれでも潮に目をやらずにはいられない。その目の色が欲望の色に彩られているのは、少しだけ赤くなって潤んだ瞳のせいでよくわかった。すこしだけ息を飲む。それを察してふ、と鼻で潮は笑う。どこまで見透かしているつもりなのか。竜也の指を撫ぜる潮の指がくすぐったさを伝えるほどにやさしい。この撫で方は、とても性的だ。タバコを奪い去るその手を見ることは、彼女が竜也の唇を啄ばむため許されなかった。ちゅ、とも音を立てないほどにしずかに唇同士がやさしくふれあう。すぐに離れたその瞳は見開いていて、竜也を冷静に見つめている。潮がいうにはそれはしあわせなのだと。だが、そんな話を遮るように竜也はいう。
「んだよ……さわり方、えっろ」
 わざとムードがないようにつとめている。それが照れ隠しの一つなのだと潮が気づいたのは、結婚してしばらくしてからのことだ。そう思えば自分の身体は否定されてなどいないのだと思える。それすらも潮は嬉しいのだった。だから潮はその竜也がいうまっすぐな言葉を無視していいように解釈する。これも愛だと。そんな潮の指先が竜也のアゴをとらえ、やわこく撫ぜる。ゆるくそれは行ったり来たりをして、やがて唇をゆるく撫ぜる。やがて指が離れ、その代わりに口づけた。今度は先よりもすこしだけ深めに、そして長めに。
 唇が離れてから、竜也がいう。
「シャワー浴びさせて」
 そういえば、これって女の常套句じゃなかっただろうか。頷いた潮を尻目にふと思った竜也だった。
 なぜなら、寝汗をかく季節ではないとしても、やはり寝起きはいろいろと塩梅の悪いことがある。なんだといわれてしまうと答えづらいが、やはり寝汗だとか口のなかの具合だとか。そういうものは誰にでもあるものだと竜也は思う。抱き合うだけで済まないことなど分かっている。潮がやりたいというのであればことは最後まで及ぶだろうことも。もちろん夫婦なのだから、ただの朝の営み、という新感覚。…感覚としては、別に新でもなんでもないけど。言葉的な意味で。
 そこで、横切る妻の傍らで嗅いだ石鹸のようなやさしげな匂い。竜也はわずかに眉を寄せた。こうなることを知って、それでも呼び込んだといわせないように巧妙に仕組まれているかのような、そんな不快感。たまに潮といると感じる、読みあいのような不快さ。それは気のせいだと思いながら、竜也は彼女の傍を通り過ぎた。寝汗を流すためという名目で。どんな企みがあれど、女を抱くときに自分が寝汗にまみれているだなんて、ごめんこうむりたいことだ。それをキザだと笑うやつもいそうではあるが、不潔な身体を晒したいと思う誰かはきっといないだろうと思うから、竜也は己を突き通すことにした。誰かから咎められたわけじゃないけれど。





 胸が高鳴らないはずがない。今日、1月2日は姫始めといわれている。潮が姫川姓になってからだいぶ経つけれど、こんなことを意識したのは初めてのことだった。これまではゆったりした正月はなく、基本的に家にいるということがなかった。それはこれまでの流れのとおり、仕事であったり、付き合いであったりした。だからこそ、今年元旦に出掛けた初詣なるものが生まれて初めての、おめでたいものとなったのだった。
 それもこれも、竜也と潮の身体に関わることが元ではじまったというのは、あまりに皮肉で悲しいことだったけれど、それを乗り越えようとしている竜也の姿を、あの心ないマスコミたちに追われながら当たり障りなるべくすくなく答えようとする竜也をテレビ越しに見れば、潮もまた胸が痛むのだった。
 潮は過去を思う。そうすると、自ずと胸が熱くなって、心だけじゃない、身体も火照ってくるような、そんな感じがする。耳には竜也が浴びているシャワーの音がわずかに聞こえる。それはまるで心地よい聞きなれたクラシックのように今の潮の耳には届いて、ご機嫌で自分の着ているシャツのポケットに手をやった。そのなかには、先に届いたばかりの通販で買ったものが潜んであった。それを指で確かめると、潮は唇を笑みの形に変化させた。そう、これがほしかったのだと彼女は笑んだのである。すくなくとも、それはあやしい企みなんかじゃないことを、先に断っておく。





