思ったより若いなって感じの娘と、もしかしたらアレかな? なんだっけ、援助交際? とかいうんだっけ、そんな感じでヒゲの、こっちも若い男が一緒に来ててさ。まあ聞いてたけど「恋人」だって。電話でね、でもその娘っていうのが思ったより若かったのに驚いたのなんのって。声もキャピキャピした感じじゃなかったからさー。オバちゃんは声だけじゃあんまり分かんないのかもねぇー。こっちとしてはお金さえ払ってくれればいいのさ、相手がどんな年の差とか、付き合いとかじゃなくって。本番してくお客さんなんて、いるんだよそりゃ。温泉の中でやらなきゃいいよアタシらとしてはさ。でも明らかにその娘、電話で脅してきたワケよ。お金は払うけど、裏サイトで見たことについて聞かせろって。あ、この客ヤバイなってピンときたんだ。女将としての勘ってやつ。いや、実はさ、ウチその、コンパニオンとかとの本番とか愛人宿みたいなこととか、裏ではやってんのよ。それが一番金になるからねー。覗き見なんてそんなやましいこたぁしないよ? ウチの旦那とかは知らないけどねえ。タダで他人のセックス見て喜ぶなんて野郎しか喜ばないだろ? それはいいんだよ。あんまり布団とか汚されなきゃいいんだからさ。流れ作業っていうか。でも黙認してるってのがバレると警察も目をつけてくるしね、脅されたらアタシらバレると敵わないんよ。そこでチップ貰ったりもできるしさぁ。やっぱり儲けるってことはさ、側面があるじゃないの。そういうこと。必要悪だと思うわけ。で、手伝ってほしいことと、あ、もちろんそういう意味でのセッティングとサービスのことね。あと、身分証はないんだと言い張るのよ。金は出すし、頭金を送金するからそれで信頼してほしいって話だったわけ。たまにいるのさ、そういう自分の身分も明かせないとか。他にはててなし子みたいに戸籍がないとかさぁ。そういう子には言えないからね、だからアタシは承諾した。何も野暮なことなんて聞いてないよ。人には事情ってもんがあるんだからね。



 揺れる新幹線の中で、禅十郎はグーグーとイビキをかきながら眠っていた。揺り起こされて目を開けた先は那須高原の駅に着く直前だったらしい。禅十郎は隠すことなく大あくびし寝ぼけ眼を擦った。時計を見ると夜十時。こんな時間に生徒とウロついてていいわけがない。けれどもう来てしまった。那須高原に一泊するしかどうやら道はないらしい。
「マジで着いちまった……。あー、どーすんだ俺」
「禅、アタシのことは寧々って下の名前で呼んでよ。学校じゃないんだからさ」
「……………」
 渋っていても結局来てしまったのはそういうことなんだろう。そう、好きとか恋とかそういうものは禅十郎の中にないのだから、それはそれで大丈夫だという自信。何よりキャンセルなんてできない、と駅で泣かれそうになったら断るなんてできない。演技だったのだろうか、あの駅でのウルウル眼は。禅十郎は寧々を見ながら諦めの気持ちで着いて行く。
「うわ、さむ」
 禅十郎はサイフ以外の持ち物なんてない。そもそも来る気がなかったのだ。着替えくらいはコンビニで買わないとなぁとぼんやり寝ぼけ頭で考えた。使えない頭は今日も健在。冷たい風とうまく融合してくれと勝手に思う。寧々はタクシーに乗り込みながら宿の行き先を告げて、すべて手筈通りなんだとようやく禅十郎は悟った。どう考えてもはめられてる…。



