※ 神崎&パー子のくだらんラブい話


「俺、家継ぐのやめる」
 急に神崎がそんなことを声高らかに宣言した。あまりに唐突なことだったので周りのみんなが我が耳を疑った。それならば、今までやってきたことはなんだったのか。ムダだったというのか。神崎の考えが分からずただただ周りのものは驚き立ち尽くした。
「親父にもいった。勝手にしろ、だとよ」
 吐き捨てるようにいって、神崎はすべてを捨てた。突然告げられた由加はボヤ〜っとした顔のまま、神崎のその不貞腐れたような様子に首を傾げる。ヤクザにならないというのなら、彼はなにになるのだろう。カタギになるというのだろうか。なんだかしっくりこない。父親の背中を追う彼のことしか見たことがなかったから。
「でも、急ッスね。そんな軽くポイってしてよかったんッスか?」
 神崎は思う。男には譲れないものがある。口に出す必要もないと思っている。自分のなかにはだけで譲れないのだから、それが認められないというのであれば、やめるしかない。どちらを優先するかだ。神崎にはどうしても譲れなかったのだ。それを親父にもいった。そして親父は諦めたように、ため息まじりに勝手にしろと返してきたのだ。もう神崎組を継ぐものなんていない。それでいいのかもしれない。カタギとして生きるのも、自分という筋を通すためならば仕方のないことなのだと。
「いいんだよ」
 神崎はそれしかいわなかった。なにもかも、もう決めたんだ、といわんばかりに口を横に結んだままつよく頷く。理由について、神崎は由加に語ろうとはしない。なにか強い意志だけは感じられる。由加はそれ以上聞くことができなくて口を噤んだ。心配ではあったが、この頑なな様子では口も挟めないだろう。

 ある日、そんな由加の想いなどいざ知らず、夏目と城山と神崎、いつもの三人でパシられ城山の買ってきた弁当をかっこむ。石矢魔高校には売店がないので近くの店まで行かなければならない。昼食用のコロッケはすぐに売り切れてしまうし、食べ盛りの少年たちによって急がないと買われてしまうのだ。この食事闘争には神崎たちももれなく参加しているものの、城山が行くのは常なわけで、城山が買えなかったときの神崎の機嫌の悪さといったらない。だいたい、神崎の買い物だとわかれば後輩らが譲るので買えないということは殆ど無いのだが、たまにいった時点で売り切れのときがあるのだ。
「どうして急に家継ぐのやめるなんていいだしたのさ、神崎くん」
 それを夏目が言うのは当然だった。もう卒業を間近にした三年の神崎たちに今からできる就活なんてほとんどない。冬休みが終わった途端に、急に神崎は家を継がないなどと言い出したのだ。驚かないわけがない。
 神崎はすこし考えるような顔をした。城山が買ってきた弁当を咀嚼しながら、それを食べ終えると袋に乱雑に入れた。話が進まないので夏目はため息まじりにいった。促すためだ。
「由加ちゃん、ビックリしてたみたいだよ。俺らもそうだけどさ、ね、城ちゃん」
 気のない返事をする城山と、面白くなさそうな神崎の狭間で夏目が答えを待つ。
「継ぐんなら、筆下ろしぐらいしろっていわれて、連れてかれそうなって。俺は嫌だ、ふざけんなってケンカになってな」
 硬派は、硬派でしかない。男には曲げられないものっていうのがある。譲れないものがある。神崎にとってはそれが、軟派よろしく好きでもない女と懇ろになるような商売女と寝るだなんて、考えられないことだったのだ。これが心に決めたひとがいないときなら、もしかしたら承諾してしまったのかもしれないけれど、もう今は無理なのだと、譲れないのだと思ったのだ。
「気持ちが入らないと…ってやつかぁ。なんかいーよね、そういうの」
「なんだかんだいって、大事にしてますよね。神崎さん」



 この話は、実に分かりやすく夏目によって由加に暴露されることとなる。
「要するに、だぁ〜い好きな由加ちゃん以外と、よろしくシたくないってワケぇ。愛されてるねえ〜」
「えっへっへっへ〜」
「ニヤニヤしちゃって」
「むじょーけんに、そーゆうの聞いたら嬉しいっしょ、フツウは。」


14.11.18

糖度高めな神崎くんが継ぎませんネタw
アホすぎる息子に呆れた親父ってとこですか。ちなみにまだなの?!とかならないのは、みんな知ってるからなんだよね、神崎くんDTなのは。
こーいう神崎くんが神崎くんらし可愛いような気がしてなりませんww

わざとストレートな表現をしなかったり、言葉で説明しないようにしてます。わからない人がいたらなんだかすいません。わざとですw
2014/11/18 16:17:59