今日は私の誕生日。今年は金曜日でした。
せっかく誕生日が金曜日なんだし、有給にすればよかった。
なんで有給しなかったんだっけ。
あ、思い出した。FFZの発売日に有給使ったから、今日は有給にしなかったんだ。
あーあ。本当は明日と明後日は某歌う王子様のライブの予定だったのに。
誕生日の次の日にライブとか最高じゃん!って思ってたのに。
このご時世ですからね。潰れましたとも。
こんなにテンションが上がらない誕生日なんて久しぶりだなぁと思いながら、
彼氏と住んでいる2DKのマンションに到着。20時少し前。いつも通りだ。
カギを開けて、「ただいま」と声をかけながら家へ上がる。
なんだか少し静かだ。それに珍しく玄関から先の部屋の電気が消えている。
いつもだと先に帰ってる蔵ノ介が夕飯の支度をしてるのに。
不思議に思いつつ、リビングの電気をつける。ぱちり。
電気をつけると、目の前に蔵ノ介がいた。
ニッコリ笑って、クラッカーをこちらに向けている。
「いちか、お誕生日おめでとう〜〜!!」
パン、パンパン!
クラッカーのカラフルな中身が飛び出す。そして火薬の匂い。
そして軽快な音楽が流れだした。
雰囲気作りに余念がない。流石蔵ノ介。
『うわ〜〜、ありがとう!
蔵ノ介なら祝ってくれると思った!』
「期待にお応えするのが、ミスター・パーフェクトやで」
『誰が言ってるの、そのダサイあだ名』
「テニミュかな?」
『メタ発言やめよ〜?』
「はは、そやったな。
ほら、手洗ってきぃ。夕飯なら用意できてるで」
『わーい! お腹空いたー!』
私の鞄と脱いだコートを自然に私から回収して、クローゼットに手早くコートをしまってくれるあたり、流石私の彼氏だ。
ささっと手を洗って、リビングに戻ると、机の上には手の凝った料理が沢山並んでいた。
『凄い! 手が込んでるね』
「年に一度のいちかのお誕生日やからな。
つい気合い入れすぎてしもた。
今温め直してるから、座って待っとってな」
『うん』
返事はしたものの、エプロンをつけて料理に火を通し直してる蔵ノ介の背中を見ていたら、なんか愛おしくなった。
なので私は席につかず、調理をしている蔵ノ介のお腹に手を回して、後ろからぎゅっと抱きしめてみる。
蔵ノ介がちょっとびっくりしたように振り返ってから笑う。
優しくて落ち着く声が、すぐ上から降ってくる。
「お、どないしたん?」
『えへへ、嬉しいなって思って。
何か手伝えることない?』
「はは、おおきに。
今日はいちかの誕生日やからなぁ。
大人しく俺にもてなされてくれへん?」
『はーい』
「ご飯食べたらまた花江くんの実況みよな。
いちかの好きなポテチとコーラも買ってあるで」
『えー! 凄いね! 神対応じゃん!
ありがとう、蔵ノ介!』
「せやろー?」
蔵ノ介が温め終わった料理をお皿によそう。
二人で席について、二人で頂きますをする。
熱々の料理を、スプーンで一口すくって食べる。
『うん! 美味しい!』
「ほんま? よかった。ビーフシチュー、昨日から仕込みしとったんで」
『えー! めっちゃ気合い入ってるじゃん。
全然気付かなかった』
「いちか、全然キッチンに来おへんからな。助かったわ」
『その言い方、私が料理しないみたいじゃない?
しないわけじゃないよ? やればできるんだからね?
やらないだけで』
私のごまかしの言葉に、蔵ノ介が笑う。
蛍光灯の下で、ミルクティー色の髪がきらきらしている。
「ははっ、まー今日のところは、そういうことにしといたる。
なんにせよ、喜んでもらえてよかったわ」
『喜んでる! めっちゃ喜んでるよ!
それにいつも美味しいごはん、掃除、洗濯、あとごみ捨てとか……、
家事全般やってくれてありがとうね! すっごい助かってる。
あと全体的にクオリティが高い。生活の質が上がった。本当にありがとうね』
今日のご飯をほめてたら、なんか恥ずかしいくらい蔵ノ介を褒めちぎってしまった。
蔵ノ介も、ちょっと驚いた顔をしている。
「突然どないしたん? めっちゃ素直やん」
『いや、今日は勿論、いつも蔵ノ介に面倒見てもらって、愛してもらってるなーって。
今日は特別な日で、せっかくだし、いっぱい感謝しとこって思って!』
「はは、ええなそれ。俺の方こそ、いつもおおきにな。
これからもよろしゅう。
ほら、おしゃべりもええけど、ご飯冷めるで。はよ食べ」
『はぁーい』
ちょっと照れた蔵ノ介が、半ば照れ隠し気味にご飯を勧めてくる。
私は返事をして、また食事に戻る。
蔵ノ介と同棲し始めてというもの、生活習慣が滅茶苦茶健康的になった気がする。栄養バランスの整った御飯、早寝早起き、やたらと誘ってくるヨガ。
感謝してる。とっても。
だから友達に、「白石っておもんなくない? 誕生日とか、ベタにクラッカー鳴らしてきそう笑」とか言われたことあるけど。
その白石の≪基本に忠実≫なスタイル、私は嫌いじゃない。
むしろ感謝してるくらいだ。
私一人じゃ健康的な生活も、定番過で楽しい二人のお誕生日会も開けない。
これからも基本に忠実で、ベタな彼と、一緒に居たいと思う。
素敵な誕生日をありがとうね、蔵ノ介!


今日は私のお誕生日!!
(Prepared by Kuranosuke)

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