ハプティズム家
ハプティズム家
カーテンの隙間から注がれる朝日が、肌を密着させて眠る男女の顔を照らした。穏やかな静寂。それは長く続かない。
「いつまでもちんたら寝てんじゃねえぞ! お前等起きろ!」
鍵のない部屋を勢いよく開け放ち、兄は眠る二人を怒鳴りつける。その瞬間に投げつけられた小型の目覚ましを難なく受け止める。
「うっせえ……。何で兄貴が居んだよ」
「飯当番だからに決まってんだろうが」
「姉ちゃんとこ泊まったんだろ。いちいち帰ってくんじゃねえよ」
「そう思うなら起きて飯作ってろよ。アレルヤ起こして降りてこい。四人で飯だ」
「ん? ……ああ、わかった」
兄が出て行くと、残ったのは下着姿の双子の姉弟だけだ。腕に抱かれていた妹の肩を揺さぶりながら、弟が声をかける。
「アレルヤ、起きろ」
「ぅ……んぅ……」
「エロい声出してんじゃねえよ。襲うぞ」
「ん〜……」
「……よし」
許可を取ったと言わんばかりの表情で妹が仰向けにされ、弟は躊躇もなく深いキスをした。
「ん……ん、んぅ……ぁ、ふ……ふぁっ」
「ん、起きたか」
「ぁ……はれるや……」
「だからエロい声出すなっての。飯食うぞ。兄貴も姉ちゃんも待ってる」
「お姉ちゃんも……?」
いまだ寝ぼけたまま部屋を出ようとする妹は弟に止められ、弟はズボンをはき、妹は弟のシャツを上からすっぽりと着せられた。
上半身裸の弟とチラチラとショーツの見える妹。そんな姿を気にする様子もなく兄は双子に声をかける。
「おせえ。なにやってたんだお前等」
「アレルヤ起こすには手間がかかるんだよ」
「お兄ちゃん……おはよう」
「おお、おはよう」
「おはようアレルヤ、ハレルヤ」
「はよ」
「おはよう、お姉ちゃん」
「おら座れ。飯食うぞ」
兄の前に弟。弟の隣に妹。そして兄の隣に座る姉は本当の姉ではなく、兄の恋人であり、三人のいとこにあたる。
言葉を交わしながらの朝食はすこし時間がかかる。四人の食器を洗い終えた兄に姉が声をかけた。
「ハル、送るよ」
「サンキュ」
「二人も遅刻しないでね」
「俺がいるから大丈夫だろ」
「行ってらっしゃい」
「行ってくる。行くぞ、アル」
「うん。じゃあ、またね」
すこし離れたところで玄関の閉まる音を聞いて、妹は弟に問いかけた。
「お姉ちゃん、いつになったら、行ってきますって、言ってくれるかな?」
「兄貴次第だろ。早く着替えるぞ、お前に合わせてたら日が暮れちまう」
「そこまでかからないもん」
早く着替えるためか、その場で着ていたシャツを脱いだ妹に弟は苦笑する。自室への階段を上がる度に大きく揺れる胸はいまだ発育途中だ。
最近またキツくなったと言っていた下着は何カップだったか。ホックが留められないとまたノーブラで学校に行くかも知れない。
スーツでわかりにくいが姉も妹の上をいく大きさであるため、ハプティズムの血筋は色々と大きいのかも知れない。
「ハレルヤ〜」
「どうしたアレルヤ? またブラジャー留められねえのか?」
「うん……ハレルヤ、お願いしていい?」
「いいぜ。ほら後ろ向いて、胸潰してろ」
ホックを留めるときに見つけたうなじの赤い所有印に弟は満足げな笑みを浮かべた。
「ありがとう、ハレルヤ」
天然と言われる妹は弟の頭の中などつゆ知らず、ほんわかとした笑顔を向けて礼を言った。
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