「お前は先に風呂行ったんだろ。…ったく、よくぼーにしょーじきなヤツ」
 下腹部だけを覆うように巻かれたタオルは、身体を外敵うんぬんから守るにはあまりに心許ない。けれど、それをしないということは言葉なしに紡いだことばを理解してくれていたのだと嬉しみさえ覚える潮は、いつだって竜也へのはげしい想いに狂っている。
「まぁな」
 かのような焦がれ尽くした想いでも、いつだって燃え上がらせることのできる潮はつとめてしずかに竜也に返し、淡々と返すだけだ。それも常のことなので気にするものはいない。両手を広げて潮から竜也に抱きついた。この手で、抱きしめて欲しくてたまらない。何度抱き合っても、その思いが途絶えることはない。1日24時間だって、許してくれるのならばべったり溶け合ってたい。そう思うほどに潮は竜也に依存していたし、それを竜也もまた理解していた。愛という薄っぺらでよれた紙みたいなものかもしれないと、危うく思いながらも。
 抱きとめた潮の身体はいつもよりわずかに熱い。それは病的ななにかではない。医術など学んだことのない竜也の本能が告げていた。女の熱だ、と。この熱を発するのは、きまって女の発情ともいえるサインだということも同時に。それを感じてどきりとしない男は不能か、相手への気持ちが嫌悪か……それだけだ。竜也は一度深呼吸し、己を落ち着かせ、そして、そのうえで潮の細腰を抱き寄せた。屈した。そう思ったけれど、相手が潮ならば仕方ない、そういう思いもあったのだった。
 抱き合うその身体はどちらともなくあたたかくて、とても心地よい。それを感じられることはしあわせに他ならない。抱き合ってすこし離れて今度は口づけあいながら抱き合う。なんてしあわせで、これ以上の幸福を願うのが悪いようにも思えるような、やさしい行為なのだろう。唇を吸いながらどちらともなくそんな幼いことを思った。
 結婚=愛 ではないし、愛=セックスでもない。簡単にくくれない今の世界は居心地が悪いけれど、でも籍をいれたというだけでやさしい。それはある意味お笑い種だ。そんなムダなことを考えられてしまうくらいに、潮のことを抱きしめながら竜也はどうしてこんなにも、今までのいつよりもこの行為に向き合えないのだろうかと、自分に対する嫌悪感をもちながら考えていた。だが、答えはない。ふかふかのベッドに二人で身を寄せ合いながらも、なにか遠いものを気にするだなんて、それは浮気とか不倫とかと呼ばれるなにかにきっと近い。むろん、そんなことはしていないと、竜也としては断じて誓えるけれど。
 パジャマの上から身体を撫でるとそこはすでに熱を放っている。手慣れた様子で竜也は一つ、一つとボタンを外し潮の白さを目に焼きつける。何度見ても年齢を感じさせない、いつまで経っても水を弾く肌だと思う。下着は着けていなかった。そういう性急なところもじつに潮らしかった。首筋に口を寄せながら、手は胸を、腹を、脇を、脇腹を。そして、臍の下に手を埋めてそこには直にはふれずに下を脱がせながら太ももに身を寄せる。それだけで潮の身体はゆるく波打つ。竜也から与えられる微力な刺激の一つ一つが、潮にとってははげしい電流が走るが如く、その身全体を震わせるのだった。パジャマの上ははだけさせられ、下は下ろされてしまい、残る衣服は生まれたままの潮の女の身を隠す薄く小さい布切れ一枚。すでに身体は火照ってくたったとなった無防備な姿で、それでも妖しく光る眼は竜也をしずかに射抜く。竜也の唇がやわこくねちっこく、何度も彼女の太ももの内側をねぶる。そのもどかしさに身を捩りながら、その舌の動きに翻弄される。息が上がる。身体の熱が、潮だけじゃなくてその潮から竜也にも移ってしまうようだ。 部屋全体が熱っぽく感じられる。こうして抱きあうとそう思う。いつも後になって思うのだが、人二人の力で湿度も温度も上げてしまうのだろうか。人の欲望とはふしぎなものだと常々感じる。へたをすれば世界の環境なんてものが熱に浮かされてしまうのでないか、そう思えるくらいに。