「いらっしゃいませ」
 人のよさそうな女将らに部屋に案内されて、暗い明かりの中、雪景色となっているあたりの風景に本当に那須高原まで来てしまったのだとほう、と溜息を吐く。和室の中は温かで、既に食事が用意されていた。タクシーの中でぼうってしている間に連絡でもとっていたのかもしれない。寧々の指先はケータイの上を舐めるように何度も滑っていたからだ。禅十郎には興味がないので見てもいなかったが。タクシーから見える暗い夜景と、明るい雪の様子に目を奪われながら新幹線でも寝たというのにやっぱりうとうとしてしまった。乗り物に乗るのは昔からあんまり得意じゃなくて、すぐにその空気とか揺れのせいか眠くなってしまうのだった。自分で運転するときは勿論大丈夫なのだが、実はそれが不思議だったりする。へんなの。
「ご飯より先に俺、飲みてえから風呂がいいかな〜」
 学校の教師は意外にも夜遅い。なので禅十郎は帰ってすぐシャワーを浴びる。そしてチビリと一杯やってから寝るのだ。よくよく思い出してみればバトルか学校か。面白くもない日々をへーこら送っていたわけだ。灰皿を引き寄せながら一服する。寧々がニッコリ笑う。
「どした?大森……寧々」
 苗字で呼んだら恐ろしい目付きで睨みつけられた。禅十郎はどうでもいいことはすぐに忘れるタイプなのですっかり失念していた。恋人気分で名前で呼び合おうなんて子供の考えそうなことである。
「この部屋、奮発して露天風呂の離れ部屋だからいってらっしゃいよ。そっちだから、露天風呂」
「ちょ、……幾らですかこのお宿はぁ?!」
「いいからいいから」
 禅十郎はもとより来る気がなかったので金だって微々たる金額しか持ってきていない。さすがに慌てた。ここまで来てしまった以上、一泊するしかないというのにどうにも禅十郎には一度で払い切れる金額ではなさそうだ。さっきのお人好しっぽい女将に分割払いでも土下座して頼み込もうかと考えながら、浴衣やタオルの類をワサワサと手にしている。そんな様子を見て寧々がいう。
「ビビんなくていいわよ、支払いなんてとっくに済んでるんだから。今年のアタシのお盆玉、150万円くらいあったわ」
 金持ちって意味分からないし、怖い…。金ってあるところにはあるんだよなぁ、と自分の月給を思い出しながら悲しくなった禅十郎であった。それも言えず後から払うと小さく言って風呂へ向かった。長風呂をして虚しさと疲れとを癒してこよう。禅十郎は黙っていたがそんなことを考え続けていた。もちろん、露天風呂を見たらウワッと思い喜んでお湯を浴びて風呂に入るのだった。



 禅十郎はいけない言葉をいった。生徒と恋とかそんなものはあり得ないと決めつけて。あんなことを言ってよかったのか、悪かったのか。だから寧々はどうしたってそのふざけた言葉を本当のものにしてやりたくなって、敢行したのだ。女体盛りって……裸になって、やるアレだよね? そうネットで検索してそれでも。だから裏サイトで探した旅館で手伝ってもらうことにして、軽く湯を浴びてからホカホカと温まる身体に刺し盛りの一枚とか、ツマとかを並べられてその冷たさに声を押し殺しながら、産まれたまんまの姿だけど、ちゃんと必要なところは隠して。もちほんワカメ酒のために日本酒も目立つところに設置。盛られた寧々は艶かしい。しんとした部屋の中で禅十郎の帰りを待つのは実にワクワクする。そして、ドキドキする。イケナイことをする意味でも、これからどうなるんだろうという意味でも。

