※ ひめかわ夫妻の姫川と神崎(×ではないですよ。念のため)
 501愛よりセックスとつながってる


 ゴルフの打ちっ放しには時期的に寒いのでやめた。神崎の家に行った。そのほうがマスコミに嗅ぎつけられやしないかと思ったのだ。暴力団関係とかヤクザの家に出入りしているのはまずいとも思ったが、こういうつながりは上のものでは当たり前だ。隠し通せば問題はない。政治家、大物芸能人、すべてそういう荒っぽいのとつながっているのは確かだ。顔の広さが仇になることもあることなど、当然の世界に生きる竜也は神崎というヤクザもののところに出入りするのは、できるだけ避けたかった。しかし、ただの同級生なのだ。それで十分。後ろめたいことなどしないと決めている。というか、姫川がのこのこやってきたのは、神崎から呼ばれたからだ。家に呼ぶのどうよ? とお互い思ったけれど、どこにいっても何かは着いてくるのであまり気にしないことにする。

「うっす、来たけど」
「お、お? イケ川じゃねーか。どしたぁ
 一言めにこれですか。髪をタマシイのリーゼントに決めていないのはただの変装である。ちなみにこれがバレたことはない。さすがに組の看板ぶら下げたところに行くには細工が必要だったのだ。そんなことも分からずアホはあっさりと姫川を呼ぶものだから。何もいわず睨みつけながら神崎組と書かれた木彫りの看板をバシバシとやった。それだけで意味は通じたらしい。
「…悪りぃ」
 気づけよバカヤロー。
 そんなこともありながら、神崎の部屋に通される。何ヶ月かまえにバッタリ会ってそれからたまにLINEをやるようになった。神崎が慌てて連絡を寄越したのは『びっくり記者会見』のあとだ。心配だとはいわなかったけれど、心配しているのはありありと分かる。心配されるだろうなとは思ったけれど、まさかその相手が神崎だとは思いもよらなかったけれど。
「嫁さんどーなん?」
「このまえから病院」
 炬燵にミカンに地べたに座る和室スタイル。偉くなつかしい雰囲気だ。姫川はずっと洋室で暮らしている。靴は脱ぐけど、外国にいくことも多い。だから神崎の家のような日本のお屋敷みたいなところは、実はあまり行ったことがない。和室は何処か寒くて落ち着かない。これを口にしたら文句と茶碗でも飛んできそうなのでやめておくが。
「けっこーあれから時間経っちまったもんなぁ」
 記者会見からということは言わなくても分かる。潮の親にあてつけみたいにして突如やった記者会見。だが世間の風はイクメンパパを応援してくれる。思ったより竜也には味方が多くなった。
「でもお前はあいかわらず独身?」
「うっせーなぁ」
 三十路で結婚してないヤクザとかどうなんだ。神崎は昔の任侠映画みたいなヤクザを目指しているらしいと風の噂で聞いた。そんな考えで組を束ねるなんてむちゃくちゃだ。向いてないもいいとこだろう。ドンパチなどできるのだろうかと思うが、そこらへんも関係ないのだからと黙っておくことにしている。
「もしかして魔法使えるようになったかぁ?」
「は?なにそれ」
「30すぎて童貞だと、魔法使いになれるって都市伝説が…」
 パンチはよけた。来るのがわかってる拳をよけられないほどモウロクしてもいない。竜也は笑いながら冗談だといった。神崎にも一応彼女がいることだって聞いている。だが結婚の話はしていないな、そう思っただけのことだ。泊のないヤクザ。
「できて、よかったじゃねぇの」
「そーね」
 竜也の気のない返事に、神崎は横目でその様子を伺う。神崎は思うのだ。これは姫川なりの照れ隠しだろう。しかし、とふと思い起こす。赤ん坊が生まれるのは十月十日。まだだいぶ早いのではないか。
「入院ってなんだ? 早くね?」
「……調子悪いみたいで。俺はなんもできねぇから」
 思ってもないことだった。神崎は目を丸くしながら聞いてもよいものか考えていた。
「お前は子供って、どー思ってんの?」