「アト、つけちった」
 ちゅう、と音を立てて太ももの内側を吸ったのちに竜也が放った言葉だった。キスマーク。潮はそれが竜也のくれる褒美のようで、甘い痺れるような気持ちとともに身を起こしながら、それを見ようとする。脱げかけたパジャマの羽織を側に落としながら。普段、日に当たることのない腿の内側はとても白い。そこに一つ、跡が残る。これを見ると潮はいつだって思う。私は竜也の所有物なのだと。姫川なのだと。久我山潮ではなくて、姫川潮なのだと。そう思うほどにその跡がつけられたところから一気に脳まで疼くような気持ちよさが潮の思考に届く。その気持ちよさをもっと感じていたい。どこまでも潮じゃなくとも、人は快感に貪欲だ。
「…うれしい」
 いいながら微笑む。潮は先に落としたパジャマのポケットから小さなものを取りだしてそれを己の手のなかに隠す。ぎりぎりまで竜也には見せてやらない。今日のサプライズだ。
「竜也…見てて」
 若干、潮の声が興奮のためにかすれている。潮は両の脚を広げてわずかに彼女の大事なところを隠す下着の露わにしつつ、そこに手をやる。潮の、きれいに切り揃えられたツヤの良い右手の指先はクロッチの中心をスリスリと上下して竜也の心を誘う。これだけ美しい女のこれだけの痴態を見て興奮を覚えない男がいれば、きっとそれはゲイだろう。竜也は知らぬうちに息を詰めてそのサマを見つめていた。元より性欲旺盛でない竜也のせいで、こうして夜な夜な自分を慰めることもあったのだろう。そう思うほどに男としての蹂躙したいという獣じみた思いはふしぎとなりを潜めてゆく。どちらかといえば湧き出でてくるのは、父性に近いもの。愛でたいという思いが強いのが竜也自身にしてみても、意外だった。
「竜也ぁ…。こんなの、どうかな?」
 左手になにかに持っていることは分かっていたが、そこから右手に移ったそれを見て、驚きのあまり言葉を失った。やがてそれを指でなにかすると、ブーン、ブーン、と低い唸りを上げて人工的で耳障りなモータ音が二人の耳に届く。小刻みに潮の手のなかで振動するそれは、先のクロッチに当てがわれて、
「あっ、あぁぁっ! こ、んなっ…」
 それは、ピンクローターだった。AV女優じゃあるまいし、そんなものを夫婦で使ったことはなかった。また、竜也もそういう映像作品は見るにしろ、特段興味はなかったので間近に、しかも使う女の姿を見たのは初めてだった。潮の全身とローターの振動がシンクロしているかのような、ビクビクといった痙攣に近い動きと喘ぎ。この振動に慣れていないのだ。
「お前なにしてんだよ、エロビデオか」
 思わずツッコまずにはおれなかった。だが、目を合わせた潮のトロンと蕩けるような視線に、急に欲が頭を擡げる。感じている。この振動に慣れないまでも、心はもっと、もっとと女豹のように竜也を誘惑している。好きなようにこれも使ってもいいし、私の身体だって好きにしてくれと股を広げているのだ。支配欲は十分に満たされている。けれど、この様子はどこまでいくのだろう。そう思って竜也はローターをあてがうその手に自分の手を重ねて、被さるように上になりながら喘ぎを吸い取るような深いキスをした。この唾液の甘さはきっと、性的興奮の賜物だ。むろん唾液がぬらぬらと銀の糸になって伝うことも然り。
 低い人工的な揺らぎとともに細かに振動するローターをただ押しつけるだけの潮から奪って、そのまま先に潮がやったように隠された彼女の中心部に押し当て上下に揺する。その動きは緩慢としたもので、激しいものではない。振動が激しいので、擦る動きは激しくする必要などないのだ。動きに合わせて潮の声も濡れる。竜也がスイッチを切ると、その声も蠕動もようやくおさまるが、はぁはぁと荒い呼吸だけが部屋のなかを満たす。潮は全身から熱を放って色めき立っている。まだ見えぬ足と足の間にある感覚のつるぼからは、下着にしみ出すほどの愛液でシミになっている。それを竜也は笑いながら指でなぞる。指でふれれば溢れてしまいそうだ。それほどまでに感じているこの潮という女のすべてを暴きたいと思うのは、なにもおかしなことなどではない。
