マリオは今日なん度目になるでしょうか、重苦しいため息をついています。その様子を見るのは、ここ最近では珍しくなく、弟のルイージも心配していました。しかし、ルイージには悪いな、と思うところがあって声を掛けることができませんでした。しかたがないのでヨッシーに相談することにしました。本当はこんな話はするべきではないのかもしれないけれど、他に頼れる相手もいなかったのです。
「ボクとお茶ですか？ 珍しいですね」
「うん。奢るよ」
ルイージは電話を切り、ヨッシーの待つハナチャン喫茶に出かけていきました。ちなみに、ハナチャンの出すコーヒーは絶品です。クッキーはヨッシー工場からの仕入れで高級品があると有名ですが、そんな場所にヨッシーを呼んでよかったものか、道すがら思ったりもするのでした。しかし近いということもあって、この喫茶店はルイージの行きつけなのです。ヨッシーは見かけたこともないし、まぁいいかと思い直すことにし、店に入りました。可愛らしい店内に、ヒゲの男の姿はどうなのか。それは行きつけなのであまり気になりません。しかし、すでに待って座っていたヨッシーの愛らしい姿を見たら、ふと感じたことです。少々苦笑いしつつもルイージはヨッシーに向かい合って座りました。
「やあヨッシー。ここのコーヒーも、寒い日はココアもオススメだよ」
「じゃあ、ボクはココア」
「僕はブレンドでお願い」
ルイージとヨッシーの飲み物と軽いスイーツが届いてからルイージがようやく重く口を開きました。実はマリオのことで相談があるんだ、と。ヨッシーは元から丸い目もっと丸くクリクリと回して、不思議そうにルイージを見つめています。
「実は最近、マリオが彼女にふられたのは知っているかい？」
キノコ狩りのときに聞いた話でした。ヨッシーはおとなしく頷きます。ルイージはまだそれを引きずっている兄のことが心配なのであるが、実はそれには自分が関わってしまっていたのだと告白しました。なんだかおだやかな話ではないなぁとヨッシーもしかめ面をします。
ヨッシーが思い出してみると、今回のマリオは本気の様子でした。付き合っていたのは栗色の髪をした美女でした。いつも彼女と手を組んでニコニコしているときは、ご機嫌でした。それは相手が彼女なのですからまぁ当然なのでしょうが、お付き合いはちゃんとしていると彼女の前でも公言していました。結婚をちらつかせるような発言もしていたように思います。泊まりがけでスノボしてきたとか、雪だるまみたいなスキーウェアを着た彼女をもてなしながら話していましたっけ。彼女のほうもまんざらではなかったように見えていました。
「思い出してみましたけど、仲よかったですよね？」
「好きな人ができたって言われたんだって、マリオは言っていたよ」
そういえばそうだった、とヨッシーは思い出しました。浮気でもされていたのでしょうか。しかし、そんなぶしつけなことをマリオに聞くわけにもいきません。
「別れた、と聞いた直後、僕が呼び出されて好きですって話をされたんだ……実は」
「あれっ?」
そういうことだったのです。双子の弟で穏やかな性質のルイージのほうが、マリオの元彼女は好きになってしまったのだそうです。しかし、ルイージにはデイジーという思い人がいますから、丁重にお断りしたのでした。それがマリオとルイージに亀裂を生んでしまったのです。それはそうでしょう、よく似た双子の兄と弟なのです。よりによってそんな人を選ぶなんて、神はこの世界にはいないのかとマリオが嘆きたくなる気持ちが分からないでもありません。
「僕は…、どうすればいいんだろ…」
ルイージも悩んでしまっています。しかし、ヨッシーには分かっています。マリオにも問題があったのだと。
「ルイージさんが何かしたわけじゃないんです、気にすることないですよ」
マリオのため息などルイージへの嫉妬とあてつけです。おとなの対応ではありませんね。それにどうこうしてやる必要はなく、マリオの気持ちが落ち着くのを待てば良いのです。恋は盲目、一種の熱病なのです。解決してくれるのは、時間か新しい恋しかないのです。
ヨッシーは思うのです。性別があると面倒なことが増える代わりに、ワクワクやドキドキも増えるのだなぁと第三者的目線で感じるのでした。平和ななかにも、なにかあるものです。カメよりも人間よりも、ドラゴンのほうが平和なのかもしれません。戦う力のあるドラゴンが平和なんでなんだかおかしなものだと、ヨッシーはひょんなことから思うのです。
14.11.16
ヨッシー可愛くて好きすぎてどうでもいいエピソード書いてしまう…
ルイージはいいやつだけど怖がりだし情けない。マリオはいいやつだけど腹黒い。みたいなイメージで書いてますが、ほとんどマリオシリーズは外伝系しかやってないのでキャラの性格は私の印象だけですw
マリオの4コマとかすごい好きで、描きたいかもなー。。
2014/11/16 13:54:20