こずぴぃエンド観ました。わぁい


 七海がダーススパイダーによって指示されて、そしてクラスメイトの好きなようにされて、三住だって好きなようにして…。ハラワタが煮え繰り返る、とはほんとうにこのことだと僕は思った。ぐつぐつと怒りというハラワタは、ずぅっとクラスメイトと三住を八つ裂きにする間も煮えたぎっていた。ご、とかぼ、とか言葉にならない言葉を並べるクラスメイトがくたばる様は実に愉快で、どうしてこずぴぃが心の中で泣くのか僕は理解できない。だって、こいつらは七海を、妹を死ぬより辛い目に遭わせたんだよ? 僕はこずぴぃにそう語りかける。死体はものを言わないけれど、僕は死体になる直前に彼らから七海がどう見えたかを、見せてもらっていた。


 七海が逃げたがる。ダーススパイダーが後ろを向く。音は聞こえないけれど、あの忌々しい車椅子の音が聞こえそうだ。キィ…キィ…と。だが、そこまでは僕の耳に届かないので、僕の妄想がそれを補填する。要らない補填。『将軍』の姿は見えない。けれど、その存在感はある。禍々しいほどのどろどろとした雰囲気。これを言葉で現せたなら、そう思うけれど僕の語彙で表せるものなんて、ほんとうに限られている。それほど僕は要らない生き物? そんなふうに思ってしまうくらいに。
 僕の脳裏に焼き付く七海は、声は聞こえないけれど泣き叫んでいる。口の動きで読み取れる言葉もある。もちろん「おにぃ!」だ。ごめん…、ごめんな…ダメな兄貴で。僕は目の前が涙で濡れてよく見えなくなるのを感じた。でも、だからといって何かが変わるわけじゃない。七海が逃げてる姿を見て、僕も叫んだけれどそれはもちろん聞こえるはずもなくて。ただ、マインドコントロールみたいに僕の頭の中に送り込まれてくる、目には見えていないはずの映像。
 音はない。ただ、溢れているのは、殺気。恐怖。逃げたいという気持ち。嘲笑うかのような気持ち。渦巻く、暗闇に近い気持ち。なにかを信じる気持ち。何ものをも信じられない気持ち。渦巻くのは、ひたすらに暗く、泣きたいような気持ち。そして、怖い、恐ろしいという気持ち。
 僕の脳内に映る光景は、変わる。ゆっくりと開いた目に映るのは、今度は張り付けにされた、あの張りつけ男ではないけれど、あんな格好にされた七海の痛々しい姿だった。僕はこんなときでも、やっぱりダメな兄だ。まずは目をそらそうとしてしまった。顔から、七海の姿を見まいとして背ける。けどムダだった。これは僕が現実として見てる光景じゃない。だから、僕が目を背けても脳に映る。目を閉じてもムダだ。どうやったって逃げられない。僕の脳に映る七海はきっと悲鳴を上げている。聞こえないことも、恐怖なのだと僕は初めて知った。ひ、と僕の喉は悲鳴を上げたがる。七海に向かう刃物。これは、ディソードだ。だが、見たことのないような禍々しい形をしたディソード。負の感情を詰め込んだ刃物。僕が手にしたくて、できなかった妄想の産物。だからこそ、僕はこずぴぃに縋ったんだから。こずぴぃなら、僕をすくってくれるんじゃないか、って勝手な思いを巡らせて。もちろん、こずぴぃは僕を助けてDQN野郎を殺してくれたんだから、僕はこずぴぃのことは仲間だし、仲良しだし、大好きだ。そんな僕の考えなんて無視するみたいに、脳に映る光景はどうやっても逃れられない。いろんなことを考えても、七海はディソードにより手首を切り落とされて。