「ドスケベ」
「そっちこそ」
 クスクスと笑いながら潮は竜也の股間に手を伸ばし撫ぜる。それはすでに巻いたタオルを欲望のかたちに押し上げて隆々として脈打っていた。なにがすけべなものか。この男の男たるそそり立つもののかたちのほうがいやらしいしすけべではないかといつも潮は思っている。もちろん自分がすけべなのは理解のうえで笑ったのだが。つ、と竜也の指が布越しに触れるだけでひくりと身体は大きく揺れた。
「こんだけぐっしょりだとか、いいわけできねぇだろ」
 それだけいうと、竜也はその最後の砦である下着を脱がせてしまう。脱がせるときにぬちゃり、と粘液の音がして愛液の糸を引く。だが、離れていくことに潮は嬉しそうだ。一糸纏わぬ姿になって、竜也を待つ。竜也はすぐに潮の股間を見下ろしながらそこを左右に指で押し広げて、その濡れ具合を確かめる。だが、気持ちのよい部位にはけっしてふれようとはしない。ちゅ、と音立てて濡れたところにキスを落とす。それ以外の刺激はまったくくれない。やがて潮の腰がガマンができませんと揺れ始める。
「堪え性のねぇやつ」
「いじわる…。はやく、いれて…」
「どこに? なにを?」
 分かっていながらわざと聞く。たまに竜也もやる焦らしだ。だが、そういう意味では潮は恥じらいなどないので羞恥に悶える姿を見て楽しむ、といったことはできないのだったが。潮はすぐに答えてしまう。楽しませるということはできない。恥じらうふりもわざとらしいから、必要ないのだけれど。
「わ、たしのまんこにぃ…、竜也の、これ…ちょうだい」
 竜也の雄をさすりながらいう。猛ったそれがほしいと。簡単にいってしまうつまらなさに、竜也はもう少し意地悪をするつもりで笑った。
「ふうん、でも、やらねぇ」
「えっ」
 潮がなにかいおうとしたが、それをいわせる前に竜也はローターを潮の雌しべにあてがう。そして息を吐きだす間を置かずに、すぐに振動を大にして押しつける。しかも今回は下着ごしではなく、直の刺激だ。先のものとかなり違う刺激になるだろう。潮の喘ぎは急激な快感に身を震わせ、全身も膣もぜんぶひくひくと蠢かせて悲鳴のように喘ぐ。
「あっあー! あっ、やぁ、だ、ぁめっ、そ、んあっ、やあ、きゅ、急にぃ、やああぁっ」
 すぐに竜也の手が潮の粘液でどろどろになった。加減してやるつもりもない。びくびく動くけれど、腰はがっちりと竜也が押さえつけている。雌しべの柱頭は潮の弱いところだ。とはいってもほかにも弱い部位などたくさん知っているのだが、ここに押し当てられればすぐに気をやってしまうだろう。それを分かってわざとやる。潮の耳元に唇寄せて囁きかける。
「3回、これでイくんだ」
「あ、あ、あ、や、そ、んなぁ…」
 潮は涙声になっている。気持ちよすぎてつらいのだろう。いやじゃないことなど言葉だけなのは承知のうえだ。すでに1回は気をやった。だが休ませてなどやらない。雌しべには動き続ける機械を押し当てたまま。イッたばかりのそこは最初よりももっと敏感で、否、敏感すぎる状態のまま攻め続けられる。気持ちよさも続くと苦痛になる。痺れるような脳への刺激と、実際の体への刺激。合わさって気持ちよさはひりつく痛みへと変化する。敏感すぎる雌しべは全身の自由を潮の身体から奪う。すぐに訪れる絶頂。全身の力がくたっと抜ける。気持ちよさは逃げたいものへと変わる。だが、逃げられない。竜也ががっちりと下肢を押さえ込んでまだ責める。あ、あ、あ、あ、と潮の声は泣くような声に変わっている。スパークするような刺激に耐えきれずに全身を震わせている。息を整えるヒマさえくれない男。
「もっかい」
