※ 神崎と由加、恋人設定な小咄

 手を握るのは割とふつう。一緒に帰るのも当たり前。同じストローから飲み物を分け合うのも何気なく当たり前の行動だったけれど、そこに「好き」とか「恋人」なんてことばが入った途端に変わるものだなんて知らなかった。今まで通り一緒にいることが、家の近いもの同士で行き帰りをともにすることが当たり前になっている。だが、それが恋に発展するだなんて思ってもなかった。

「せんぱーい、まっすぐ帰るッスか?」
「ん、今日は………」
 姪の二葉が預けられる日だ。神崎は早く帰るべきか、わざと遅く帰るべきか考え所だった。そこおかしな間に由加はすぐに気づいた。ニヤリ、由加は笑っていった。
「そっかー。なら、早く帰りましょ」
 …う、バレてる。知られすぎているというのは、結構やりづらいものだ。由加は二葉と仲良しなのである。
「なんでイヤなんッスかぁ」
 住宅地の小道を歩く。サクサクと耳に届く心地いい音が、木の葉が落ちたことを知らせてくれる。夏にはカツカツといった冷めた足音だったのに。気づけば辺りもすっかり秋めいて、肌寒さに薄いながらもすでに長袖。これからくる冬を告げている。
「ヤってわけじゃねーよ」
「マ、そっスよね。先輩、二葉ちんのこと、だい好きッスもんね〜」
「あぁ? んだよそれ」
「アレ? もしかして照れてる? 照れてるッスかぁ?」
 ズンズンと仏頂面で突き進むようにいってしまう神崎の後ろを由加は追った。二葉のことは好きとか嫌いとかそういうものではなくて、兄の子供で父の孫で、神崎の姪なのだ。ただそれだけだ。照れるわけがないと思いつつ、好きだのだい好きだのといわれると照れがでてくる自分が嫌だった。神崎は日本人男子として、断固そういう軟派なことを口にしたくないと思った。だから、急に振り返ってそれに驚く由加の手を手繰り寄せてそのまま屈んで唇にやわらかに触れた。ここに触れるのは初めてじゃないけれど、怒ったフリをしながら触れたのはきっと初めて。由加を黙らせるにはこれで充分。
「…ガキ、わけわかんねーから。苦手なんだよ」
 由加も、あとすこしだけこうやってぶらぶらしていたいと思った。可愛くて堪らない二葉には悪いけれど。


14.11.17

久々に神崎とパー子ちゃんです!w

最近ネタがないというか、ここのところ本もあまり読めてなくて色々とダメです……。やれやれ。ということでリハビリがてら短文投下していこうかな、と
内容としてはいまいちですが、しばらくお付き合いください。

2014/11/17 09:11:12