 その時に僕から出た悲鳴ったら、情けないとしか言いようがない。僕は涙と鼻水でぐしゃぐしゃになっていて。喉がひりつくほどに叫んだけれど、それでも僕は足りなくて、でも、声はもう枯れてあまりでなかった。いつもよりだいぶハスキーでかすれきった声になっていた。ひ、ひ、と喉が低く唸る。血に濡れた七海が僕の脳内から、ようやく消えた。僕はぼたぼたと涙と鼻水を垂らしていた。かっこいいとか悪いとか、そんなことなんて考えられるはずなんてない。怖くて、それと同時に救えなかった僕自身に対する怒りも含めて、すべてが許せなかった。僕はしばらくそこで動けずにいた。屋上へ向かう階段で、うずくまるように泣いていた。ゆるゆる顔を上げると、返り血にまみれたこずぴぃが僕を見て心の声で問いかけてきた。
「拓巳しゃん、だいじょぶ? だいじょーぶぅ?」
 能天気な声色が、今の僕にとっての支え。なぜかこずぴぃの声に僕は癒される。そんな僕の足元には三住らDQNどもが血だらけの切り刻まれた屍となって転がっている。足元が血の海になる、そんな経験は生まれて初めてのことだ。誰だって、そんなことなどないだろうが。僕と、こずぴぃ以外は。僕は、ゆっくりとこずぴぃの目をまっすぐに見つめた。僕は、救ってくれたこずぴぃのことが大好きで、信じている。これからも守ってくれると信じていると伝えなければならない。こんなことを考えていることも、きっと心の声で話せる僕らの間には、隠しごとなんてできないのだろうけれど。こずぴぃの様子は変わらない辺り、七海のことは見ていないのかもしれない。この血だまりの中で普通にしていられるのだから──もちろんこずぴぃが作った血だまりだから、当然といえば当然だ。だが、時にこずぴぃは心の中で泣いている?──とっくに壊れてしまっているのだろう。そして、きっと僕は壊れつつある。僕は、ゆっくりとこずぴぃの目を見つめた。無垢しか見えない瞳。だが、無垢は時にこれだけ残酷になれる。残虐な死体が僕らの足元に落ちている。だが、ただ落ちているだけだ。どんどん、何も感じなくなっていく。僕は言う。
「こずぴぃ、ありがとう。助けてくれて。僕には助けたい人が、もう一人いる。僕は、七海の所に行かなきゃならない」
 だが、七海がどこにいるかなんて、誰も、もちろん僕にも分からない。ただ、頭の中でダーススパイダーの光る紅い眼が輝いている。闇から来る。そう、七海も。分からないのに、不思議な確信があった。七海は、あそこにいる。僕のベースに。あのコンテナハウスに。そして、七海の手首もある。あれに呼ばれて、七海はきっと。
「こずぴぃは、どーうすればいいのら?」
「一緒に、きてほしい」
 僕を守って。一生、僕と七海を傷つける奴らを、殺してよ。どうせ、僕もこずぴぃも、学校なんかに来たくなんてない。そして、学校などもう無くなるだろう。警察に僕らは追われるんだろうか…。なら、その警察もこずぴぃは殺してくれる。僕らが死ぬことなんでない。だっておかしいだろ? 僕らは何もしていないのに、僕らが死ぬことのほうがおかしいに決まってるんだ!
 僕の意思を読み取って、こずぴぃは小さく頷くと、僕の手を握った。温かくて小さくて、やわらかな手。リアル女子の手は、こんななのか…。
 僕らは、ベースへと向かった。学校などこの世から消えてしまえばいい。血まみれの僕らが当たり前に歩く。人が、いない。何かがおかしい。僕のベースまでの道のりで人に会わないなんてことは、夜中でもありえない。『将軍』の攻撃はまだ続いているのか? 僕はまた怖くなってきた。こずぴぃの手を両手で握ると、彼女も握り返してきてくれた。こずぴぃは裏切らない。僕はこずぴぃだけを信じて生きていく。