 押し付けたままのローターは潮の雌しべを揺らせる。今度はそれだけで済ませない。竜也は前ぶれなしに潮の秘孔を舌で撫ぜる。ぬら、ぬらと舌の動きを感じるたびに今までより一層びくんと身体を揺らせて感じ入る。その予想しなかった感覚にひくりと震え、潮は喉のひきつれるような、ひ、という声をもらす。そんなところまで責めてくるなど、願ってはいても行為として表れるなどと思ってもみないことだ。ローターの効果だろうか。そんなことを思いながらも、やはりすぐに潮は思考能力を手放した。こんな快感のなかで考えてなどいられない。人は誰だってキモチヨイコトには弱いのだ。そんな潮の様子に竜也は笑む。のばした舌先で、穴の周りに窄まりたがるしわを舐め伸ばすよう、ゆったりと舐めた。すでにそこも潮の垂らした愛液でトロトロになっている。慣らさなくても指一本くらいは入ってしまいそうだ。もちろんその間も、ローターは弱いところにあてがったままだ。潮がつらいほどに感じているのはわかっている。わざとだ。ヒィヒィいう女をないことにして、竜也は充分にねぶったかと思ったら、舌先をそこへねじ込んだ。呻くような声とヌラヌラとした愛液が竜也を襲う。トロトロと啜りきれないほどのやらしい汁を、可能な限り竜也はじゅるじゅると音を立てて啜る。その音が耳に届くだけで、潮の心は落ち着かなくなる。そんな心など竜也はお構いなしで、ねじ込んだ舌を今度は抜いてしまう。もっと、ほしかったというのに。そのときにキュンと秘孔が締まったのは、舌を出し挿し入れていた竜也ならば手に取るように分かっているはずだ。竜也は焦らすようにのばした舌を秘孔のしわを舐め伸ばすように、一本ずつ、ていねいに舐めていく。それのひとつひとつ、潮の快感につながるのだった。ひくり、ひくりとそれぞれに感じては身をやった。そんななかで潮は弱いところへも刺激を受けているのだから、声が嗄れるほどに溢れ出る声を搾り出した。喉を痛めるほどに。
「も、だめっ…! やめて。も、もれそう…もれちゃうぅ」
「漏らしたら始末すりゃいいさ。心配無用」
 竜也はこういうときのやめてをいちいち気に留めるほどやさしい人間ではない。快感も度がこえると責めているところがところなので催してきたりもするもの。それが人間の生理というやつなのでそうなったらそのときだと思っているだけだ。
 秘孔から竜也の舌先がぬるんと抜けると、すこしだけその刺激が弱まった、気がした。ひくひくと何度かそこは物欲しそうにうごめいた。ここの気持ちよさは性器とは違う類のものだ。潮はまだあまり経験がないので気をやるほどのよさは分からないが、こういうよさもあるのかと興奮を覚えている。それだけでも儲けものだ。ふたたび竜也のとがらせた舌先が秘孔に絡みついてくる。ふれていない膣から透明の汁がどんどんと溢れる。気持ちよさがこの潮の身体には余るほどで、溢れているかのように思えた。
 そこからは、激しい刺激と呼べるものがいまいち足りないと思えるほどに、ふれるかふれないかの距離でふれて、様子見をしていた。預けられるのはローターからの一方的で、押しつけがましいような振動と、それに揺さぶられてしまう潮自身。恥ずかしいものだとも感じた。だが、恥ずかしい自分をどこかへぽーいっとやる、そんな手立ては今ここにはない。恥ずかしさをキモチ良さに変えて、今ここにある感触と行為を楽しむだけだ。だが、今の気持ちよさにはもどかしさが残る。弱いところと、いつもと違うところだけを責められて、いつものとおりにはしてくれていない。だから足りないと、満足しないと脳は追い求めて腰が揺れる。
 竜也は潮にまたすぐに訪れる、脳みそを揺らすほどの絶頂。あまりに小さなうごきの一つにでも反応してしまうほど、脳は働かないけれど刺激に対する反応はとても鋭く、素早い。それは反射という意思とはべつのものだからだ。やっと止めてもらった苦しいほどの快感は、ようやく止み安堵のときが流れる。はぁはぁと荒く激しい呼吸を繰り返す。やっと解放された。顔は涙と涎と汗とで、べちゃべちゃに濡れている。髪も汗で肌に張りついてべったりしている。
「たつやぁ……」
「やりすぎちまったかな」
