「もしもしミクリ? ボクだよ。
この間は本当にありがとう。おかげで早苗は本当に元気になったよ。ちゃんと夜眠れるようになったみたいだし、よく笑うようになった。
最近はなんだか心ここにあらずってかんじだったから、昔に戻ったみたいだよ。
そういえばミクリ、きみは昔彼女に会ったことがあるんだよ。覚えているかい?
……覚えていない? ほんとうかなぁ。きみたち、ボクが妬けるくらい仲良しだったんだよ。
そうだ、ボクと彼女の結婚式なんだけど、来年行うことになったんだ。きみももちろん来てくれるだろう?
……うん、うん。はは、ありがとう。きみならそう言ってくれると思っていたよ。
彼女の花嫁姿、きみも楽しみにして欲しいな。じゃあ、また連絡する。本当にありがとう」


私には好きな人がいる。でも何度告白しても全然相手にしてくれない。
それも仕方ないよなぁ。だって、彼が誰に恋をしているのか私にはわかっているもの。
彼の視線の先には、私のお父さんと一緒に居る、私のお母さんがいる。いつだってそうだ。
彼らを見ているとき、ミクリさんはいつも幸せそうだ。そして微笑んだまま、何も言わなくなる。
いつだったか、ミクリさんに聞いたことがある。「ミクリさんは誰かと結婚しないの?」と。ミクリさんは笑って言った。「今が幸せだからこのままでいいかなぁ」と。
ミクリさんはきっと、私のお母さんのことが好きなんだ。でも私のお母さんとは結婚できないから、こうして私のお母さんと友達でいるだけで幸せなんだろう。
それに私のお母さんだってミクリさんのことを特別に思ってると思う。
私のお母さんは私やお父さんの前ではおおざっぱだし大きな声で笑うけど、お父さんがいなくなって、私とミクリさんだけになると突然おしとやかになる。
お父さんとミクリさん、お父さんとお母さんも仲がいいけど、なんか変な感じがする。どうしてミクリさんと私のお母さんは結婚しなかったんだろう。
でも多分、これをお母さんに聞いても困らせるし、ミクリさんに聞いても困らせるんだろうな。お父さんはもってのほか。そんなことしたらかわいそうすぎる。
いや、お父さんはそんなこと思っても無いかも。お父さんはお母さんのことが大好きだから。いい歳なのに二人でデートとかするし。
ならそれはそれで、お父さんはミクリさんのところにお母さんを連れて行かなければいいのに。大人っていうのは全く意味がわからない。
でも、ミクリさんのことは少しだけわかる。ミクリさんは私のお母さんのことが好きだ。
それでもそれを表に出さないのは、私のお母さんに言わないのは、本当に私のお母さんの幸せを願っている、本物の恋だからなんだろう。
ミクリさんはそういう優しくて、場を乱さない、静かで穏やかな人だから。
私がお母さんだったら、ミクリさんの手を取って遠い海の向こうまで逃げちゃうのに。たとえば自由の国イッシュとか。
へんなの。へんなひとたち。でも、私の大好きな素敵な人たち。
あなたたちがこれからもずっと、幸せでいてくれますように。



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