》桃色パラダイス(ジェームズ)
「はあ、リリーって良い香りがするよね」
うっとりと、長机を挟んで本人がいる前で、ジェームズは呟いた。その表情は宛ら恋に溺れてストーカーに発展しそうなほどに、蕩けきっていた。
(ジェームズの場合、半分ストーカーに足突っ込んでる気がする)
リリーはジェームズを横目で瞬間的に見ただけで、酷く不快な顔をした。そして徐に立ち上がって席を移動した。
ふありと香る、甘い香り。
ジェームズははあ、と感嘆した。
(知らないだろうけど、私もリリーと同じ香水付けてるんだよ)
(隣にいるのに気付かないなんて、)
(否……隣にいるのに気付いて貰えないなんて)
(どれだけ惨めだろう)
彼女の残り香、桃の甘いあまい、恋の香り。
(ジェームズの頭はリリーパラダイスだな全く!)
2011/12/13 20:27