 そういうと竜也は潮の体液で汚れることなど気にしないで隣にきてベッドに潮の横にひたりとした。呼吸が整うまでしばらく間があるだろうが、ぐったりしながらも竜也にふれてくる。ちゃっかりしているのだ。ちゃあんと股間にもふれてくる。すけべ女め。そう思ったけれど、息切れしている様子があまりに滑稽でもあったので。
「で、お前が回復したら。…さすがに俺も、美味しく頂きたいんデスケド」
 股間をタオルの上から握り込まれながらそういうと、ふ、と潮は鼻で笑った。さすが。欲望には限りがない。潮の指先は器用に竜也のタオルを剥がそうとして、こねこねとゆるく動いている。肯定の意味で潮は竜也に向けて頷いた。元より彼女は貫かれて、激しく揺さぶられながら達したいと願っていたのだ。はらりと床に落ちるタオルは竜也の目に、わずかに見えた。強欲。その言葉が頭に浮かんだ。その言葉の意味するところは、竜也自身なのだろうか。それとも、潮なのだろうか。
「ばか。もう、いいよ。…きて。私の、ここ…、まんこ。いっぱい……っついて」
 脚を広げ直した潮にのしかかるまでの時間は、どのくらい短い時間だったのか、実をいうと竜也には分からない。理性という名のものは、どこかへ吹き飛んでいた。ぬらぬらと濡れて光るそこに竜也自身を埋める速度には気を遣ったけれど、押し込んでしまえばそこからは姫川竜也の性的な時間なのだった。
 絡みつく潮の内部は心地よくて、時折息を詰めたり声を押し殺したりもした。それを見た潮の表情は、現実には竜也は見てはいないけれど、どんな顔をしていたのか、なんていわれなくとも分かる。してやったり、の強気で笑う顔だ。そんな表情はこれで崩れてしまうだろう。竜也は、深くて激しいキスを落とした。舌と舌をねりあわせてその唾液を交換しあって、歯の裏側まで舐め合って。そんな、激しい息切れするようなキスを、潮と。もちろん、言葉なんて奪われたまま。それは竜也も潮も変わらない。
 内奥に欲の楔を打ちつけながら、快感に身を委ねきる潮の、美しさからは遠のいたであろうその汚れた顔を。そんな顔であっても、整ったその中身は変わらない。竜也を欲しがる様子もふくめて、結婚してからというもの一切変わりがない。成長がない、ということではない。それだけ幼いほどにまっすぐな想いだということの証明なのだと竜也は人知れず思っている。ずくずくと潮の奥が竜也と擦れるたびに、むず痒いような痺れが脊椎を伝って脳まで届く。これをなんと呼ぼうか、そんなことを考えられないほどに誰もが思考停止させてゆく。これを何度も味わいたいがために人は生きているし、働くのかもしれない。もっと深くて熱いところとつながりたくて、体勢を変えながら何度も竜也は潮のなかに潜った。
「あ、あ…っ、う、ふ、かぃ…」
 潮は前から後ろからつながるのが好きだ。というのも、竜也は別に気にすることもないだろうといっているのだが、バストの大きさを気にしているのだ。自分は胸が小さいから、とあまり見られたくないと隠し気味だ。正面から見据えるときは、ちゃあんと明かりを暗くしない限り機嫌が悪くなる。今日の行為だって、朝陽がほとんど入らないようにカーテンを閉め切ったままだ。だが潮の身体はバカに正直だからさわられると悦ぶ。胸を責められることはとても潮にとってはエロスのスイッチが入ることでもあるし、自分でさわっても気持ちよくないから竜也にさわってほしいとねだるようなセリフも吐く。それを踏まえて後背位が好きだという。普通に挿入するよりも深く入るし、深い分だけ抜けにくいというのもある。そっちは多少だが。抜けそうになるほど腰を引いて、まだいかないでと潮のナカは切ないほどにキュンと締まって竜也を離さない。そして潮の側から腰をゴリゴリと押しつけてくるサマ。バックが好きといいながら、唇を吸いたがるし、竜也の顔を見たがる。どっちにせよ潮は竜也のいいようにされてしまうのだが、交わるときにいいたいことは勝手にいいたい放題いっている。部屋にこだまする湿っぽい音と、荒々しいほどの呼吸と喘ぎ。いまそれしかこの家にはない。潮が気をやろうとするたびに竜也は強引にその身体を抱いたり寝かせたり寄せたりしながら体勢を変える。涙に濡れた目で潮は懇願する。