 予想より長い風呂の後に戻ってきた禅十郎は、寧々の姿がないことに気づいて声をかけた。
「大も、…寧々。どこだ? 上がったからお前も入ってきたらいいんじゃねえか? いい湯だったしよ」
「禅、アタシは女湯のほういっちゃった。露天は明日入るから、早くこっちきて」
 寧々の声の聞こえるほうに禅十郎は向かった。そういえばまだ飯は食べていない。用意されていたものは冷めてしまったろうが、和食だから問題ないだろう。そう思いながら足を踏み入れた部屋の中にあられもない格好の寧々を確認した。眩しい素肌と、それより少し濃く色付いた場所を隠すために置かれた食物がてらてらと光っている。早くこっちに来なさいよ、そう言っているみたいに。寧々の胸は制服から見てもわかるけれど思っていたより大きい。それが惜しげもなく見える。足は開いていないけれど、すぐに押し倒せるような。壁に彼女は寄りかかって、湿っぽい食べ物を身体の一部に纏わせてそこにいる。一糸も纏わず、ただ、食べ物のみで大事なところを隠して禅十郎を待っていた。
 空腹なんてどうでもいい。禅十郎の口からは溜息に似たものが漏れた。女体盛りだ。初めて見た。というか、普通こんなことをしてくれる女はこの世にはいない。刺身などを下着にして、寧々は少し離れた場所から見下ろす禅十郎をしかと見据えた。寧々は濡れた目をして見上げていう。
「禅…、こっちから、たべて」
 これは、そういうことなんだろうか。禅十郎の理性は揺れていた。そんなつもり頭っからなかったはずなのに、それでも教師とか生徒とかそういうものをぶっ飛ばす威力。女の魅力のすべてをこれでもかというほどぶつけてくる寧々に圧倒された。触れたくて仕方ない。あれを食べれば色付いたあそこが見えるんだろう? そう思って興奮しない男がこの世にいるか。寧々の魔性の笑みが禅十郎の脳を侵していく。暴いて自分のものにしたいと思うのが当然の雄の欲求。半ば駆け寄るように寧々の側に腰を下ろした。片膝はついているけれど。
「寧々、お前よ……、その、こういうのは…」
「お願い。こういうの、したことないのに……身体が熱くて、オカシイの…」
 理性ってなんですか。オカシイって誰ですか。すべて熱に塗れていく。熱と欲はトモダチだ、きっと。
 禅十郎は胸の上に置かれた刺身にぱくつく。言葉通りそれを食べてから、あらわになった乳首を指でクリクリと押しながら刺激する。既に立っていたそこはすごく敏感だ。もう片方も時間を置いてそうされる。胸の先からひりつくような感触が脳に伝う。寧々は声を飲むのと一緒に、盛ったものが落ちないように体全体を動かさないようにするので精一杯だった。これが、こんなことがオトナなんだと思った。同時に、ヤラシクてエッチなんだ、とも。禅十郎の爛々と輝く雄の目を見たら期待しないはずもない。どくどくと胸は高鳴ってどうしようもない。
 暴かれる。全部暴かれる。すべて見られてしまう。煌々と電気の付いた部屋できっと禅十郎のものになってしまう。寧々の胸のうちは期待と不安と、いろんなモヤモヤとよろこびでいっぱいだ。どうすれば禅十郎が喜ぶかとか、そういう細かいことはわからない。だから委ねるのだ。すべてを。
 禅十郎の舌が、寧々の身体をゆるーくすべるたびにひくひくと蠢く身体をなんとか抑える。どうして胸とか腕とか唇とか、そういうところを舐めているのにあそこが疼くんだろう。寧々には不思議でならなかった。脳みそがおかしいのかな。この興奮のなかでイカレたのかな。あそこが濡れていくのが、モジモジと開かずにいる股の間で分かってしまう。これを暴かれるのを分かっていながら、期待しながらも、これを見られたくないとも思う。どこか矛盾した思いが寧々のなかでグルグル回る。寧々の臍を禅十郎の舌が舐め回る。まずは回りから。そのゆるゆると動く様はなんだかエロい。あ、は、あ、あ、と短く喘ぎが漏れるのが恥ずかしい。寧々は息を何度も飲もうとする。けれど禅十郎は意地悪だった。その吐息の間を縫ったみたいにぬるりと臍の中に舌を入れ込んで来て、身体が跳ねた。びくん、と大きく。もう刺身は食べた後だったから盛ってあるものは無かったので、特に辺りを散らかすこともない。ただ、後ろに寄りかかっていた壁に頭を打ったときの音が派手だった、それだけだ。ゴヅン、と。
「おい、だ、大丈夫か、寧々」
 名前で呼ぶことにはすぐに慣れた。頭の中では大森、というより寧々のほうが呼びやすいと思っていたのだし。寧々の涙目は痛みのせいなんかじゃないのもとうに知っていたから、大丈夫とちいさくいった寧々を見ればまたスイッチは切り替わる。性的な意味で。頭を抱いて軽く撫でてやると、寧々は耳元でねだる。
「…禅。アタシ、禅とキス、したぃ…」
 こんなこと言われてぶっ飛ばない男がいるんなら連れてこい。教え子の唇を吸いながらゆっくり座布団の上にその身体を横たえる。当たり前だ、足と足の中間の具合だって見たい。きっとPTAで死ぬほど叩かれて追いやられるんだろうけど、今この瞬間ならそれでもいいと思うほど興奮している。ハッキリいって股間抑えっぱなしだ。どうすればいいんだ、これ。まだ抑えているけど、これ以上いったらたぶん歯止めが利かない。縋るように、願うように、顔を間近に目と目を合わせて、禅十郎は寧々を見つめた。
「もっと…」
 寧々がキスをねだるから軽く、チュッとやった。好きという意味。それは寧々の側の話で、大人になればキスなんてセックスの中途だ。ただの流れ作業の一つ、そう思うとどこか冷静になれる。今こいつとやって、めちゃくちゃやっちゃって…その途中の燃え上がる気持ちはたぶん偽りだと心のなかで言い聞かせて、考えながらまたチュッとやって、そうして禅十郎は寧々に聞いた。
「教師だからいうんじゃねえ…。こんなおっさんと、こんなことして、いいわけねけだろ。ちゃんと、考えろ…。お前はまだまだ、ガキなんだから…」
「ガキだっていわれてもいいの。…アタシは好き。禅のことが、すき。だからシてもいいって、そう思うの」
 もう一度問う。理性ってなんですか。オカシイって誰ですか。ねぇ、ねぇ、ねえ。


14.12.12

うまく描写できてない女体盛りですw

寧々とせんせーはやっちゃうw とか思いながら書いてます。ろくでもない天皇誕生日の話を書いてますねwww もしかしたら時間的にクリスマスイブかも。

なんというか、視点はコロコロ切り替わるんで読みづらいでしょうか?
楽しみにしてくれてる人がいない可能性もあると思いつつ(アクセス少ないからw)勝手に書いてます。この辺りのこと思いついて書き始めたので、書けてよかったです。
2014/12/12 23:42:44