ヴァニラとファング


 家族は護るべきもので、アタシの何より大切なもの。じゃあ家族って何だと問われれば、それは血のつながりなんかじゃないと先に言っておく。血のつながりなんて何の意味もない。永劫に続くとしても、それに絆はない。血より強くて深いつながりが、グラン=パルスには確かに在る。それはウチら仲間たちの中では確かな真実。死がアタシらを分かつとしても、大丈夫だって思える確かなもの。そんなものなどないとルシを憎む連中はきっと笑うんだろうけど、アタシらからしたらお前らの方が全然バカ。信じられるものがなくて生きてて楽しいかい? 虚しくならないんだろうか。何かのために一生懸命になれるって素晴らしいことだよ。アタシはヴァニラのためなら、死んだって構いやしない。アタシらは誰よりも深く繋がってる家族なんだ。



 ファングは家族が大事だ。ヴァニラが大事だといつも言う。ファングの気持ちはとっても嬉しいし、私だってファングのことはとても大事。でも、ファングが言う家族と私が思う家族はきっと違う。そんなことを言うとファングは悲しむかもしれないから、私は絶対に言わないけれど、ファングの気持ちと私の気持ちはまったく違うものなんだ。そんなことを言ったらファングはどんな顔をするんだろう? 見てみたいけど、悲しませるのはどうかと思うから言えない。
 だからって、家族って何かっていうと、血のつながってる人=家族っていう風にはならないと思う。血がつながっていても、ひどく恨んだりしていたら、殺し合いなんかになりそうだったり、ケンカばかりしていたりしたのなら、それは家族なんて呼ばない。そんなの他人だ。でも、ほんとうの家族ってものがどんなものなのか、よく分からない。ファングだってほんとうは分かっていない。分かっていないから私たちはとても憧れる。とてもいいものだって思っている。家族がほしいって思う。だから、ファングが家族について熱く語るのもよく分かる。気持ちとしては。でも、私たちは家族じゃない。それは、私は、そう思っている。
 家族っていうのは、私は支え合うものだと思っている。支え合うために、人は結婚して子供を産む。子供のためにも支え合うためにも家族になる必要がある。ニワトリが先かタマゴが先かの話になってしまうけど、愛してるから結婚して、支え合いたいからするのも結婚。でも、子供がほしいからするっていうのもある。結婚ていう言葉ひとつにだっていろんな側面があって、簡単に割り切れないもの。そう考えれば支え合うのは何より大事なことなんじゃないかって私は思う。
 コクーンで会ったライトニング、セラ、スノウたちもそう。サッズとドッチ君のつながりだってとっても美しい。ホープ君とお父さんも反発してたかもしれないけど、分かり合えたんだから終わり良ければすべていいって私は思う。みんなのことがとっても羨ましい。私はそんなことばっかり考えている。
 支え合うことに意味なんてない。人は弱いから、一人じゃ位きていけないから、特に私は──。だから支えが必要。その支えは私ならファング。でも、ファングの支えになんて、私には荷が重い。ファングはとても強いから、ほんとうは私がいなくても彼女は強く、そしてたくましく生きていける。私が引き止めているだけだってこと、気づいてないわけじゃない。私が弱いことでファングは安心してもいる。でも、私は怖い。彼女のすべてを奪っている、そんな気持ちがしてくるから。だから私は、ファングを包み込むつもりで彼女を抱き締めるけれど、どうしたって彼女の力には叶わない。強くて綺麗な魂を持っているのがファングなんだと私は思う。



 私たちの家はメチャクチャにされて。ファングはルシとして、搾り取られるようにラグナロクと化して暴れて暴れてあばれて…。ただ、ひたすらに暴れて壊してすべてを。その痛みが突き刺さる。痛みとして。私は逃げてしまった。その役目をルシとしてやるべきことから逃げて、すべてをファングへ押しつけて。それを感じることが、そうしてファングを殺すよりも拷問よりも辛い目に遭わせたことが、私の罪。だから、遠い未来にきっと、あなたをしあわせにしてあげたいんだ…。ファング…。泣く価値なんてもの、私にはきっとないから、私は誰の前でも泣かないんだ、って決めた。