「なんでぇ……」
「イキまくったらしんどくならねえ? 俺がイくときいっしょに」
 気が遠くなるほどにさんざんほしがってから、潮はようやくそれを許される。潮のナカに入り込むグロテスクナカ赤黒い筋張った竜也自身は、何度も何度もストロークを繰り返す。そこの先端に集まる光の熱を求めて。あ、う、も、もう、いく、と竜也が小さく告げると潮がぎゅーっと全身を使ってしがみついてきた。さっきあれほどまで何度も昇天して泣きごとをいっていたくせに、気づくと竜也よりも積極的で元気になっている。これは男女の性の違いであり、きっと生涯解けることのないふしぎだ。最後に腰を打ちつけてから、これ以上ないしあわせな気持ちで、竜也は内奥へとその欲を解き放った。このために生きている男とは、どれだけばかなんだろうと思いながらも、そうやって生きていくのをやめられないのだった。放ち終えた精は、やがてすべての気力を奪ってゆく。そこから竜也自身を引き抜くと、ぬちゃりとした音とともに、奥に放った粘液も溢れ出てきた。抜かないでほしいといわんばかりにひくひく蠕動するそこはよく感じた証し。しかし二人の液体が混ざりあうサマは、品があるとはお世辞にもいえない。むしろ抜いたばかりで開いたままの潮の花弁や、その近くで窄まる蕾にしても、どんなにきれいな人間だって隠しきれない動物の部分とでもいうべきか、エグさすらあるとも感じる。射精して脱力したせいだろうか、勝手なことばかり脳内を駆け巡る。
 竜也もその場にゆっくりと横になった。その隣で、今日の竜也はねちっこい、エッチい、と呼吸を整えながらの息絶え絶えで潮はいう。その潮の額に手をやると、汗で少し湿っぽい。一度の行為でこれでは、きっとどのくらい体力があっても足りないだろう。まだその身は竜也よりも熱を放っている。竜也は軽く潮の額の汗を自分の手でぬぐってやりながら苦笑いを浮かべた。
「悪い、さすがに。ヤリ過ぎ」
 これが詫びの言葉でないのは明白だった。潮はまだ整わない呼吸の音をさせながらも、竜也の胸板にその身を委ねた。気がつくとくすくすと笑っている。なんだかんだといっても、潮も嬉しかったのだ。こんなにじっくりと責められた経験など、ほとんどない。いつもは相手に寄った、どちらかといえば寄り添うような行為が多かった。それを思うと先の竜也に思わず潮はニヤついてしまうのだ。
「構わんよ。しっかし、お前……私はイキ死ぬかと思ったぞ」
「…ほんっと、女は何回だってイけるんだよなぁ。すっげぇわ。俺にゃぁ想像もつかねぇ」
「竜也が上手いからじゃないのか」
「……そりゃドーモ」
「私は竜也以外の男は知らんがな」
 くすくす笑いながら潮は置かれていたローターの紐を引っ張り、竜也に見えるようにくるくると回す。これを見ると、先の激しい行為が頭をよぎる。とはいっても学生でもないので、そこで興奮しなおしてもう1ラウンド、というふうにはならない。思い出はグラビアのページをめくるみたいに流れていくもの。
「で、だ。なんでこんなもん買い込みやがった? 使ったことなさそうだったけどな」
 この場面でうぶという言葉を使うにはむりがあるが、最初潮がローターを押し当てたときには、まるでその振動のことなど知らないかのように、彼女は驚いて声を上げていたようだった。直に押し付けたときなんて、悲鳴に近い声でヨガっていたことを思いだす。あれは動画でじっくり撮りたいレベルだった。惜しいことをした、ともやらしい下心丸出しで思ったりもした。そんな心中を察することなく、潮はケロリとしてズレたことをいった。
「昨日アマゾンで買って、今日届いたんだ。便利だよなあ、早く届くし」
「は、あ、え、そう。そういう意味じゃなくて、なんでこんなエログッズ買おうと思ったんだ? 興味あったのかよ」
「ん? ああ、まぁな。今は仕事も休職してるじゃないか。だから時間もあるのでな、エッチな動画とか見たりしてたんだよ。私は無知だからな。教えられたことしか分からないっていうのも、お前もつまらないだろう?」