 僕らはケータイのシャッター音と、キラリと光る手鏡の灯りに怯えながら、なんとかベースへと辿り着いた。もう、まともな思考が奪われていくばっかりだ。人はいないはずなのに、どうしてか僕らは見られ続けている。精神が歪むような、そんな感覚。血にまみれた僕らの両手、その身体。だが、咎める人はいない。コンテナハウスの前には、なにか蠢くものがあった。僕の喉は、ひ、と情けない音を出して。こずぴぃが眉を顰め様子を見ている。
「拓巳しゃん? もしかしィ〜て、小さい、…ひと? ナナしゃん? 拓巳しゃんの妹さんポイのら〜」
 こんな息の詰まるような時の中で、こずぴぃの心の声はどこか和みの中にある。そういわれてみれば、そんなに大きいとは思えない。蠢いて、小刻みに震えているようにも見える。大丈夫、いざとなったら、僕にはこずぴぃがいるんだから…。そう思うようにして、ゴクリと息を呑んだ。そして僕は意を決して声を掛ける。
「な、…七海……?」
 返事がない。ひゅう、ひゅうというどこからか、狭くて細いところから洩れる風の音だけ。これは、声が出せないのだろうか。その蠢きの大きな目と、僕の目が合う。間違いない。暗い中でも分かる。目の前のその人は、たしかに僕の妹───西條七海───だった。濡れた目が何かを訴えていて、その目は絶望の色に彩られていた。壊れた目をしていた。僕は叫んで七海の身体を抱き締めた。そんなことをしても、何にもならないことも知りながら。抱き締めた身体は裸で一縷も纏っていない。とても冷たくて、僕も凍えてしまいそうだったけれど、こんな目をした妹を何とかできるのなら、僕は凍えたって構わない。ダメな兄貴としてできる限りのことをしたいと、強くつよく願った。僕は言葉にならない何かを叫んでいた。

 しばらくしてから、こずぴぃの声でハッとした僕はまず、ベースへと戻った。七海のことを灯りの下で見ると、驚きの連続だった。七海の右手が、ない。止血はされているみたいだけど、赤黒く血の滲むそこは痛みを訴えていた。あの三住たちDQN野郎どもに見せてもらった写メールのままの姿で、素っ裸に剥かれたまま。身体のあちらこちらには血と、それ以外の体液らしいものとがこびりついていて。身体じゅうの力は抜けていてクタクタになった身体からは目を逸らしたくてもできなくて。
「おにぃ……おにぃ…」
 ようやく七海が搾り出した声は、僕を呼ぶ声。こんなダメな兄でも、おにぃと呼んでくれるのが嬉しくて、僕の目には別の意味でも涙が滲む。
「おにぃ……、なんで………きて、くれなか…たの……」
 そんな言葉を聞いた途端、僕は、全身の血が逆流するみたいにゾワゾワとして。真っ青な顔をした七海が僕を見上げている。僕のことを見ている七海は、僕のことだけしか目に映らないはずなのに。僕のことが、目に映っていない。七海は、僕のことを見ているのに、僕のことが見えていない。七海は僕を映さない目で僕を見て、僕を呼ぶ。冷たい身体はなかなか温まらなくて、震えたままだ。
「分かった、分かったから…。七海、そうだ、シャワー、浴びたいよな? 寒い、だろ…?」
 さっき、こずぴぃもそんなことを言ってた気がするし。僕は慌てていて周りの声も、そう、あのシャッター音も聞こえなくなっていたけれど。僕はこずぴぃに短く言葉をかけて、裸の七海を支えながらコンテナハウスのすぐ隣にあるシャワー室に向かう。もしかしたら、これって結構ヤバイシチュエーションなのかも。僕は、二人きりになって改めて今の状況に慌て始めた。遅すぎるかもしれないけど、いろんなことがありすぎて脳みそなんてついて行けるわけないよ…。
 服は着てないんだから脱がせる必要がなかった。ついてない右手は見ないようにした。手当はしてないようだが洗うときに濡らしたらきっと痛いだろう。僕は痛みを伴わないよう、それを思うと身体に目をやらないわけにはいかなかった。今まで見ちゃいけないと目を逸らしてきたけれど、ケガしてるかもしれないし、見ないわけにはいかない。僕はあまり、局所局所は見ないようにしながら七海の身体を見ながら石鹸を付けていく。泡で、危ないところは見ないようにしているけど。それをシャワーで流してやる。目に手首が、ない手首が入ると、僕も痛むような、そんな気がした。腹や太ももの辺りに付いていた白っぽいものは、あいつらの精液だろうか。七海はどう思ったのだろうか。怖かったろう。だからさっき僕に言ったんだ。どうしてきてくれなかったの、と。僕は堪らず身体を流してやりながら七海を強く抱き締めた。赤黒い血の汚れが、七海の身体を伝って落ちていく。ケガはなかったはずだ。僕は慌てて七海の身体を、悪気があったわけじゃない。でも、その時あられもない隠すもののない七海を凝視してしまった。
「あ……………」
 僕の、妹とは思えない透き通るような白い素肌。そこには傷もケガもなくて。ただ、右手がない。そこには痛々しい肉と、骨。そこからは血が、ジワジワと溢れているのか。これはその色か。僕の脳みそはまともな思考をしてくれない。どう考えても、僕の汚れが落ちているだけなのに。僕は初めて手があるはずの場所を見つめた。そこは血でぬらぬらと赤く、肉が光っていた。七海の胸にポツンと乗っかっているチクビとは似ても似つかない色。残酷な色。これの痛みの中、七海はDQNどもに蹂躙されたんだ…! 怒りはふつふつと湧き上がってくる。それと同時に、僕は抑圧していた欲を感じ始めていた。
 初めて目の当たりにする、リアル女子の素肌。いや、ハダカ。もちろんアニメとかでは見てたけど。ふひひ。って、リア妹なんだから、そんなふうに思ったことはないけどさ。僕みたいなキモオタの妹のくせにこんな可愛いわけない! って思ったことは何度もあるけど、見た目だけの話だし…。つまり、僕がいいたいのは、リア妹なんだから性的に興奮なんてしちゃうのは、もってほかだ! ってこと。
 でも、今日の僕はおかしかった。いや、今日だけじゃない、ここのところいろんなヤツから、『将軍』から、梨深から、DQNから、三住から、警察から、渋谷の街にいるヤツらから。いろんなヤツらから、僕らは──僕とこずぴぃ、そしてきっと七海も──監視されていた。そんな状況で、冷静にいられるはずなんてない。おかしくなってくるのが当然なのかもしれない。僕は、七海が僕の妹で、でも女の子で、僕を頼ってくれてて、泣いてて、裸で、冷たくて……

