恋をしている君は誰よりも美しく誰よりも僕に残酷だ 3




 2人の間には小さな子供が1人ずついて、それはまるで2人の間にうまれた子供の姿のようで、とても微笑ましい若夫婦のようで。
「そうか。葵は俺と同じだったんだな」
「そうね。哀場くんのとこも妹さんだものね。うちの光太も弟だから」
 押し切られる形で受けた、哀場猪蔵曰くデートみたいな集まりがこの状態である。しかもあいにくの雨模様。どこに行こうかと空を見上げていたのだが、屋内アスレチックのある、大きめな体育館にいってみようということになった。葵としては、光太と千代を遊ばせておいて高校生たちは楽しているという心算である。ただ、これでは女の子である千代はあまり喜ばないかもしれない。盛り上がりに欠けたらどうしようかと思っていたが、いってしまえば子供たちはそれぞれ楽しげに遊んでいる。葵たちよりもだいぶ年上の大人たちが我が子を見つめながらワイワイやっている。雨の日の子供のいなし方はどの親も一緒のようだ。
「ところで、お母さんとか…どうしてるの?」
「ああ。うちは親がいねえんだ」
 葵の家は、父が修行の旅にでかけたのを、やがて母が追っていって葵も光太も放っておかれたまま帰らない。光太が生まれて1年くらいのことだったろうと記憶しているが、定かではない。ショックだったのもまた事実だからだ。強かったと祖父が言っていたし死亡届などは出していないのだから生きていると信じているのだろうけれど、祖父は葵の父のことをよく思っていないようだ。それでも朧げな記憶の中の父母のことを、葵はつねに見つめていたし、帰りを心待ちにもしていた。
「うちもなの」
「そうか……。そんなとこまで似てら」
 へらりと邪気なく笑う哀場のことは憎めないと感じた。ほんとうだ。共通点を一つずつナゾっていけば、人は仲間意識がどんどんと芽生えてくる。そんな単純なものなのだ。アスレチック内の砂場で遊ぶ子供たちを眺めながら、どこか穏やかな雨の休日。
「大丈夫なの?」
「まぁな、しかたねぇだろ。お互い」
 ガキくさいと思っていた哀場猪蔵は意外に、社会的に見ればおとななのかもしれなかった。葵は今までとどこか違った目で彼を見やる。だが目に映る彼はいつもの彼で、どれが真実に近いのかすらわからない。ほんとうに目に見えるものだけしか人間は見えないのだ。そんなことをふとした際に思うものだ。
「ご飯とか、どうしてるわけ?」
「ああ。まぁ、簡単なのは……一応、作るけど、やっぱ千代の弁当とかよ、可哀想で…」
 これは本音だった。兄の猪蔵にも学校があるので弁当を作ってやることがほとんどできない。何らかのイベントごとのときはなるべく作ってやるが、毎日はなかなか難しい。バイトだってしているのだ。つまり苦学生だということ。そんなことはもちろん口にはしない。弱音を吐いてもどうにかなるものでもないし、弱いところを見せるのは嫌いだったからだ。そんなところで損している部分もあるのだろうが、そのお陰で得していることもあるはずだ。昼飯などについては、ほとんど保育所にお金を払いお願いしている。千代はそれをわかって文句はいわない。とてもできた妹だと思う。
「けど、入った以上は中退なんざもったいなくてできねえし。高卒ぐらいは最低限必要ってーか…」
 葵が思っていたよりもずぅっと常識人な哀場猪蔵。普通に語り合えるような気がして、自然と笑みがこぼれた。
「たまにだったら、私手伝えるかもよ? 今日、実は…持ってきたんだけど………その、口に合うか、わからない、けど…」
 もちろん葵としては、外食より節約のために昼食の用意をしたのだったが。手にしたカバンの意味を理解して、とたんに哀場猪蔵が目を輝かせた。
「お、おう!食おう!マジで?!なぁ、マジ?!俺、こんなシアワセでいいわけ?すっげぇ!やべぇ!!」
 手作り弁当一つでこんなにも彼は喜んで、ひどくテンションを上げるのだ。それに感動しないでなんて、きっと普通の高校生女子ならいないのではないか。感動しまくる哀場猪蔵を見て、葵は嬉しくて楽しくて堪らなかった。それを顔に出さないようにするのがとても難しいほど。誰かを喜ばせる術を知っている、そう感じた。不器用そうで、それでいて現実派。女心を掴むのもうまい。クサいセリフも平気で言える。彼はどんな人なのだろうか。葵は掴みきれなかった。こんなに単細胞に見えるのだけれど。そんな葵を横目に、哀場猪蔵は光太と千代を呼び、広場に行って昼飯にしようと大声で叫んだ。きっと、周囲からは幸せな若夫婦に見えることだろう。


14.10.6

過去捏造ばっかりですが(アイバー)なんか納得できそう感があったので。奨学生かな。
そうでもないと簡単に引越しもできないし(親が邪魔w

色気のない、そしてデートとも言えないくらいの休日。
でも高校生だしそんなにむりして色っぽくなくてもイイと思うんだ。だって葵ちゃんの脳みそは少女マンガ脳ですよ?あんなやつ進んだことできねぇわよ(笑)
だが、もちろん哀場はある程度やることやってる(詳細は語らないぜ?w)と思うんで、押せ押せなんですけどね。


とりあえず、次とかあんまり考えてないんですが哀場猪蔵はこんなに二枚目なんだよーってのを書いていきたい感じはしますね(笑)あとは、意外な面が!とかね。そういうの書こうとは思ってます。
初デートの内容とかそういうのはどうでもいいんですよ。実を言うと。ただのイベントだからね。生活を書くほど近くないから、イベント作らないといけないわけ。ただそんだけ。

2014/10/06 23:29:47