「ロクでもねぇ予習してたんだな…」
 呆れた顔を隠すこともせず、竜也はため息をついた。いつだって潮は竜也の斜め上をいく。きっと死んだってこいつにはかなわないのだろう。たくさんの意味で。
「なんていうか、マンネリしてるかもしれないな、とか思ってな。初心者向けのグッズだったら使いやすいし、買いやすいだろ?」
「買うの恥ずかしくねぇのかよ…」
「? なぜだ? 通販じゃないか」
 これを聞いてガクッとこない男がいるのだろうか。ため息を殺しきれず吐きだすと、やがて笑った。潮らしいじゃないか。
「…でも、悪かったな。マンネリしてる、って思わせてたか」
「私はそうは思ってないよ。けど、お前があまりシてくれないから…」
 くちづけてまたぎゅっと抱き着いてくる。竜也は先とは別の意味で苦笑いを浮かべながら、それには答えず潮の髪をゆるく撫ぜた。それに甘えるように潮は子どもみたいにすり寄る。
「どーせ今日って日を選んだのは、姫はじめやりてーとか思ってたんだろお前」
「…よ、よくわかったな! 竜也も同じ気持ちだったのか!」
「違ぇわ。姫川って名前だろ、そのネタで毎年毎年飽きもせずにからかわれんだよいっつもいつも。あと、お前そういうの好きじゃん、語呂合わせとか、言葉遊びとか、つまんねーダジャレだとか」
「そうかな? 考えたこともなかったけど」
 なんでも初といえる今の時期。まだ1月2日。初のつかない今年のはじめをひとつこなした。先までの鳴き声などウソのようにすでに潮は笑っている。少しだけ声がかすれているのは気のせいではないだろう。
「たまには、変わったのもいいだろう?」
「………ソーーーネ」
 あれだけ興奮してしまったのだから、否定も照れ隠しも意味がないと悟って、竜也は頷いた。少なくとも自分は驚くほどノッてしまったのだ。そんなサドっ気のある気持ちなど、考えたことも感じたこともなかった。男ならば見目きれいな女を組み敷きたい、そう思うのは必然なことで。アダルトグッズを使うことは、まるでAVみたいで興味が湧かなかった。むろんものは考えようで、自分の気が乗らないときならばイカせるだけの『作業』のために使うという感覚ではアリだとも思っていたが。つまり、潮相手に使う必要など考えていなかった。それは、もちろんそういうことだ。
「なぁ竜也。例えば、お前が相手をしてくれないからと私がさみしくてコレでマスターベーションにふけっていたら…どう思うものなんだ?」
「まじでお前はバカだな」
 呆れて次の言葉などでなくなってしまった。ため息がふたたびこぼれる。反面、これでいいと思う。この底なしのマヌケさと竜也バカさにきっといつだって救われている。竜也はなにもいわずにようやく潮から身体を離し、窓に近づきカーテンを開けた。もう冬の日は雪も降ることなくさんさんとした朝陽を溢していた。もう少しで昼になる。笑えるほどに体力も気力も使い込んだ姫はじめ。竜也は急な明るさに目を細めた。裸で汗にまみれて見る高いところからの眺めはなかなかに圧巻だ。笑いながら先の問いに常套句で返した。
「撮らせろ、って思うに決まってんだろ」
 潮は笑みを浮かべていた。その答えに不満の色など一抹も見せず。なぜならそれは、彼女も同様に思っているからだ。だから、ここから先の話は広げたくはない。竜也はしずかに笑うのをやめた。


16.01.13

お疲れ様でございますーー!
姫川夫妻の、今年の姫はじめ、というありきたりなネタでした。もっと短い予定だったのですが、入れたいネタ
姫はじめ
アナル攻め
もれちゃう、という久我山のことば
ピンクローターを通販で
この辺りですw を思ったよりも長くなったのでがっつり入れ込んだら、ここまで長くなりました。ハイ。

結婚して十年も経ってる夫婦じゃねえよな? とは思うけれど、それでも夢見たいと思うのは、勝手でしょ。
と思いながらポチポチしてました。
もっとこんな夫妻見たい!という意見あったらヨロです。ネタプリw

title : twenty

2016/01/13 23:36:29