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(もうすぐ)中一アル+小三ハル+小二双子
居間でソファに座り、テレビをつけながら本を読む。
すでに習慣となりつつある時間を過ごしていたハリルイヤの元へ、隣町に住むアリルイヤが現れた。
「見て、ハル!」
互いの家の鍵は持っているためチャイムも鳴らさずに入ってきたアリルイヤの姿を見て、ハリルイヤは驚きに固まった。
「やっと届いたから、早速着てみたんだ」
その場でクルリと回ってみせたアルが着ていたのは、地元中学のセーラー服だった。スカートがふわりと舞い上がる。
「ね、ハル。似合う?」
「ん……似合ってる、と思う」
「ふふっ」
無愛想ながらもハリルイヤがそう言うとアリルイヤは満足そうに笑った。ハリルイヤはその反応に怪訝な表情を向ける。
「ハルなら、そう言ってくれると思った。ありがとう」
頬をすこし赤く染めて礼を言うアリルイヤにハリルイヤも思わず顔を赤くする。
「別に、誰だって言うだろ! 親だって似合うって言ってただろうが!」
「ううん。まだ見せてないもん」
「は?」
照れ隠しのためにほぼ逆ギレのように言ったハリルイヤだが、アリルイヤの台詞につい声を漏らす。
「朝から二人で出かけちゃったから。これ見せるの、ハルが一番だよ」
「……何で、俺?」
それこそ思わずだった。自分の期待を込めた視線と声に気付き、ハリルイヤは視線をはずして口を閉じた。
「一番に見せたかったからかな? 見てほしかったから? ……何でだろうね?」
「いや……わかった」
本人に他意はない。ただ見せようと思っただけだ。一番に、と思ってくれただけチャンスは大いにある。大丈夫、大丈夫。
若干凹みつつもハリルイヤは自分にそう言い聞かせて平常を装う。
「二階にハレルヤとアレルヤもいるから、見せてこいよ」
「うん。あ」
「あ、ねえちゃん」
「わあ! おねえちゃんセーラー服!」
丁度二階から下りてきたハレルヤとアレルヤがアリルイヤに近寄っていく。
「おねえちゃんかわいー。いいなあ、セーラー服」
「ありがとう。アレルヤはもうちょっと先だね。きっと似合うよ」
「おにいちゃんも似合うって言ったー?」
「んー」
「ねえちゃんこのカッコで来たのか?」
「うん」
自転車で十分とは言え、セーラー服のまま来たのかと注意しようと口を開きかけたところで、アリルイヤが双子に言った。
「やっぱり一番はみんなに見てほしかったからね」
――ああやっぱりそうかよちくしょう!!
ハリルイヤは本に顔を埋め、座っていたソファにドサリと倒れ込んだ。アリルイヤはアレルヤと話しており、ハレルヤだけがハリルイヤに近付いた。
「にいちゃんどうした?」
「……っなんでも、ねえよ……」
首をひねりながらも何でもないと言われたハレルヤはアリルイヤたちの元へと戻っていった。
――絶っ対諦めねえぞ……!
本の下でハリルイヤは誰にも気付かれないよう小さく鼻をすすった。
END
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