※ 12/26はFFX/FFX-2 HD出ちゃうw 記念文

 海の中を泳いでいる。懐かしい音だ。ざぶん、ざぶん。ああ、ここは懐かしい『故郷』だ。やさしい母なる海に抱かれて、目覚める。懐かしい日々に還る。なあ、おかしいだろ? 還る、ってなんだ。ここにずっといたというのに。海に、きっと溶けていたというのに。ざぶ。顔を上げると、そこは青空。いつかのように声を上げた。
「おーーーーーーい」
 手を振る。高い空。海はいつも裏切らない。いつもは、裏切らない。浮かんだブリッツボールを思いきり蹴った。歓声ではなくて、驚きの声が上がる。もう一度大声を張り上げた。
「ひとーーーーーーーーっ」
 いるだろうか。懐かしい面々の彼らが。周りの人が駆けてくる。ビサイドオーラカの面々だ。ワッカは先頭に立って迎えてくれる。満面の笑みで現れる。みんなが来たと思ったら、もみくちゃになる。海。人。押し合いへし合い。こんな気持ち、いつぶりだろう。いつしか言った言葉が泡沫のように飛散して、今の現実に辿り着いた。きっとここには、今までになかった幸せがあると信じられる。
「急になんだぁ? お、見たカオだと思ったら、ジェクトさまのとこの坊ちゃんじゃありませんか」
 幸せ。なんてこの嫌みったらしい言葉で瞬時に吹き飛んでしまった。もみくちゃにされながら顔を上げると、よく知った顔がそこで笑っていた。隣にはアーロンとブラスカ。中心にでんっといるのがジェクト、オヤジだ。遠くの方にはユウナの姿がある。クラクラした。一緒にここに存在するはずのない彼らがどうしてここに。どうかしてしまったんじゃないか。一度また、ざぶんと頭から入ってみた。また顔を上げた時も、まだ彼らは一人も減らずに確かにそこにいた。ここは『シン』のいなくなったビサイド島ではなかったのだろうか。知っているそことは大幅に何かが違っていて、出来すぎた予想もしない未来に眩暈がした。こんな未来、あればいいなといつも望んでいたのにも関わらず、どうして人はそれを受け容れられないんだろう。



 全てがおかしかった。
 何も言っていないのに、俺とユウナは結婚間近で、もう婚約済みの仲になってるらしい。まあ、ラッキー? いや、俺、プロポーズしてないけど。それを一番喜んでいるのが2人の親父で、母さんはこの世界でもオヤジしか見ていなかった。どうしても息子の俺を見てくれない、寂しい女性だとようやく思った。俺も大人ってヤツになったのかな。アーロンは相変わらず笑わない。だが、前より明るいような気はする。口数も多いし。それはそうか、アーロンの目の前でオヤジとブラスカさんは死んじまった──いや、召されたんだもんな。見方が変わるのはフツウだろう、多分。でも今は生きている。ユウナの母さんは亡くなっていた。違和感ありありだったけど、俺は気にしてないフリをした。だって、これは俺が望んだ未来だから。もしかしたら祈り子はまだ祈ってくれてるのかな、それなら、俺のことなんて気にしないでもいいのに。ずっと祈るのは辛いだろう? 休んで俺を消したっていいって、言ったじゃないかよ。そんなふうに思ってたら、顔に出てたみたいだ。別に寒くなかったけど火に当たっていたらリュックが声をかけてきた。
「キミさ、なんか悩んでんの?」
 しかも、どストレート。
「げんき、ないよ」
 リュックらしいな。俺は力なく笑うことしかできなかった。はぐらかすのもしょうに合わないから俺も正直に言うことにした。どうせ、こんなふうにモヤモヤのまんま話を合わせてたらいずれボロが出るし、メッキが剥がれた時に辛い。宙ぶらりんが辛いっていうのもある。
「ここにはもう、『シン』はいないのか?」
「シン?」
 明らかに知らない様子だった。
 どうして。俺はすがりつきたい気持ちになった。当初俺のことどう思ってたかなんて知らない。でも、俺の万倍はスピラのことを知ってて、かつ、エボンの教えに惑わされないリュックの考えは、きっと俺には必要だったんだろうって思う。ユウナと従姉妹とかそういう話じゃなくて。
「ここ、俺の知ってるスピラじゃないみたいだ」
 願えば叶うと言わんばかりに、俺の願いはすべて叶ったというのに、どうしてこんなにも俺は虚しい気持ちになるのだろうか。俺はどこかにある、遠い俺の記憶のなかだけかもしれないスピラを思った。俺はここで生きていかなきゃならないんだろうか。それとも、これも夢なのかな。俺は涼しい夜のなか、いろんなことを考えた。でも答えはない。波の音だけが俺の耳に届く。どうしてだか、とても寂しかった。隣にユウナは眠っているというのに。


14.11.03

去年、vitaで待ちに待ったFFXシリーズが出たよってうがーってうってて忘れてた文章でした。
ちなみに9月の時点で予約してたとかw
スフィアシステムとCTB好きすぎでつらい…。

途中まで打ち込んで放置だったので最後らへん打ち込んでアップしときます。やっぱりただのハッピーになるのはなんだか感動がないね。ということで屍をこえてきたティーダくん。いい主役すぎる。

とりあえず未だにFFX大好きってことで、一年ごしですがヨロ。

2014/11/03 17:47:13