※ 半獣ネタとか


 鏡に映った自分の姿。それは、あまりに信じられないもので、思わず声を失った。そして、それを見ているものがいるだなんて思わなかったので。


「ねえ、コレ……コスプレ、じゃないよね?」
 二葉はくいくいと俺のとこを引っ張って。その度にひりつくような鈍い痛みと。……内緒だけれど熱みたいなものがピリリと俺に流れて。それが何かは、本当は分かってる。でも、俺はまだそれを認めたくないって思ってる。あり得ない。し、似合わない。し、キモいから。二葉は笑うような声を出していて。でも、それは不快な色はなくて、むしろノリノリって感じだった。俺の気のせいじゃなければ、だけど。
「…違ぇよ。おい、あんま、引っ張んな…」
 俺の、あるはずない野生の生き物みたいな耳。もちろん俺自身の耳もあるっていうのに、どうして要らんものが生えたりするんだろうか。俺は自分の運命を呪った。虎みたいな模様のついた耳と尻尾。これじゃあ二葉じゃなくてもコスプレだと思うだろう。俺はこれを取りたくて仕方がない。だけど、付けたみたいな虎耳からはよく音が聞こえるし、尻尾では辺りの様子が探れる。ぬるい空気の動き、向こうから来ようとしている車の気配。そういうのが耳と尻尾でかなり詳しくわかる。本能的に。それは便利だけれど、人間として生きるにはとてもムダだって思った。分かりすぎることは、ゆったりできないってことだ。常に危険を感じてることと同じ意味だ。初めて知った。そして────
「っ………」
 そこはやめてほしい。
 とは言えないのが、辛い。なぜなら、それを言ってしまえば自分の弱点を晒してしまうから。二葉は容赦無く俺のことをあざ笑うみたいにそこを攻めてくる。こいつは鬼畜娘ですか。そう思ったけれど態度を変えないように唇を噛みしめるだけ。変わってしまったら、それは弱味を見せるということ。もとより苦手な二葉だけに、余計に知られたくはない。自分の弱いところなんて。それを言えないから、くいくいと二葉はお構い無しで攻めてくる。というか、ただそのまんまやるだけのことで、俺は耐えるしかなかった。
 尻尾の付け根や、耳の付け根。人と獣の継ぎ目はとっても敏感で、触れられるたびに全身がびくりびくりと震えて、飛び上がってしまうくらいに敏感で。ピリピリと甘くて痺れるような感覚に身を任せたい気持ちを、なんとか抑えようとしていた。息を止めたり、体を固めたり、できる限りのことをして。あまり触らないでくれ…。甘さがビリビリする。へんだけど、甘さがビリビリするんだ。それが嫌で身をよじって、逃げようとするのは反射というやつだ。だけどそれをやるとおかしいと思われてしまうから。思わず上ずった声が上がりそうになるのを堪えて。ひ、ひ、と喉が鳴るのを抑えて。なんとか飲み込む。だが、様子がおかしいだなんて、きっと見ていればわかるんだろう。二葉がニヤつきながら、か細いその触感に耐える俺を見て笑った。なんだろう、この従姉妹は。俺は自分の体を恨めしく思った。この敏感な余計な体を。


14.09.15

こんば。
私の嫌いなネタを書いてみました。
半獣化で、あそこに触らないで。アッハン。ネタ。
これなりきりで多い設定できもすぎたんですが、言えなくて(笑)悪いなって思って。受け受けを演出したいんだろうなって。
でもきっと、同人娘さまからは萌えるのかな?と思って書いてみた。いかがです??

2014/09/15 22:37:24