名をよぶ


 葵が大きく息を吐く。声を出さないように。そうしているのがはたから見ても分かる。この部屋の隣には別の誰かが住んでいるし、アパートの壁は薄い。そうして我慢している顔を、もっと歪ませたい、と思う。
 かり。とぴんと張った乳首に歯を立てると、押し殺した悲鳴に息を呑む音と、全身がびくん、と跳ねるように動いた。これ以上ないくらい葵の奥に入り込みながら、緩くしか動いてやらない。激しく腰を使われるのが好きなことなどとうに知っている。動物みたいに男と女が二人で後ろからつながっている。葵が啜り泣くようにシーツに突っ伏した。これが一番声が洩れない方法だと分かっているのだ。
 そうはさせまいと、後ろからの動きを早める。ぐり、と奥の奥を突くように。中学生女子が泣くような声をあげる。口を塞いでなんてやらない。隣のやつがいたって構わない。聞きたければ聞け。ぐり、ぐり、と抽出を繰り返す。葵の中からあたたかなものがじゅわりと出てくるような感覚。まだイッてないだろうに。後ろから抱きつくように奥に突いて彼女の身体を抱く。
「……あ、お、い」
 耳元でわざという。声を故意に発したのが久しくて、掠れてしまうのが情けない。
 また、びくりと全身が蠢き、中の方もきゅうぅ、と締まる。と思ったらヒクヒクと弛緩していく。気持ち良すぎてことばがでないらしい。太ももまであられもなく濡れた女の中心は、どこまでも淫らでいやらしく音を立てる。あとはいつものようにいわせるだけ。
「…よべよ」
 葵は懇願するように恋う人の名を呼んだ。悲鳴と甘さが交じった届き辛い声。ほしくて堪らない。彼のことを。
「   」
 共に名で呼ぶことはない。今さらそうする気などさらさら起こらない。そもそも最初から下の名前でなど呼んでいなかったというのに、どうして急に呼べるというのだろう。けれど、こうして抱き合ってひとつになるときだけは、何も考えず名前を呼び合える。まるで祈りみたいに。
 葵の中心にある一番弱い突起を軽く摘んで引っ掻くと、爆ぜるみたいに果てて倒れ込む。それでも構わない、葵の奥を深くふかく穿って、男も果てる。ラテックスの薄い皮一枚隔てて、白く濁った男の欲望が葵に沈み込む。決して届かない彼女の子宮の味がどんなものなのか分からないままで。
 額やら顔やらに引っ付く汗が毎度毎度邪魔くさいと思うけれど、こうすることをやめられない。いつだってもっと深く共にありたいと願いながら、葵の髪をやわらかく拭った。汗はふしぎだ。しょっぱくて臭いはずのそれは、葵のだけはいつだって甘さとむず痒さだけが脳内を支配する。そんな事実にはきっと理由なんてないのだろう。この行為にだってきっと。


2020.09.03

明らかにされてませんので攻めはどちらさんなのかお任せしますが、まーー男鹿×葵なんだろうか。
でも姫×葵希望だったりもする(笑)

そもそもうちの男鹿ってアパート住まいだったか?(それを言ったら姫川はマンションでしょう!タワマン!)

神崎でもいい(家から出るかなぁ?)し、でも、名前呼びをしないってあたりで哀場猪蔵ではないんだよね。。


窪美澄さんの本を読んでいて書き出したなにかです。SSSのつもりで書いたので短いです、が、時間は結構かかってしまいました。
たぶんエロすけべなんでしょう脳内。
なんというか、こんな話なのに暗いっていうのも気になります。男鹿じゃないような気がしてます。。


※元々は男鹿×葵として書かれたものでした。しかし、自由に想像してほしいと思い、変えた部分もあります。

今書いてる深海にての新作とはまるっと違います。そのへんで書きたくなっただけの浅い文。
私が書くえっちい文で喜んでくれるコがいてくれたら嬉しいな〜くらいの感じですwww


相変わらず、男鹿視点のやつだと思えばこそむずかしいなぁってかんじ。


2020/09/03 18:33:59