 パパになるのが似合わないお坊ちゃまとしか見えない竜也のことを神崎は不思議に思った。ただ、言葉足らずで意味が通じたかどうか。竜也はぼんやりとあらぬ方向を見て、過去に潮にいった言葉を繰り返す。
「ガキは、わけわかんねーしきたねーから、苦手」
 それでもできないといわれるとどうしようと思うし、できたといわれれば嬉しくもなる。女ほど喜びはしないけれど胸がポカッと温かくなってフワフワした気分になるくらいは。しかし、反対によく分からないいきものが新しく生まれるのだから不安もある。それは口にも態度にも表していないと竜也自身は思っている。
「俺も、そー思うなぁ」
 神崎も子供というものに縁がなく、ピンとこない。それを口にしたのだった。
「嘘。お前はガキ、好きだろ」
 竜也がいった。これは高校のときから思っていたことだ。あの姪っ子への溢れんばかりの愛情について、誰が疑うのだろうか。それに気づいていないのはきっと当人の神崎だけである。
「好きじゃねーわ。手に負えねえし」
「今どき、イクメンはモテるんだぜ? 俺はマジでガキは苦手だから、つくるなんて考えたことねーわ」
 おかしなものだと思う。因果なものだと思う。考えたこともなく、むしろ敬遠していたもののほうが先に子宝に恵まれるとか、結婚も当然早いだとか。でもなにより。
「日本って、子供生まれるとそっちばっか大事にすんじゃん。アレ、なんかなじめないっつーか。キモくね?」
「…ふーん、そう。あっそぉ
 竜也の言葉を聞いた途端、なぜかニヤニヤしだす神崎こそがキモいのでちょっと引いた。
「嫁さんのオッパイしゃぶっててぇだけじゃねーの」
「んなアホな」
 神崎からの茶化しで場が和む。言葉は品がないけれど神崎が思ったのは、竜也の愛情へと飢えと表し方の不器用さが意外だったということだ。あまりいうとへそを曲げそうなので謹んでおくが。
 神崎の思いとは裏腹に、竜也は言葉通りに受け取って鳳城林檎のことを思い出していた。フェラの絶技をもったエロい看護婦。「ヌいてあげるだけ」なんて夢みたいなことをいうスケベ女。ノコノコ口車に乗ってしまったものの、しゃぶられながら後悔するくらいなら潮を誘えばよかったのに。ただ、体調悪くて入院させてるのにそういうのってちょっとあれだよなぁ、商売女じゃあるまいし。結局、種はなくても性欲が邪魔をするんだよななどと嘲笑いたくなる。目の前にいる神崎の顔を見る。そういうこと感じたことないんだろうな。移り気なんて言葉は神崎からは程遠い。
「お前、サッサと結婚しろよ……」
「は? 何急に?! 嫌味?」
 パパが似合うヤクザは結婚できなくて、パパが似合わないリーゼントは子供を作りましたとさ。どれだけこの世はむちゃなんだ。竜也はため息混じりに笑った。慣れないことばかりで考えることだらけだ。どうすればいいのか分からないことだらけだ。金は有り余るほどあるのに解決はしない。金だけでは材料の足りないことだらけだ。子供なんて人工のものなのに自然なので手に負えない。不安がないはずがない。


すなおじゃない男たち



14.11.22


ただの姫川と神崎が子供について語るというだけの話で、オチがなくて苦しんだんですよね。
思ったより長い上に語ってないっていう、ね……
すなおじゃないんです。でもそれが子供っぽくでもかわいい感じになればいいかな、と。

神崎の話についてはあんまり考えてないんですが、恋人がいるのか?いるのかあ?!みたいな。絶対からかわれてます。さすがに三十路でDTはないと思うんだが…(答えもない。念のため)。

しばらく姫川のウダウダを書いてもいいかもしんない。そして結構ある浮気ネタ。悪いやつだなw でもねそんなもんだと思うんですよね、浮気って少なからず何回かはほとんどあるんじゃね?って思うんだが、違うのか? 私はおかしいんですかね?
みなさんはどーですか?
2014/11/22 13:12:56