「がんばれ」
 小さくだが、マネージャーの清水が言った言葉はバレー部員の気持ちをさらに高め、そして一つへと導いてくれた。涙すら流して西谷と田中は喜んだ。『飛べ』の垂幕を目の当たりにして、飛べる烏たちは男泣きした。それはもう、月島が引いてひいてドン引いて戻って来られないくらいに。そんな月島を嘲笑うかのように部室でインターハイ前の最後の着替えをしながら田中はいった。宣言した。
「絶対優勝する。んで!オレ、清水さんに交際申し込む!!!」
「んなっ…?!!」
 そこで声を裏返らせながら驚いたのは日向と西谷のチビコンビだ。いつものようにトランクス一丁でギラギラと目を輝かせながら宣言してしまう田中は、あまりにも男前に映った。だが、それをやすやすと認めてしまっては男が廃る。
「優勝さえすれば………」
 田中の頭の中はもはや清水マネージャーのことでいっぱい。ちょっとエッチな妄想も軽くチュッとしてくれる程度の想像力の乏しさだが、気持ちを盛り上げるには十分な要素だ。汗を拭いてすぐに脱いだばかりのシャツをまた羽織り直した。そして吼える。
「っしゃー!! 勝つぞ!この野郎」
 勝つために予選に出るのだ。当然だ。だが、汗を拭き終えカバン片手に部室を後にする直前、月島が声をかける。いつもよりも棘のある冷たい声色で。
「田中さん、優勝したら告って付き合ってもらえる率上がるとか思ってんじゃないです? でもそれって、優勝するのは烏野なんだから、俺たちも、ってことにならないですか?」
 足を止めることもなくそのまますすしい顔で月島は出て行った。山口はその後に続いて何やら別に買えると言っている。田中、西谷、日向はいわれたことの意味を頭の中で何度か反芻する。何度か小声で唱えたのち、西谷が急に大声を出した。部室の外までもちろん響き渡るうるさい声だ。
「なら、オレも!優勝したら付き合ってくださいって、潔子さんに言うぜーーーッッッ!!!」
「なんだとぉをう?!」
 この宣言に田中は吼えた。呆れながら二年、三年の面々が彼らの部室を後にしていく。さすがにここに日向は参戦できない。清水マネージャーはとてもキレイで、見ただけで好きになってしまいそうだ。けれど冷たい空気はやはり近寄りがたいし、どこかそのピンと張り詰めたものは影山や月島と通じるものがあるように感じてしまうから。近い人のはずなのに、どこか遠い。もっとうまく話せるようになれば、田中や西谷のように素直に彼女に恋ができるのかもしれないけれど。
 そんなことを考えながら、三人はキャプテンに怒られる空気から逃れるため部室から出た。キャプテンの澤村は怒らせるととても怖いのだ。そうしたら、その話題の君、清水潔子マネージャーが部室の外にいて、三人で示し合わせたみたいに真っ赤な顔をして照れた。聞かれていなかったろうか。先の告白の話を。それを感じる間もなく、いつもの冷たい態度で清水はプイとそっぽを向いて、その後ろにいた澤村に向けて鍵を渡した。慣れたもので澤村は鍵を受け取ってすぐに部室の鍵をかける。
「ありがとう。どうだ、清水も帰り、肉まん食って行かないか?」
 こんなことをさらりと言えてしまうのも、澤村のキャプテンとしての貫禄だろう。今この場にいるのは澤村、菅原、東峰、田中、西谷、日向、清水の面々だ。武田先生と烏養監督は体育館で話をしているらしい。
「…いい」
 いつもにましてつれない清水だが、そんなことでメゲる田中でも西谷でもないのだった。
 六人は帰路に着き、きっちり澤村から肉まんを奢ってもらった。今日はピザまんも食べられたし。その道すがら、菅原は笑いながら言う。
「さっきのインハイの後に告るって話、絶対清水さん聞いてたよ」
「エエッ?!」
 その言葉に驚いて、さらにはハモってしまう田中、西谷、日向。声デカいし、と付け加えて笑う。澤村と東峰も困ったような笑みを浮かべた。聞いていたからといって、恥ずかしがって逃げて行ってしまうような可愛らしさのある女子ならばよいのだろうが、まったく顔色一つ変えずにいたのは内緒にしておこう。誰もが声を出すことなく暗黙の了解としたことはもっと内緒だ。
「頑張らないとね」
 どんなヨコシマな理由にせよ、優勝を目指せるなんて幸せなことだ、と澤村は思う。そう思えることが、とても幸せだった。


14.08.30

マドンナ清水の最初に出てきた時、「あんま可愛くないなー」って思ったのはすみません!
アニメ見てるうち可愛くなってきましたきよこさーん!照れ屋シャイな彼女かわゆす。ってだけの話

んー、でもハイキューはあんまり女子が可愛くないので残念。絵柄かしら。
主役級でなくてサブキャラがいい味だしてると思うのだがどうだろうか。
清水さんちょっと掘り下げますかね。
2014/08/30 18:58:18