 久し振りの空はバカみたいに高くて、アタシは見上げるしかできない。ヴァニラはどこにいるんだろう。そして、今は「いつ」なんだろう? どこか忘れたことも多かったみたいだけれど、ボンヤリした頭を覚ますために足を踏み出した。だってそれしかアタシにできることなんてないんだから仕方ないじゃないか。
 笑えるのはクリスタルになってた、ってことはきっちり覚えてることだ。その間ここで、この場所で何があったとかそういうことは、きっとクリスタルのアタシの目も見てきたはずなのに、まったく見た覚えすらない。クリスタルってやっぱり死んでるのと一緒なんだなぁって思った。クリスタルになる直前のことも覚えていない。ただ、ヴァニラのことを守ろうってそれだけで槍を構えてたような気はする。でもそれっていつものアタシだし、思い出したっていうのとはちょっと違うかなっていうふうにも思ったんだ。さぁ、まずはヴァニラを探しにいこう。



 焼け焦げたルシの印を見て分かった。私のあの印はまったく黒く塗られたまんま。その違いを理解できたのは、ファングを話し出してからすぐのことだった。
 ファングの記憶は、少し抜け落ちていた。
 それはファルシの思し召しなのか。辛くてつらい、自分の身を滅ぼしたくなるような、あの想いをファングはどうやらすっぽりと忘れていた。その理由はわからないけれど、それなら、ファングは幸せで、最高の思い出をどんどん作るべきだ、と私は思った。どうやればいいのだろう。
 私がファングにしてあげたいのは、家族として抱き締めて「がんばったね」と言いながら、頭を撫でて背中を撫でて、キスをして、ギュウッとして、「私は家族だからね」と何度も言って、だいすき、って思って。すきだと本気で思いながら、またキスして
体を触ってその存在を目でも触感でも、すべてで忘れたくないって思った。私、それぐらいに、ファングのことが、すき。



 ヴァニラと無事、再会できた。なんだか色々と話をしたけど、あたしも忘れてることも多い。たまに噛み合わないけどヴァニラは「私も覚えてないこといっぱいあるから、気のせいかもしれないし〜」なんてごまかすように言う。それを見過ごすわけないんてないのだけど、でも、なんでごまかそうとするのかあたしには分からないから様子を見てる。心配の必要のないレベルのことなら、知らんぷりしてたほうがお互い心地いいだろ。そういうこと。
 ただ、ヴァニラのスキンシップはあたしが覚えてるのと300パーくらい上がった気がする。こんなにギュウギュウチュッチュしなかった。あたしの体もおかしいのかな。たまにポカポカして、とろんとなってそのまんま寝ちゃいたい時がある。そういう時は、決まってヴァニラが服を脱がして体を触りまくってる。やらしい気もするけど、あたしらは女同士だからあんまり考えたことない。それに、ヴァニラはいつだって「私とファングは家族なんだから」って言ってくれてる。それにあたしはぽかぽかになってるんだ、きっと。ヴァニラのこと、前はちゃんと守れなかったから、これからは死んでも守るんだ。そう決めてる。



15.11.04

超百合文(笑)
というか、矢口とファングは完璧百合です本当に美味しいし有難うございます(まじ)。前に書いてた文なんですが、ある程度書きたいことは書けたと思うので、投下します。

私は13ではファング大好きなんですが、アホの子なんですよね(笑)それも可愛い。あの見た目なのに。そしてキャラ的にはどう見ても今までのシドが半分入ってるからね。

また13はやり直したいけど、可能ならライトさんリターンズが終わってからだな。あと、13-2のオーパーツ集めてED全部みたい(動画で見ても、忘れる)

2015/11/04 22:19:07