龍が如く 見参! 途中で書いてみたくなった武蔵と浮世のラブモード


 美味い味噌汁ぶっかけ飯をかきこみながら、武蔵は考えていた。昨夜、浮世に言ったことについて。ここでお前を守る、と告げたことについて。勿論、本気でそのつもりであるし、それが死んだ真島への弔いになると思ったから告げたのであったが、だが、昨夜桜の木の下で抱き締めた細い体はカタカタと小刻みに震えて、そして離れるまでずぅっとそれは止まらなかった。彼女を守れるのは自分しかいないなどと、甘ったれたことを言うつもりはない。剣の道に、危険な香りを感じつつそれを止めてくれた真島の言葉を思い出す。それを思えばこそ、武蔵は剣を捨てなければならないと思うのだった。剣を持ちながら浮世の体を抱き締めるなどと、どこまで穢れた血塗られた運命となってしまうのか。武蔵は運命などという言葉を信じたことはなかったが、だが、この時ばかりは都合良くそんな言葉が頭に浮かんだ。そんな思いを振り払うように頭を軽く振って、武蔵は起きた。美味い飯を食って、ぐっすりと寝込んでいたようだ。昨夜のことが本当のことなのか寝惚け眼でヨタヨタと起き上がり考えながら、寝床から出る。冷たい空気が武蔵の体を刺す。こんなことは慣れっこでもはや何とも思わないことではあるが、ぶるりと全身を震わせた。温かな飯が気を緩ませたか。

「お早う」
 笑顔で迎えてくれたのは確かに浮世その人。浮世は真島の義理の妹、昨日武蔵が橋から落ちて死んだ真島の代わりに真島の忘れ形見の刀を届けに来た。それを受け取らぬと言って聞かない彼女に、半ば強引にそれを預けようとした武蔵たちの前に現れた、真島への追手。それを峰打ちでやり過ごし、だがその追手らは負けは武士の恥と介錯しない武蔵の傍らで切腹し、絶命した。その一連を見た浮世は何を思ったのだろうか。武蔵には彼女の気持ちは分からない。だが、寄り添う彼女の体をそっと抱くと、ふつふつと湧き出るような温かで柔らかな気持ちはすぐに思い起こすことができる。そんな気持ちを、人は何と呼ぶのだろう。武蔵は浮世の笑顔を見て、目を細めた。
「寝惚けてるの? 顔洗ってらっしゃいよ。ご飯できてるわよ」
 彼女は、浮世はまるで、今までもさも当たり前にいたかのように武蔵を扱って。畑仕事、田んぼ仕事を手伝わせて、そして、飯を作ってくれた。その日から、真島の名が浮世と武蔵の前で出ることはなかった。刀は部屋に置いてあるままで、それに触れようとしている浮世の姿を見たことなどない。だが、浮世は武蔵の二本の刀には触れた。真島の刀のすぐ側にある、そんな血塗られた刀であることは同じはずなのに。そんなものに触れたとしても、彼女にとってよいことなど、きっとないはずなのに。そんな姿を見るたびに武蔵は激しく心を痛めたのだった。

 武蔵は、ある日浮世に問うた。真島の話がこの家の中では禁忌なのだと知って、それでも武蔵は男として、真島の友として破った。それを嫌がるのは浮世なのだと知って、それでも。
「どうしても、受け取ってはくれないのか。真島の、剣を」
「その話は、やめて」
 浮世は目を伏せた。長い睫毛がふるふると揺れている。その様がどこか艶っぽくて色香を感じた。気のせいだと武蔵は感じた自分に対し戒めのつもりで心の中で首を振る。だが、出て行けとは浮世は言わない。それがどんな意味を持つのか。それは言葉にしなくとも伝わるものなのだ。それを、浮世はきっと言葉にするはずはない。そう信じて武蔵は態と問うた。
「なら、どうして出ていけと言わない」
 その理由を知っていながら、武蔵は冷たく言葉を紡ぐ。武蔵はここに留まることを望みながら、それは叶わないかもしれないと思っていたから。出ていけと言われたなら、出ていくしかないから。そんな口喧嘩をしている時に限って、誰か邪魔者や昨夜のようなならず者が来てくれれば、こんな下らない話などきっと流れてしまうだろうに。
「……いけず」
 か細い言葉が武蔵の耳に届く。だが、その言葉は聞いたことがなかった。武蔵は聞き返す。何を言われたか分からなかったので。
「武蔵の、いけず…」
 すん、と鼻を鳴らして。そっと浮世は武蔵へと寄り添った。武蔵にはその腕を振り払うことなどできなかった。暗い部屋で真島の刀は眠ったまま。だが、武蔵の刀は明るみに出てそこにある。それは何だか真島にとってとても不憫なことのように思えた。だが、それでも浮世は真島の剣を手に取ることをしなかった。寄り添う彼女の柔肌を、抱き締め返したい気持ちを抑えおさえてそれでも武蔵は、
「出ていってほしくない、からだよ…」
「それは、おかしい」
 思いをぶつけても、それでも武蔵はそれを否定する。おかしい、と言い放つ。己の思いだけが、正しいと信じ切って。出ていってほしくない、その言葉だけを取れば嬉しくないはずもなかった。それでも素直に喜べなかったのは、武蔵を庇うために命を落とした真島の死が、あまりに浮かばれないような気がしたから。あまりに悲しいから。浮世は否定に首を振った。信じたくないのだろう、こんなふうに己の思いが拒否されるだなんてことは。
「昨日、言ったじゃない…。守ってくれるって」
 確かに武蔵はそう告げた。浮世のことを守り抜く。そして、剣も捨てると。真島が望んだように武蔵も、彼女のために剣の道など捨てると。なぜなら剣の道は人を傷つけることしかできないから。死の道は死しか呼ばないから。そんな死の螺旋を叩き斬るために、武蔵も、そして真島も選ぶのだ。剣を捨てる道を。守ることは生きることで、生きることは死なないこと。つまり、剣は無くとも人は生きられる。彼女の鼓動が、とくんとくんと音もなしに武蔵に伝う。浮世は生きている。昨日、追手から武蔵が救ったがゆえに浮世は死なずに済んだ。
「どうしても、受け取らないというのか」
「ええ、そうよ」
 向き直った浮世は隠すことなく泣いていた。涙をぽろぽろと溢して。理由など分からない。ただ、感情が決壊してしまったのだろう。武蔵はその涙に負けた。堪らずその細腰を抱き寄せた。恋というにはあまりに激しく、愛というのは速すぎた。何か分からないものが駆け巡って、二人を痛いほどの祝福へと導いた。
 真島の、義理の妹といえど真島の妹なのだ、そんな彼女を慕う気持ちはどこか間違っているだろうと武蔵は思いながら、それでも、浮世から離れられなかった。それは心身共に、である。



14.03.13

龍が如く初めました、記念
というか見参やってて思ったわけです。で、書いてみた。ちょっとイチャラブ書くかどうか悩みつつ、エチっぽいパートはこれ以降w ってことで切りました。本編の方のゲームもやっていきます、そのうちね

男女カポーはやっぱり安心して書けますwww なんかねぇ、フォモって書いてる時はいいけど、あとが痛いなぁって思うわけれす。

でも、特に龍が如くでホモな話はないわー。任侠書きたくなったら、本編やりつつそのうち滾るかとw



しかしね、セガのポリゴンモデルってなんであんなにキモいんだろうね?w
気のせいですかね? 何だか分からないけど、顔のバランス? 気持ち悪く見える時と、かっこ良く見える時が極端というか。。桐生もなんか微妙だわ。

2014/03/13 21:14:41