テレビを見ていた私の足に、シキジカがすり寄ってきた。もう眠いのかな、今何時だっけと時計を見ると、長針は25分を指している。閉店5分前だ。売れ残ってるものを仕舞わないと。今日はお弁当が二つ残ったから、お母さんと食べよう。ラッキーな日だ。
そう思いながらお弁当を片付けて、シャッターを下ろそうとした時、遠くからこっちへ向かってくる二人が見えた。スラックスにワイシャツ、抱えた帽子から見るに、駅員さんのようだ。
「お弁当!お弁当二人分ある!?」
走ってきた男性の片方が、必死の形相で問う。くっお客さん優先にしないと、お母さんが怖いのは分かってる。二人に少々お待ちくださいと告げて、ちゃぶ台の上の二つを持ってくる。
『のり弁と唐揚げ弁当が一個ずつしかありませんが、それでよければ残ってますよ』
「いる!!僕唐揚げ弁当大好き!」
にっこりと、微笑むワイシャツの男性。もうスクールを卒業して久しいはずなのに、幼い笑顔がとても可愛い。いつもこうして、にこやかなのだろう。もう片方の男性が、クダリ静かにしてくださいまし、と注意する。顔が大分似てるから双子なのかな。だとしたらこっちの男性の方がお兄さんみたいだな。お兄さんらしき人が黒いお財布を出して会計を済ませる。私はお弁当と割り箸を包んで手渡す。
「お米久しぶり!お弁当見てるだけでお腹すいてきた!ノボリ走って帰ろー」
「貴方がお弁当を揺らさずに持って帰れるというならそれでもいいですよ」
「うっ それは無理!歩いて帰る!」
「そういたしましょう。
…お騒がせしてすみません」
「いいえ、またのお越しをお待ちしております」
片方は大きく手を振って、片方は小さくお辞儀をして去っていった。
シキジカが嬉しそうに私に擦り寄る。その頭を撫でて『お客さん、喜んでくれてよかったね』と返して、今度はちゃんとシャッターを下ろしたのだ。

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