 気付くと、僕は七海の手首を舐めていた。肉。こういうふうに見えるのか。肉を切った断面。骨。滲む血が痛々しくて、僕が昼間に殺したDQNどもを刺した時の感触が手に蘇る。よく分からないくらい気持ちが高揚していた。僕はシャワールームの狭い中で、七海の手を掴んでそれで自慰していた。僕の股間はいきり立っていて、七海の手を、手のないところをゴリゴリと押し付けると何とも言えないような、激しい快感が僕の脳内を甘く、痺れるみたいに駆け巡る。なぜか僕は笑っていた。泣いていた。僕もシャワーで濡れながら。血の色は、もうない。お湯が流してしまったから。七海の目はもう何も映さない。僕のことも、この痴態も。だから、だから僕は────



 こずぴぃは、こんな僕の痴態をすべて知っているんだろうか。でも、僕たちは離れない。同じ罪を持つもの同士だから。壊れてしまったんだ。こずぴぃも、七海も、僕も。同じように。壊れてしまったんだよ……だから、手を伸ばせば僕は、僕らは、きっと壊れた精神と、精強なディソードを振りかざして。


14.03.08

こずぴぃルートを最後にやったんですが(あとはトゥルーだけ残してます)どうにも七海と絡ませたくて。
やっぱカオへではソートウなエロキャラだから?(ちなみに、梨深とこずぴぃはエロがないって思ってる)

カオへの場合は原作が一人称なので、三人称で書くのはどうかなぁと思ってしまうみたいです。でも、拓巳視点はあんまりよろしくないかなぁ? キモいし



とりあえず、変態すぎる拓巳の姿が書けてよかった!そこまでうまくも書けてないけどね
でも七海の手首でシコシコしてたらやだなぁ…と。本当はヤっちゃう予定だったんだけど、理性とんでも、人殺しても、ヤらないんじゃね? とか思ってね。

みなさんは、どう思うかなぁ?

と、提議してみる。まあ無意味か。
電波エッチも書こう、かな…

2014/03/08 15:54:29